2014年12月04日更新 エボラ対応に関するロードマップ (更新24)

12月3日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますとエボラウイルス病の発生状況は以下のとおりです。

要点(ハイライト)

  • エボラウイルス病の患者数は17,145人、死亡者は6,070人になりました。
  • 患者発生率は、ギニアでは僅かに増加傾向、リベリアでは安定もしくは減少傾向、しかし、シエラレオネでは未だに増加傾向が見られます。
  • スペインでのエボラ発生は終息が宣言されました。
  • エボラウイルス病患者の70%に隔離と治療を行い、その死者の70%を安全に埋葬するというUNMEERの到達目標はギニア、リベリア、シエラレオネのほとんどの地域で達成できそうです。3か国は全て、国家レベルでは2つの到達目標を達成するために十分な対応能力を備えることができました。しかし、地方の対応能力にはバラツキがあり、いくつかの地域では感染拡大を阻止するには不十分な状態にあります。

要約

2014年11月30日までに報告されたエボラウイルス病の疑い例から確定例までの患者数は17,145症例、死亡者数は6,070症例となっています。報告は、感染の影響を受けている5か国(ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネ、アメリカ合衆国)と過去に影響を受けた3か国(ナイジェリア、セネガル、スペイン)からです。この流行では、患者数および死亡者数は過小報告の状態が続いています。報告されている患者発生率は、ギニアでは僅かに増加しています(11月30日の週の診断確定患者数77人)。リベリアでは横ばいか減少の傾向でした(11月23日の週の診断確定患者数43人)。しかし、シエラレオネでは未だに増加傾向が続いています(11月23日の週の診断確定患者数537人)。最も流行が深刻である3か国を通しての患者死亡率(致死率)は、信頼のある記録に基づく全症例では72%、入院患者では60%です。

対応活動では、UNMEER(国連エボラ緊急対応ミッション)が掲げた到達目標、12月1日までにエボラウイルス病患者の隔離70%とエボラ関連死に対する安全な埋葬70%、さらに1月1日までに究極の目標である100%を達成するというラインが強調され続けています。3か国全てにおいて、現在、国家レベルでは報告された全てのエボラウイルス病患者を治療し、隔離するためのEVD治療施設の収容能力が整えられています。2つの到達目標を達成するために十分な対応能力を備えることができました。しかし、ベッドと患者の分布の不均等は、いくつもの地域で深刻な不足状態が起きていることを示唆しています。同様に、各国は広域かつ十分に、報告された全てのエボラウイルス病死亡者を埋葬する対応能力を備えました。しかしながら、全てのEVD感染死亡者が報告されているものではなく、また、報告された埋葬にたくさんのエボラ関連以外の死亡者が含まれています。いくつかの地域では70%という到達目標は達成されていないと言えます。3か国におけるエボラウイルス病が流行した全ての地域で収集された検体が24時間以内に確認検査できる環境が整備されました。3か国全ての国で、エボラウイルス病と診断された患者との接触者が登録され、その85%が追跡されています。しかしながら、流行が深刻な地域では接触者の追跡はまだ努力が続いている状態です。地域での流行を押さえ込むための接触者追跡の能力向上は感染の局所的な連鎖を断ち切るために必要なことです。

WHOのロードマップの体系(リンク)では、報告は3つのカテゴリーに分類されます。今回は、このうち2つのカテゴリー、(1)広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国(ギニア、リベリア、シエラレオネ)、(2)初期の症例が生じた国、あるいは局所的な感染が発生している国(マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国)についての報告です。

1.広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国

ギニアとシエラレオネの各保健省から11月30日付けで、リベリアの保健省から11月28日付けで報告されたエボラウイルス病の発生状況によれば、患者数が17,111症例(確定症例、可能性の高い症例、疑い症例を含む)、死亡者数が6,055症例となっています(表1)。データはWHOの地域事務局からの報告です。

表1:ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の症例数および死亡者数

図.ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い症例、確定症例、疑い症例の総数および死亡者数

注釈:データは各国の保健省から報告された公式情報に基づいてWHOの各国事務局から送られたものです。これらの数値は継続されている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。*は再分類された疑い症例と可能性の高い症例の割合が高いために報告が見送られています。**過去11月29日と30日分のデータが欠損しています。

※今回の報告では国別の患者数、死亡者数についても報告されています。各国毎の週別患者数の推移が図で示されており、横ばい、又は、減少していることをみることができます。詳細については原文をお確かめください。

図4:ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネにおけるエボラウイルス病の新規および累積の診断確定および可能性の高い患者数の分布図

図.ギニア、リベリア、マリ、シエラレオネにおけるエボラ出血熱の新規および累積の診断確定および可能性の高い患者数の分布図

データは各国からの状況報告に基づいています。この地図上で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域についてもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の境界設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その国々あるいはその国境および境界の範囲が完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。リベリアにおける11/29、30のデータは欠損です。ギニア、シエラレオネ、マリからのデータは過去21日間の診断確定症例によるものです。リベリアからのデータは11/16以前に確認された症例に基づく地方レベルでのデータ収集体制が利用できないために感染の可能性の高い症例によるものです。

医療従事者の感染

11月30日までに、合計622名の医療従事者がエボラウイルス病に感染しました。このうち346名の医療従事者が亡くなっています。合計数には、マリでの2名、ナイジェリアでの11名、スペインでの1名、アメリカ合衆国での3名(うち2名が国内、1名はギニア)が含まれています。

表5:医療従事者の患者数および死亡者数

図,医療従事者の患者数および死亡者数

※データは保健省により報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続して行われている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。*11月29日と30日分のデータが欠損しています。

広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国における対応(概要)

西アフリカでのエボラ流行を制御し、封じ込めるために、90日間の総合計画が実行されてきました。この計画の鍵には、12月1日までにエボラウイルス病患者の少なくとも70%を隔離し、安全で敬意の祓われたエボラウイルス病の死者70%を少なくとも埋葬するという目標があります。この先の究極の目標は、2015年1月1日までにこれら2つを100%達成することです。

患者の管理
エボラウイルス病患者を他の疾患の患者、より大きな地域社会から切り離すための施設で治療する対応能力を高めておくことが、この病気の対策の中心になります。現在、対応能力のほとんどは20か400のベッド数をもつエボラ治療センターに集中しています。地域医療センターは、エボラ治療センターの対応能力が不十分な地域、遠く離れた地域、センターを利用できない地域での代替施設の役割を果たします。エボラ治療センターと比べて、地域医療センターは規模が小さく、ベッド数が8~15ほどです。このことは、これらの施設ではエボラ対応の担当者がより迅速かつ柔軟に、より広い地域で対応の範囲を広げる環境を整備できることを意味します。

11月30日までに、ギニアでは245のエボラウイルス病の治療と隔離のベッドが運用されており、首都にある3つのセンター施設に集中しています。地域医療センターはありません。リベリアでは、6つのセンター施設の1269床が運用されています。流行が広がる3つの国のうち、リベリアが治療と隔離の対応能力が均等に分配されています。シエラレオネでは12のセンター施設で517の治療と隔離のためのベッドと、

地域医療センターで190のベッドが運用されています。8つの治療センターを新たに準備中で、そのうち4つは西部にあります。そこは首都フリータウン、Port Loko(ポート・ロコ)といったたくさんの患者による治療への要望が続いている地域です。

致死率
流行国3国において、記録に信頼のおける全患者の累積死亡率は72%です。入院患者では60%です。400人の医療従事者の集団での信頼のおける結果として、患者の死亡率は68%、入院した267名のデータでは63%であった。

安全で威厳を祓った埋葬
エボラウイルス病で死亡した患者の体には強い感染性があります。そのため、安全かつ威厳を祓った方法で埋葬を行うことが、病気の感染を封じ込めるための努力の重要な要素になります。

安全に埋葬されているエボラウイルス病死亡者の割合はいくつかの要素が推定を複雑にしています。第一に、事態を起こしている安全な埋葬の多くがエボラウイルス病と関係のない死亡者です。これはエボラウイルス病の症状と似ており、流行地で死に至らしめる疾患がたくさんあるからです。第二に、これはもっとも大きな要因ですが、この流行では死亡者が常に過小に報告されており、この関係でいくつかの地域はウイルス伝播のリスクを減らせるはずの安全な埋葬習慣を採用することに口を閉ざしているからです。

11月23日の時点で、221の訓練を受けたチーム(ギニア50チーム、リベリア77チーム、シエラレオネ94チーム)が活動を行っています。ギニアとシエラレオネでは80%以上が、リベリアでは77%以上が計画的に訓練された人たちによって安全な埋葬が行われています。しかし、各地域で報告される現在の死亡者の数でみればエボラウイルス病での死亡者の100%を優に超える安全な埋葬が行われていることになります。安全な埋葬チームの地図上の配置は、いくつかの遠方地域では利用が困難ではありますが、いずれの国でも患者の隔離と治療に対する対応能力の配置と比べて、遙かに均等がとれています。

11月23日の週には、ギニアで118、リベリアで73、シエラレオネで372の埋葬が行われました。

感染の確認と調査
エボラウイルス病の迅速かつ正確な診断の対応能力の供給が、エボラ流行への対応の必須項目となっています。感染が確認された53の地域で検査施設を利用するための整備が進められています。整備の基準は、24時間以内に検体を収集するための輸送力をもつことです。焦点は検体が採取されたその日のうちに結果の返すことに集められています。

18の検査施設(ギニア4、リベリア9、シエラレオネ5)がエボラ確認検査に対する対応能力を整備しました。これらの施設では現在、ギニアの24の地域、リベリアの15地域、シエラレオネの14の感染地域からの検査を行っています。

3国で1日あたり1,150から1,170の検体が検査されています。それぞれの施設での対応能力は1日あたり50から100検体となっています。

効果的な接触者の追跡は、確定診断された患者への接触者にエボラウイルスの潜伏期間である21日間、症状の発現を監視するために毎日連絡をとることによって保証されます。症状を発現した接触者は直ちに隔離され、エボラの検査が行われ、必要とされれば治療が行われます。これによって、さらなる感染の拡大を防ぐことになります。

11月29日の週おいて、ギニアでは96%、リベリアでは94%、シエラレオネでは86%の接触者の確認ができていました。しかし、まだ接触者の割合は多くの地域では低い状態であり、それぞれの地域には少なくともひとつの接触者追跡チームが配置されています。

新たな感染者に対して、平均して、11月30日の週にギニアで15人、リベリアで23人、シエラレオネで5人の接触者が登録されました。各地には、発症者を発見するチームが患者発見を補間する戦略として動員されています。

感染原因の検証と対策
それぞれの医療従事者症例における感染状況を決定するために広範囲にわたる調査が実施されています。その最初の指摘は、感染のかなりの割合がエボラの治療および看護のためのセンター以外の場所で発生したということです。これは、エボラに関連する施設だけではなく、全ての診療施設で感染の予防と管理の対策に十分な注意を払うことの必要性を強調するものです。WHOは患者を直接介助する医療従事者に対する個人用防護具のガイドラインの検証を行ってきました。現在のエボラ流行の状況に合わせてガイドラインを更新しています。個人用防護具を使用する際に必須の総合訓練と医療を行う前に個人用防護具を使用する者の全員を指導することが医療従事者と患者を保護する基本になると考えられています。

2.初期の症例が生じた国、あるいは限局的な伝播が生じている国

現在までに、マリ、ナイジェリア、セネガル、スペイン、アメリカ合衆国の5か国では、広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国から流入してきた症例が報告されています(表6)。

表6:マリ、スペイン、米国におけるエボラウイルス病症例の患者および死亡者数

図,マリ、スペイン、米国におけるエボラウイルス病症例の患者および死亡者数

合衆国でのデータはリベリアからのエボラ患者の治療にあたっている間に国内で感染し医療従事者2名とギニアで感染した1名を含んでいます。データは各保健省から報告された公式情報に基づいています。これらの数値は継続して行われている再分類、遡っての調査、利用できる検査結果の検討によって変わることがあります。

マリでは、現在では8人(診断確定7例、可能性の高い例1例)の患者が報告され、6人が死亡しています。首都Bamako(バマコ)から新たに報告された複数の症例は、10月24日に死亡したKayes(カイ)での最初の症例とは関係がありません。最初の症例に関係した接触者は全員が21日の健康監視期間を終えました。12月2日の時点で、バマコで発生した患者に関係する接触者227人のうち219人の観察が確認されています。

スペインでは、マドリッドで患者の治療中に感染した医療従事者が2度の検査陰性を経て、病院から退院して以来42日が経ちました。これにより、スペインで発生の終息が宣言されました。

アメリカ合衆国では、死亡者1名を含む4例の感染がありました。ニューヨークの医師とテキサスの看護師2人は2回のエボラ検査陰性の結果を得て退院しました。すべての患者が退院し、この国では全ての接触者が21日間の健康監視期間を完了しました。

ナイジェリアでは20症例が発生し、8例が死亡しました。セネガルでは1例の感染が発生しましたが、死亡には至りませんでした。両国では感染対策が成功し、セネガルおよびナイジェリアでのエボラウイルス病の流行は、2014年10月17日および10月19日に、それぞれに終息が宣言されました。

出典

WHO, Situation reports:Ebola response roadmap,
Situation report,3December2014
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/144806/1/roadmapsitrep_3Dec2014_eng.pdf?ua=1[PDF形式:1.5MB]