2014年12月18日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況について (更新48)

 2014年12月17日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)から、2014年11月20日から12月7日の間に中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症11例の発生が追加報告されました。このうち4例は死亡しています。

症例の詳細情報
1. 70歳女性。Taif(ターイフ)の住民で、11月27日に発症し、12月2日に入院しました。彼女はラクダとの接触はありませんが、家族は頻回に動物と接触していました。発症前14日以内に他のリスクファクターに暴露されたことはありませんが、基礎疾患がありました。現在は重篤な容態でICUに収容されています。

2. 71歳男性。Riyadh(リヤド)の住民で、11月26日に発症し、28日に入院しました。彼は発症前14日以内にいかなるリスクファクターにも暴露されたことはありませんでした。現在は重篤な容態でICUに収容されています。

3. 52歳男性。Buridah(ブライダ)市の住民で、11月24日に発症し、26日に入院しました。彼は発症前14日以内にいかなるリスクファクターにも暴露されたことはありませんが、基礎疾患がありました。患者はICUに収容されましたが、11月29日に亡くなりました。

4. 28歳男性。サウジアラビアの国籍を持たない(非サウジ国籍)Najran(ナジュラーン)の住民です。11月27日に発症し、30日に入院しました。患者には基礎疾患はありませんが、動物とは頻回に接触していました。彼はラクダそのものとの接触はありませんが、地域にはラクダがたくさんいます。発症前14日以内に他のリスクファクターに暴露されたことはありませんでした。現在は重篤な容態でICUに収容されています。

5. 62歳男性。Rafha(ラフハー)市の住民で、11月22日に発症し、25日に入院しました。患者には基礎疾患はありませんが、頻回にラクダやヒツジとの接触があり、その生産物を飲み食いしていました。発症前14日以内にこの他のリスクファクターに暴露されたことはありません。患者は安定した状態で、隔離されています。

6. 34歳男性。非サウジ国籍のSkaka(サカーカー)市の住民で、11月18日に発症し、23日に入院しました。患者には基礎疾患はありませんが、以前に報告されたMERS –CoV患者との接点がありました。発症前14日以内にこの他のリスクファクターに暴露されたことはありません。患者はICUに収容され、安定した状態です。

7. 40歳男性。ターイフ市の住民で、11月26日に発症し、27日に入院しました。患者には基礎疾患はなく、発症前14日以内にリスクファクターとして知られているものに暴露されたことはありませんでした。しかし、彼は医療施設で働いていました。この施設で検査で確認されたMERS –CoV患者を治療したことはありません。患者は安定した状態で、隔離されています。

8. 79歳女性。Alkharj(アルカルジ)市の住民で、11月20日に発症しました。彼女は慢性腎不全のために10月31日に入院していました。一方で、入院中の11月9日にはMERS –CoV患者と同じ部屋にいました。患者は発症前14日以内に他のリスクファクターとして知られているものに暴露されたことはありませんでした。ICUに収容されましたが、12月1日に死亡しました。

9. 42歳男性。非サウジ国籍のターイフ市の住民で、11月17日に発症し、20日に入院しました。患者は慢性疾患のために11月8日に医療施設を受診したことがありました。患者は発症前14日以内に他のリスクファクターとして知られているものに暴露されたことはありません。ICUに収容されましたが、11月28日に死亡しました。

10. 58歳男性。ターイフ市の住民で、11月15日に発症し、20日に入院しました。患者は発症前14日以内に他のリスクファクターとして知られているものに暴露されたことはありませんが、基礎疾患がありました。患者は隔離病棟に収容されましたが、12月7日に死亡しました。

11. 48歳女性。アルカルジ市の住民で、11月18日に発症しました。彼女は以前に報告されたMERS –CoV患者の家族内接触者です。発症前14日以内に他のリスクファクターに暴露されたことはありません。現在、患者はICUに収容されていますが、安定した状態です。

 これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

 また、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)はWHOに以前報告したMERS-CoV患者1名の死亡を追加報告しました。

 世界的には、WHOは、938名の検査確定したMERS-CoV感染症例と、少なくとも343名の関連死の報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を押さえるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準予防策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考えるべきです。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生手順をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO, Global Alert and Response (GAR)
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)-Saudi Arabia, 17 December 2014
http://www.who.int/csr/don/17-december-2014-mers/en/