2015年02月05日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新6)

 2015年2月3日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は、2015年1月14日から22日の間に新たに中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染患者9例の発生を報告しました。このうち、4例は死亡しています。

症例の詳細情報
1. 84歳女性。リヤド市の住民で、1月19日に発症し、1月20日に民間病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。しかし、発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとも接触はありません。患者は状態が重篤となりICUで治療を受けていましたが、回復し、1月27日に退院しました。

2. 77歳男性。リヤド市の住民で、1月18日に発症し、1月21日に民間病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。しかし、発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとの接触もありません。患者は状態が重篤となりICUで治療を受けていましたが、回復し、1月28日に退院しました。

3. 80歳男性。リヤド市の住民で、12月26日に発症し、同日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。彼は、他の患者との直接の接触はないものの、12月26日に以前に報告されている2人のMERS-CoV感染患者が治療を受けた救急治療室にいました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。患者はICUで治療を受けていましたが、1月23日に死亡しました。

4. 38歳男性。リヤド市の住民で、1月14日に発症しました。患者には基礎疾患があり、1月1日に手術を受けるために入院していました。入院中の1月7日に、患者は家族と会うためにAl Dawadmi市に外出しました。患者は1月12日に病院で手術を受けました。その病院では、彼との直接の接触はないものの、MERS-CoVが検査で確認された患者の治療も行われていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。現在、彼は安定した状態で、隔離病室にとどまっています。

5. 76歳男性。リヤド市の住民で、1月12日に発症しました。基礎疾患を有するその患者は、MERS-CoVとは関連のない病態に対して11月3日に入院しました。彼が治療を受けた病院では、MERS-CoVが検査で確認された患者の治療も行われていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼は重篤な容態となり、1月18日に亡くなりました。

6. 67歳男性。リヤド市の住民で、1月12日に発症し、16日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者はリヤド市内でMERS-CoVとは関連のない病態のために医療施設に幾度となく通院していました。しかし、呼吸器症状を持つ患者との接触はありませんでした。その施設はこれまでにMERS-CoV感染患者が報告されたことはありませんでした。発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとの接触もありません。現在、彼は安定した状態で、隔離病室にとどまっています。

7. 62歳男性。リヤド市の住民で、1月14日に発症し、1月16日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。しかし、発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとの接触もありません。現在、彼は安定した状態で、隔離病室にとどまっています。

8. 67歳男性。ターイフ市の住民で、1月5日に発症し、1月9日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。彼はラクダとの接触もラクダの生製品の摂取もなかったのですが、その地域にはたくさんのラクダが飼われていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼は重篤な容態となり、1月21日に亡くなりました。

9. 93歳男性。リヤド市の住民で、1月11日に発症しました。基礎疾患を有するその患者は、急性外傷のために12月28日に入院していました。そのとき、病院では、MERS-CoVが検査で確認された患者も治療されていました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼は重篤な容態となり、1月15日に亡くなりました。

 これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

 サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は、以前に報告された2人のMERS-CoV患者の死亡をWHOに報告しました。2例は1月5日の記事に掲載されたNo.2および1月15日に掲載されたNo.3の症例です。

 世界的には、WHOは、965人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも357人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR):
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Saudi Arabia. 3 Feburuary 2015
http://www.who.int/csr/don/03-february-2015-mers/en/