2015年02月12日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新7)

 2015年2月11日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は、2015年1月27日から2月4日までに新たに中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染患者10例の発生を報告しました。このうち、1例は死亡しています。また、カタールの国立国際保健規約(IHR)担当者は2月2日に、アラブ首長国連邦の国立国際保健規約(IHR)担当者は2月3日に、それぞれ新たに中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者1例ずつの発生を報告しました。

症例の詳細情報

サウジアラビア
1. 37歳男性。サウジアラビアの国籍を持たない(非サウジ国籍)民間病院にヘルスワーカーとして勤めるリヤド市の住民で、1月28日に発症し、1月30日に入院しました。患者は喫煙者ですが、基礎疾患はありませんでした。患者が勤める民間病院は如何なるMERS-CoV感染者も扱ったことはありませんでした。患者は、発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとも接触はありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

2. 58歳女性。非サウジ国籍のリヤド市の住民で、1月28日に発症し、1月31日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。しかし、発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとの接触もありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

3. 59歳男性。Hofuf(フフーフ)市の住民で、1月28日に発症し、2月3日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。彼は、下記の7.の患者の家族内接触者で、検査にてMERS-CoV感染が確認されました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

4. 26歳男性。Al Kharj(アル カルジ)市の住民で、2月1日に発症し、同日入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとの接触もありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

5. 56歳女性。アル カルジ市の住民で、1月24日に発症し、1月30日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。彼女の家族はラクダ牧場を所有しており、彼女自身もラクダとは頻繁に接触していました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼女はICUで人工呼吸装置を装着されていましたが、現在は安定した状態です。

6. 62歳男性。Hafoof(フフーフ)市の住民で、1月29日に発症し、同日入院しました。患者には基礎疾患がありました。下記の7.の患者の家族内接触者で、検査にてMERS-CoV感染が確認されました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

7. 76歳男性。フフーフ市の住民で、1月19日に発症し、1月25日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。彼はラクダ牧場を所有し、ラクダとは頻繁に接触し、生乳も飲んでいました。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

8. 37歳 男性。非サウジ国籍のリヤド市の住民で、1月16日に発症し、1月28日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日以内に如何なるリスクファクターとの接触もありません。彼はICUで人工呼吸装置を装着されていましたが、現在は安定した状態です。

9. 62歳男性。リヤド市の住民で、MERS-CoV感染者との接触者追跡によって発見されました。この感染者は2月3日に9.の患者として報告されています。彼は、検査により陽性と判定されたのみで、現在は無症状です。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼は、現在は隔離され、厳重な健康監視の下に置かれています。

10. 80歳男性。リヤド市の住民で、1月21日に発症し、1月24日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。患者は今回の病態とは別に2014年12月30日に同じ病院に入院したことがありました。この病院では、これまでに2人のMERS-CoV感染者(1月20日の4.の患者と2月3日の9.の患者)が報告されています。しかしながら、この期間に、患者はこれらの感染者と全く接触したことはありませんでした。発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼はICUで人工呼吸装置を装着されていましたが、2月1日に亡くなりました。

カタール
・55歳男性。カタール国籍をもたないAl-Shahaniya(アル シャハニャ)市の住民で、1月28日に発症し、症状が悪化したために1月31日に総合医療センターを受診し、翌日、MERS-CoV感染の確認検査のために入院しました。患者には基礎疾患はありません。しかし、患者はラクダやヤギとの頻繁な接触機会がありました。患者は発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。患者は感染病棟の陰圧室に隔離され、現在は安定した状態です。

アラブ首長国連邦(UAE
・38歳男性。UAEの国籍をもたないアブダビの住民で、2014年12月29日に発症しました。症状は次第に悪くなり、患者は1月29日に病院救急救命室に運ばれ、同日に入院しました。ラクダとの接触に関する調査が行われています。患者は発症までの14日以内に他のリスクファクターとの接触はありません。彼は重篤な状態であり、ICUにて人工呼吸装置を装着されていましたが、2月6日に亡くなりました。

 これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

 世界的には、WHOは、977人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも359人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR):
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Saudi Arabia. 11 Feburuary 2015
http://www.who.int/csr/don/11-february-2015-mers-saudi-arabia/en/

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Qater. 11 Feburuary 2015
http://www.who.int/csr/don/11-february-2015-mers-qatar/en/

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- United Arab Emirates.
11 Feburuary 2015
http://www.who.int/csr/don/11-february-2015-mers-are/en/