2015年03月13日更新 ヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況 (更新2)

 2015年3月3日付けで公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、鳥インフルエンザ感染症の概況は以下のとおりです。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスのヒトへの感染

 2003年から2015年3月3日までに、16か国から公式に784人の鳥インフルエンザ(H5N1)感染者が検査にて確定診断されたことが公表されています。このうち、429人が死亡しています。

 2015年1月26日の更新以降に、エジプトから13人の死亡者を含む新たな検査確定患者66人が報告されました。

 エジプトから報告された鳥インフルエンザ(H5N1)感染者65人のうち、29人は1月に発症し、残る患者は2月に発症しました。患者はエジプトの18の異なる行政区域から報告されました。65人の年齢幅は1歳から75歳で、中央値は26歳、10歳未満の患者が23%を占めています。全ての患者に家禽との接触もしくは家禽市場との接点があり、全ての患者が入院し、ひとりを除いて全員が抗ウイルス薬による治療を受けました。新たな患者のうち、Fayoum(ファイユーム)県で母親と娘とのふたりによる集団感染がありました。母親は娘が発症する2日前に発症し、ふたりとも裏庭の家禽との接触がありました。

 現在、前月及び前年の同月と比べて、エジプトでの家禽におけるインフルエンザA(H5N1)ウイルスの検出と流行の発生件数が増えています。

 エジプトで昨年12月、今年の1月および2月に検査確認された鳥インフルエンザA(H5N1)の患者数は、いかなる国の1か月の報告数よりも多いものです。全てのインフルエンザウイルスは時間とともに変異しますが、予備検査の段階では過去に発生した分離株と比べて、患者からも動物からも分離されたウイルスに重大な遺伝子変異が見つかったという報告はありません。しかし、さらに詳しい検査が続けられています。新しく候補ワクチンとなるウイルスは、現在流行しているH5 clade 2.2.1(エジプトで分離された最近の全てのインフルエンザA(H5N1)ウイルスが属するグループ)に対してより強く保護すると見込まれています。ヒトでの患者数の増加は、いくつかの要因、即ち、家禽におけるインフルエンザA(H5N1)ウイルス流行の増加、公衆衛生上のエジプト中流部、上流部でのリスクに対する注意喚起の低下、寒さによる家禽に接する機会の増加や環境下でのウイルスの活性時間の延長などの季節要因が重なったとみられています。インフルエンザA(H5N1)ウイルスに関するリスクを評価し、感染対策を推し勧めるためのエジプトでの高レベルでのWHO/FAO/OIEの共同ミッションが、2015年3月に予定されています。

 中国では、江蘇省で37歳の女性が鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルスに感染したことが報告されました。彼女は2015年1月14日に発症し、1月20日に病院に入院した。患者には家禽との接触機会がありました。接触者の間でのさらなる患者発生は報告されていません。

 中国では、雲南省で44歳の男性が鳥インフルエンザA(H5N6)ウイルスに感染したことが報告されました。彼は、2015年1月27日に発症し、2月3日に病院に入院し、2月6日に死亡しました。患者には死んだ野鳥との接触機会がありました。接触者の間でのさらなる患者発生は報告されていません。これは中国から報告されたインフルエンザA(H5N6)の3人目の患者です。

 OIEが受けた報告によれば、インフルエンザA(H5N1)、A(H5N2)、A(H5N3)、A(H5N6)、A(H5N8)といったさまざまなサブタイプのインフルエンザA(H5)が、最近、ヨーロッパ、北米、アジアの鳥から検出されています。これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、ヒトに感染を引き起こす潜在性を持っているものの、これまでのところ、インフルエンザA(H5N1)ウイルス、2014年以降に中国で発見されたA(H5N6)ウイルスがヒトに感染することを除いて、ヒトへの感染は報告されていません。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
 鳥インフルエンザウイルスが家禽に流行しているときには、散発的なヒトへの感染または小さな集団感染が、感染した家禽やウイルスに汚染された環境、特に家庭で生活する人々では起こり得ます。動物からヒトへの感染者数の増加が、過去数ヶ月にわたってエジプトから報告されていますが、これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、現在、ヒトとヒトの間で簡単に伝染するものではありません。したがって、地域集団レベルで感染が広がる危険性は低いままです。

非季節性のインフルエンザウイルスによるヒトへの感染

中国での鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染
 WHOには死亡者227人を含む鳥インフルエンザ(H7N9)感染者602人が検査で確認されたことが報告されています。最近報告されている患者の大半は、生きた家禽が売られている市場を含む、感染した生きた家禽やウイルスに汚染された環境との接触機会と関係しています。A型(H7N9)ウイルスは、患者が発生している地域での家禽とそれらが飼われている環境から検出され続けています。過去にヒトから分離されたウイルスと比較して、最近の患者から分離されたウイルスに大きな遺伝子変異は認められていません。これまでの情報では、ヒトとヒトの間で簡単に伝播するものでないことを示唆しています。

鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスのヒトへの感染
 2014年後半に中国の四川省と広東省で、鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスによるヒト感染が2例発見されました。いずれの患者も、軽い症状でした。

 エジプトではアスワン行政区域で3歳の男子が鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに感染したことが報告されました。彼は、2015年1月16日に鳥インフルエンザウイルス感染の疑いで隔離され、1月21日に退院しました。患者には健康な裏庭の家禽との接触機会がありました。このウイルスがエジプトの家禽の間で流行っていることは知られており、エジプトでは最近の研究で家禽との接触機会のある人々の間で5~7%の比較的高い抗体保有率が報告されていましたが、これはエジプトで鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに感染した初めての患者です。

鳥インフルエンザA(H9N2)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
 このウイルスはアジアや中東では家禽の間でこのウイルスが流行しているために、さらなる患者や小さな集団感染は発生するかもしれません。

 このウイルスはヒトとヒトとの間では簡単に伝染するものではなく、臨床症状も軽い傾向にあります。したがって、このウイルスの社会的レベルでの流行拡大や公衆衛生におけるこのウイルスの衝撃が現状に与える可能性は低いと考えられています。

アメリカ合衆国での変異型ブタインフルエンザA(H1N1)ウイルスのヒトへの感染
 インフルエンザA(H1N1)ウイルスに感染した患者が1例、アメリカ合衆国で発見され、2005年12月の最終的なリスク評価以来、患者の合計が17人になりました。

変異型ブタインフルエンザA(H1N1ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
 このウイルスはアメリカ合衆国でブタの間で流行っているので、さらなる患者や小さな集団感染は発生するかもしれません。過去には、患者は感染したとみられるブタに濃厚接触したことに関係していました。このウイルスの社会的レベルでの流行拡大や公衆衛生におけるこのウイルスの衝撃が現状に与える可能性は低いと考えられています。


 インフルエンザウイルスが恒常的に変化する特性をもつために、ヒト(または動物)の健康に影響を与える可能性のあるインフルエンザウイルスの流行に関連して、ウイルス学、疫学、臨床医学的な変化を検出するために世界規模で調査の行うことの重要性をWHOは強く主張し続けています。IHR(2005)の下で、非季節性インフルエンザウイルスが起こす全てのヒト感染例は、WHOに報告されています。国際基準にしたがって、動物やヒトからのインフルエンザウイルスが的確に動物または人に対するインフルエンザの衛生研究所で十分にその特徴が分析され、報告されることが重要であるとWHOは考えています。

出典

WHO. Influenza at the human-animal interface.
Summary and assessment as of 3 March 2015
http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/Influenza_Summary_IRA_HA_interface_3_March_2015.pdf