2015年03月30日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新16)

 2015年3月26日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規約(IHR)担当者は、2015年3月11日から3月22日までの間に3人の死亡者を含む中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)に感染した新たな患者15人の発生を報告しました。

症例の詳細情報
1. 50歳男性。サウジアラビア国籍をもたない(非アラビア国籍)Najran(ナジュラーン)市の住民で、3月11日に発症し、3月20日に入院しました。患者に基礎疾患はありません。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査中です。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

2. 54歳男性。非アラビア国籍のリヤド市の住民で、3月19日に発症し、3月20日に入院しました。患者には基礎疾患として糖尿病がありました。彼はMERS-CoV感染が検査確認された患者(下記、No.11の患者)との接触がありました。発症までの14日間に他にリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

3. 60歳男性。非アラビア国籍のジッダ市の住民で、3月15日に発症し、3月19日に入院しました。患者には基礎疾患があり、発症までの14日間にMedinah(マディ-ナ)に旅行していました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会の調査が続けられています。現在、患者はICUに収容されていますが、安定した状態です。

4. 73歳男性。リヤド市の住民で、1月9日から別の疾患で入院中、3月13日に発症しました。彼はMERS-CoV感染が検査確認された他の患者と同じ病院に入院していました。これらの患者や担当した医療従事者との疫学的な関連については調査中です。発症までの14日間に他にリスクファクターとの接触はありません。現在、患者はICUに収容され、重篤な容態です。

5. 27歳男性。リヤド市の住民で、3月8日に発症し、3月14日に入院しました。患者は別の疾患で何度も当病院を受診していました。しかし、彼にはその病院で治療が行われていたMERS-CoV感染が検査確認された患者との接触機会はありません。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

6. 56歳男性。リヤド市の住民で、3月12日に発症し、3月14日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会への調査が続けられています。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

7. 44歳男性。非サウジ国籍のAlKhafji(カフジ)市の住民で、3月4日に発症し、3月14日に入院しました。患者に基礎疾患はありません。患者は頻繁にラクダとの接触機会があり、生乳も飲んでいました。発症までの14日間に他にリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

8. 60歳男性。Taima(タイマ)市の住民で、3月7日に発症し、3月11日に入院しました。患者には基礎疾患があり、頻繁にラクダとの接触機会も、生乳の摂取機会もありました。発症までの14日間に他にリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。

9. 47歳男性。Alfadliahの町の住民で、3月2日に発症し、3月12日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会については調査中です。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

10. 21歳男性。非サウジ国籍のリヤド市の住民で、3月8日に発症し、3月12日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会については調査中です。患者はICUに収容され、重篤な状態です。

11. 31歳男性。非サウジ国籍のリヤド市の住民で、3月1日に発症し、3月10日に入院しました。患者は喫煙者で基礎疾患がありました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査中です。患者は3月12日に死亡しました。

12. 45歳女性。非サウジ国籍のリヤド市の医療従事者で、3月8日に発症し、3月10日に入院しました。患者に基礎疾患はありません。彼女は3月11日に報告(No.14)のMERS-CoV感染が検査確認された患者との接触機会がありました。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

13. 62歳女性。リヤド市の住民で、2014年11月23日から別の疾患で入院中、3月3日に発症しました。彼女はMERS-CoV感染が検査確認された他の患者と同じ病院に入院していました。これらの患者や担当した医療従事者との疫学的な関連について調査中です。発症までの14日間に他には既知のリスクファクターとの接触はありません。患者は3月15日に死亡しました。

14. 59歳男性。リヤド市の住民で、3月7日に発症し、3月8日に入院しました。患者には基礎疾患はありません。彼は2月23日に報告(No. 2)のMERS-CoV感染が検査確認された患者との接触機会がありました。発症までの14日間に他には既知のリスクファクターとの接触はありません。患者は3月14日に死亡しました。

15. 55歳男性。非サウジ国籍のジッダ市の住民で、3月5日に発症し、3月8日に入院しました。患者に基礎疾患はなく、ラクダとの接触機会もありませんでした。しかし、彼は頻繁にヒツジとの接触機会があり、ヒツジの生製品を定期的に消費していました。発症までの14日間に他には既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、感染病棟の陰圧室に隔離されています。

 サウジアラビアの国際保健規約(IHR)担当者は、以前に報告されたMERS-CoV患者5人の死亡をWHOに報告しました。患者は3月20日に報告されたNo. 5,12、3月11日に報告されたNo. 2,10、3月6日に報告されたNo. 6です。

 これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

 世界的には、WHOは、1,090人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも412人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Saudi Arabia. 26 March 2015.
http://www.who.int/csr/don/26-march-2015-mers-saudi-arabia/en/