2015年04月15日更新 ヒトと動物に共通するインフルエンザ感染症の概況 (更新3)

世界保健機関(WHO)から2015年3月31日付けで、鳥インフルエンザ感染症の概況が公表されています。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスのヒトへの感染

2003年から2015年3月31日までに、16か国から公式に鳥インフルエンザ(H5N1)感染者826人が検査にて確定診断されたことが公表されました。このうち、440人が死亡しています。

2015年3月3日の更新以降に、エジプトから死亡者11人を含む新たな検査確定患者42人が報告されました。内訳は、エジプトで37人、中国で3人、インドネシアで2人です。

エジプトから報告された鳥インフルエンザ(H5N1)患者37人のうち、14人は2月に、残る患者は3月に発生しました。患者はエジプトの異なる14の行政区域から報告されました。37人の年齢幅は1歳から77歳、中央値は24歳で、10歳未満の患者が38%を占めています。男性と比べて女性がほぼ2倍感染しています。37人のうち8人(22%)が死亡しました。死亡者は全員が10歳以上でした。1人を除いて患者は全員が家禽との接触もしくは家禽市場との接点がありました。残る1人の接触歴を現在調査中です。全ての患者が入院し、全員が抗ウイルス薬による治療を受けました。患者との接触者は14日間の健康監視を受けました。確定患者との接触者からの患者は報告されていません。新たな患者のうち、Sharkia(シャルキーヤ)県で母親と息子の2人による集団感染がありました。2人は同じ日に発症し、2人とも日常的な接触を示唆する裏庭の家禽との接触がありました。

現在、前月及び前年の同月と比べて、エジプトでの家禽におけるインフルエンザA(H5N1)ウイルスの検出と流行の発生件数が増えています。

全てのインフルエンザウイルスは時間とともに変異しますが、予備検査の段階では過去に発生した分離株と比べて、患者からも動物からも分離されたウイルスに重大な遺伝子変異が見つかったという報告はありません。しかし、さらに詳しい検査が続けられています。新しく候補となっているワクチンウイルスは、現在流行しているH5 clade 2.2.1(エジプトで分離された最近の全てのインフルエンザA(H5N1)ウイルスが属するグループ)に対してより強く保護することが見込まれています。

2014年12月以降、4か月の間に、エジプトで検査確認された鳥インフルエンザA(H5N1)の月別患者発生数は、いかなる国の1か月の報告数よりも多いものです。感染した集団の特徴はエジプトで前年に報告されたものと本質的には変わっていません。男性よりも女性が多く感染し、10歳未満の子どもが1/3を占めています。たくさんの患者が入院するとエジプトでの死亡者の割合は変化するものですが、いまのところ他の国よりも低い状態です。

患者数の増加は、寒さによる家禽に接する機会の増加や環境下でのウイルスの活性時間の延長などによって、より緊密な家禽との接触機会、即ち、家禽におけるインフルエンザA(H5N1)ウイルス流行の増加、小規模の養鶏場や家庭で飼う家禽の増加、公衆衛生上のリスクに対する注意の低下、季節要因、が重なったとみられています。

中国では、2省から3人の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者が報告されました。2人は生きた家禽との接触機会が報告されています。患者のうち1人は死亡し、残る2人は報告された時点では治療中です。

インドネシアでは、Banten(バンテン)州で鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染死亡者2人(父と息子)が報告されました。彼らに関する調査では、住居の近く、または、病気発症の前に訪れた別の場所で、鳥と直接もしくは間接に接触の機会があったことが示されています。2人とも重症となり入院しましたが、死亡しました。前回インドネシアで鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス感染者が報告されたのは、2014年6月でした。

OIEが受けた報告によれば、インフルエンザA(H5N1)、A(H5N2)、A(H5N3)、A(H5N6)、A(H5N8)といったさまざまなサブタイプのインフルエンザA(H5)が、最近、アジア、ヨーロッパ、北米の鳥から検出されています。これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、ヒトに感染を引き起こす潜在性があるものの、これまでのところ、インフルエンザA(H5N1)ウイルス、2014年以降に中国で3人が感染したA(H5N6)ウイルスのヒトへの感染を除いて、感染者は報告されていません。

鳥インフルエンザA(H5)ウイルスに対する全体的な公衆衛生上のリスク評価
これらの3か国から報告された患者は散発的とみられています。そして、これらの国の風土では、ウイルスが家禽の間で流行していることが知られています。鳥インフルエンザウイルスが家禽に流行しているときには、散発的にヒトへの感染または小さな集団感染が、感染した家禽やウイルスに汚染された環境、特に家庭で家禽と接触する人々の間で起こり得ます。それ故、さらなる散発的な患者が発生しても予想外でありません。

動物からヒトへの感染者数の増加が、過去数か月にわたってエジプトから報告されていますが、これらのインフルエンザA(H5)ウイルスは、現在、ヒトとヒトの間で簡単に伝播することはありません。したがって、地域集団レベルで感染が広がるリスクは低いままです。リスク評価は変わりませんが、ヒトに感染するリスク要因および軽症患者がいるとすれば潜在的役割への理解について、さらに研究を進めることが必要です。動物からヒトへのウイルス感染力の変化に現在の状況が何らかの役割を果たしていると考えるならば、ある種の動物と感染者からのウイルス分離株をさらに分析することは、より深い理解のために着手される必要があります。

非季節性のインフルエンザウイルスによるヒトへの感染

●中国での鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒトへの感染
WHOには、死亡者253人を含む鳥インフルエンザ(H7N9)感染者631人が検査で確認されたことが報告されています。最近報告されている患者の大半は、生きた家禽が売られている市場を含む、感染した生きた家禽やウイルスに汚染された環境との接触機会と関係しています。A型(H7N9)ウイルスは、患者が発生している地域での家禽とそれらが飼われている環境から検出され続けています。過去にヒトから分離されたウイルスと比較して、最近の患者から分離されたウイルスに大きな遺伝子変異は認められていません。これまでの情報では、ヒトとヒトの間で簡単に伝播するものでないことを示唆しています。

出典

WHO.Influenza at the human-animal interface, Monthly Risk Assessment Summary.
Summary and assessment as of31 March 2015.
http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/Influenza_Summary_IRA_HA_interface_31_March_2015.pdf?ua=1[PDF形式:361KB]