2015年04月30日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新19)

 2015年4月29日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規約(IHR)担当者は、2015年4月14日から20日までに死亡者1人を含む新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者4人の発生を報告しました。

症例の詳細情報
1. 49歳男性。サウジアラビア国籍をもたないリヤド市の住民で、4月11日に発症し、4月18日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

2. 61歳男性。Hafouf(フフーフ)市の住民で、4月16日に発症し、4月18日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。また、頻繁にラクダやヒツジとの接触機会があり、ラクダの生乳も飲んでいました。その他には発症までの14日間に分かっているリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。

3. 65歳男性。Dhebaa市の住民で、4月9日に発症し、4月15日に市内の病院を受診しました。患者は、同日、Tabouk(タブーク)にある他の病院に紹介され、入院となりました。患者に基礎疾患はありません。患者は頻繁にラクダやヒツジとの接触機会があり、ラクダの生乳も飲んでいました。その他には発症までの14日間に分かっているリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。

4. 93歳男性。メッカ市の住民で、4月6日に発症し、4月11日に入院しました。その後、患者は4月13日にメッカ地域内にある他の病院に紹介されました。患者には基礎疾患がありました。また、発症までの14日間に頻繁にラクダとの接触機会があり、ラクダの生乳も飲んでいました。その他には発症までの14日間に分かっているリスクファクターとの接触はありません。患者は4月19日に死亡しました。

 これらの症例に対して、家族と医療従事者の接触者追跡が行われています。

 世界的には、WHOは、1,110人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも422人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Saudi Arabia. 29 April 2015.
http://www.who.int/csr/don/29-april-2015-mers-saudi-arabia/en/