2015年05月18日更新 髄膜炎の発生-ニジェール (更新2)

 5月15日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ニジェールの保健省は、2015年1月1日から5月12日までに死亡者423人を含む髄膜炎菌性髄膜炎の疑い患者6,179人をWHOに報告しました。これは、これまで前例のないいくつかの特徴をもつ急速な流行の拡大です。

 疑い患者は急増しており、この2週間で3倍に増えています。これは、アフリカの髄膜炎ベルトのどの国を襲うこともある髄膜炎菌C型によって引き起こされた、初めての大規模な髄膜炎の流行です。

 首都を含むニジェール川流域の11地区では、流行の警報レベルを超えています。5つの地区で構成されているニアメでは、死亡者226人を含む疑い患者4,099人が報告されました。人口100万人を越える過密な都市地域で、流行が発生しており、急速に広がり多数の患者を発生させる危険性が高いため、流行は大きな懸念材料となっています。

 検査結果からは、感染地域では主に髄膜炎菌C型が確認されていますが、いくつかの患者検体からは髄膜炎菌W型も確認されています。C型は経済的に豊かな国で髄膜炎の主原因菌となっていましたが、アフリカではあまり心配されていませんでした。

 過去40年にわたって、アフリカでC型は散発例や少数の限られた地域で流行する原因菌ではありましたが、一般的にA型とC型が混じって流行していました。これらの流行は1975年にナイジェリアで、1991年にニジェールで、2013-2014年にナイジェリアで発生していました。

 過去の流行パターンとは異なる様相を示すニジェールの流行は、憂慮すべき進展です。これはアフリカで初めてのC型による髄膜炎大流行のため、この型の髄膜炎に対するワクチンは供給が不足しています。

公衆衛生における対策:ワクチン不足にもかかわらず患者死亡率は低下

 流行の管理・対応に取り組むために、国の感染流行委員会が立ち上げられています。WHOと米国疾病管理予防センター(CDC)のスタッフからなる国際チームが、保健省の流行調査を支援し、国のサーベイランス能力を強化するために配置されました。

 WHOと支援者たちは、集団予防接種キャンペーンの実施やそれ以外にも緊急感染制御対策のためにニジェール政府に対し援助を提供しています。流行性髄膜炎コントロールのためのワクチン接種対策の国際調整団体(ICG)が、この援助の努力への手助けをしています。ICGは、WHO、ユニセフ、赤十字社、赤新月社連盟、国境なき医師団(MSF)から結集された共同事業です。ICGはワクチン製造業者と緊密に協力し合っています。アフリカで極めて大規模な、そして致死的な髄膜炎の流行が起きた後の1997年に設立されました。

 現在までに、4つのワクチン請求を承認しました。提供されたワクチンには、A、C、W型に対して保護する古いタイプの多糖体ワクチン(Instituto Finlay and Bio-Manguinhos製)46万回分、そしてA、C、W型とY型に対して保護する20万回分の新しい包合体ワクチン(Sanofi-Pasteur製)があります。

 この包合体ワクチンは、米国と欧米市場で使用するために少量が生産されており、アフリカでは手が届かない価格でしたが、ICGの介入とGAVIアライアンス(ワクチンと予防接種のための世界同盟/The Global Alliance for Vaccines and Immunization)の財政支援の結果、提供が実現しました。また、ニジェール政府は、マリの政府から多糖体ACWYワクチン20万回分を得ています。

 多価包合体ワクチンが米国と欧州で認可されて以来、多糖体ワクチンの生産は大幅に減少されており、現在、国際的な旅行者による使用に大きく制限されています。ICGによって維持備蓄されているもの以外は、さらなる多糖体の多価ワクチンは利用できません。

 この緊急事態に対応して、WHOは、ICGのために、多価の多糖体ワクチンの緊急生産を開始することを公的に活動するワクチン製造部門や製薬会社と交渉しています。64万回分の追加ワクチンが、今後数週間以内にニジェールに発送されます。

 2歳から15歳の子供をターゲットとするワクチン接種活動が、ニアメを含む11流行地区のうち8地区で進められています。MSF(国境なき医師団)は、医師チームや患者管理施設を備えて、保健省を支援しています。非常に有効な抗生物質であるセフトリアキソン18,500バイアルが、ICGの支援で使用出来るようになりました。これらの積極介入のおかげで、髄膜炎の致死率はこの数週間で11%から6.8%に低下しました。WHOと支援者は、流行サーベイランス、人々の感染への感作、予防対策に対して保健省を援助しています。

髄膜炎ワクチン:供給の問題点

 髄膜炎の集団発生はアフリカ諸国の人々に大きな負担をもたらします。セネガルからエチオピアまでの流行21か国に及ぶ地域はアフリカの髄膜炎ベルトとして知られており、この病気は地域的特性の強いものです。12月から6月にかけての乾期に周期的に患者が再発生し、流行となります。

 1996-1997年には大規模な流行が発生し、200,000人以上の患者が発生し、20,000人が死亡しました。最近の大規模な流行は2009年に主にナイジェリアとニジェールで発生し、患者は80,000人以上になりました。これらの流行の大半はA型によるものでした。

 2010年以降に、コストが1ドル以下で、A型に対して効果のある、MenAfriVacと呼ばれる新しい包合体ワクチンが開発され、アフリカベルトの国々での集団予防接種キャンペーンにおいて徐々に導入されました。この新しいワクチンは、特にWHOとPATH(the Program for Appropriate Technology in Health:保健分野における適性技術導入プログラム)との共同で、髄膜炎ワクチン・プロジェクトにおいて開発された開発されたものでした。

 新しいワクチンの導入以降、アフリカでの髄膜炎菌A型の患者数は劇的に減少し、ワクチンが使用された地域では流行が発生することはなくなりました。髄膜炎菌A型の包合体ワクチンは、長期間免疫機能が持続するので、現在、アフリカで髄膜炎流行を予防するために唯一使用できる経済性のあるワクチンです。他の型に対してアフリカで使用されているこれ以外のワクチンは全て、これより古い時代の多糖体ワクチンで、免疫機能が3年から5年しか持続しません。現在、これらのワクチンは流行に対する緊急対策としてのみ使用されており、予防のために望まれる目的には合致しません。

 髄膜炎菌A型の包合体ワクチンの導入に続いて、多糖体ワクチンの市場もかなり縮小しており、現在では国際的な旅行者に限定されています。緊急ワクチンを備蓄管理するICGは、緊急時に使用するこれらの旧来の多糖体ワクチンの十分な供給を維持するために尽力してきました。

 2015年の流行に備えるために、WHOとICGに属する支援者たちは、150万回分の多価の多糖体ワクチンおよび150万回分の髄膜炎菌A型の包合体ワクチンの要求を、ワクチン製造業者に対して事前に送りました。

 1つの製造企業による生産上の問題のために、この要求を完全に満たすことは適いませんでした。備蓄と供給のギャップを満たすために、WHOは2つの公的に活動するワクチン製造部門、キューバのInstituto FinlayとブラジルのBio-Manguinhos、および1つの製薬会社グラクソ·スミスクライン社に、それぞれに多糖体ワクチン60万回分および50万回分を提供することを要求しました。

 このワクチンの不足は、アフリカの人々や政府に手頃な価格で提供できる多価結合型ワクチンの開発を加速することの重要性を強調しています。今のところ、WHOは、ICGやその他の支援者と協力して、将来のアフリカの髄膜炎ベルトでの流行を管理するために、多糖体ワクチンの備蓄が十分高いレベルで維持されることを保証しています。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR). 15 May 2015.
Rapidly growing outbreak of meningococcal disease in Niger.
http://www.who.int/csr/don/15-may-2015-niger/en/