2015年06月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新25)

 2015年5月30日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者 から、5月26日から29日にかけての中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者がWHOに報告されています。報告は新たな患者8人の情報と、5月24日に報告されたMERS-CoV感染者3人の更新情報です。また、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)から5月29日にMERS-CoV感染者1人が確認されたことが報告されています。

症例の詳細情報
韓国

1. 最初の患者は、5月24日に報告されています。患者は68歳の男性。バーレーンを4月18-29日に、UAEを29-30日に、再びバーレーンを4月30日から5月1日に、サウジアラビアを5月1-2日に、再度バーレーンを5月2日に訪れた後に、カタールを5月2-3日に訪れていました。患者は、5月4日にカタールから韓国仁川国際空港に到着しました。到着したときには、症状はありませんでした。患者は5月11日に発症し、5月12日から15日に地域の診療所を受診しました。その後、5月15日に病院に入院し17日に退院しています。退院した日、彼は別の診療所を受診しました。5月17日から20日にかけて、さらに別の病院を受診しています。5月20日、患者はMERS-CoVに対する検査が陽性であったことから、隔離の整った国立の施設に搬送されました。現在、患者は安定した状態です。患者には、これまでに分かっているリスク要因との接触はありません。感染源の調査が続けられています。

2. 2番目の患者は、5月24日に報告されています。患者は64歳女性で、最初の患者の妻です。彼女には基礎疾患はありません。海外旅行歴もありません。彼女は、5月15日から夫が入院中に看病をしていました。彼女は5月18日に発症し、隔離の整った国立の施設に搬送されました。5月20日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。現在、彼女は安定した状態です。

3. 3番目の患者は、5月24日に報告されています。患者は76歳の男性。入院中の5月16日に最初の患者と同室でした。彼は5月20日に発症し、隔離の整った国立の施設に搬送されました。同日、MERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。現在、患者は安定した状態です。

4. 4番目の患者は46歳の女性で、3番目の患者の娘です。彼女は5月16日から20日まで彼が入院中に世話をしていました。この間に、彼女は最初の患者とも同じ部屋にいました。彼女は5月21日から健康監視下に入り、25日に発症しました。彼女は、隔離の整った国立の施設に搬送され、5月25日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。現在、彼女は安定した状態です。

5. 5番目の患者は50歳男性で、5月17日に最初の患者を治療した医療専門職です。彼は、5月22日から健康監視下に入り、自発的に自らを隔離しました。5月25日に発症し、隔離の整った国立の施設に搬送されました。5月26日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。現在、彼は安定した状態です。 

6. 6番目の患者は71歳男性。最初の患者が入院した5月15日から17日に同じ病棟にいました。彼には基礎疾患があり、彼は5月24日に発症し、救急診療部を受診しました。5月28日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。

7. 7番目の患者は28歳女性。5月16日と17日に最初の患者を担当した医療専門職です。彼女は21日から自発的に自らを隔離し、その日に発症しました。容態が悪化したため、5月27日、彼女は隔離の整った国立の施設に搬送されました。5月28日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。彼女に基礎疾患はなく、現在は安定した状態です。

8. 8番目の患者は46歳女性。5月15日に最初の患者を治療した医療専門職です。彼女に基礎疾患はありません。5月26日に発症し、隔離の整った国立の施設に搬送されました。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。現在、彼女は安定した状態です。

9. 9番目の患者は56歳男性。最初の患者が入院した5月15日から17日に同じ病棟にいました。彼は、別の疾患のため5月9日から入院中でした。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。

10. 10番目の患者は79歳女性。最初の患者が入院した5月15日から17日に同じ病棟にいました。彼女には基礎疾患がありました。5月20日に発症し、5月28日に隔離されました。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。

11. 11番目の患者は49歳女性。最初の患者が入院した5月15日から17日に同じ病棟にいました。彼女には基礎疾患がありました。5月21日に発症し、5月28日に隔離されました。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。

 これらの患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

中国
  韓国から入国した44歳男性。患者は5月30日に報告された韓国の症例のうち、3番目のMERS-CoV感染者の息子であり、4番目のMERS-CoV感染者の弟です。彼は5月21日に発症しました。患者は5月26日に香港へ渡航し、続いて広東省の深セン市に入り、そこを抜けて恵州市に行きました。5月27日に地域保健行政当局が彼を発見し、直ちに隔離設備の整った施設へ搬送しました。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性の結果が判明しました。

 中国政府は以下のサーベイランスと感染対策を実施しています。

1. 積極的な患者の治療と院内感染対策の強化
2. 患者検体の検査、ウイルスの遺伝子配列の決定と検査室の安全環境の確保
3. 救急サーベイランスの強化。特に、発熱した外来患者の受診時のスクリーニングの強化。
4. 濃厚接触者の追跡、管理、健康監視の強化
5. 公共でのリスクに対する情報伝達の確保

 世界的には、WHOは、1,148人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも431人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。

 他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- China. 30 May 2015.
http://www.who.int/csr/don/30-may-2015-mers-china/en/

Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Republic of Korea. 30 May 2015.
http://www.who.int/csr/don/30-may-2015-mers-korea/en/