2015年06月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新27)

2015年6月1日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者から、5月31日に新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者2人が報告されました。また、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者から、5月24日と25日の間に死亡者1人を含む新たなMERS-CoV感染者2人が報告されました。

症例の詳細情報

韓国

  1. 1.患者は35歳男性。5月6日に、咳、痰、発熱を発症し5月13日に入院していました。彼は4月に息子が結核感染の診断を受けたため結核治療を受けていました。5月15日から17日に、彼は最初の患者が入院していた同じ病棟にいました。彼は5月20日に退院した後、発熱のため2つの異なる病院を受診し、抗生剤の処方を受けました。抗生剤による治療にもかかわらず症状が持続するため、彼は5月27日に再び入院となりました。5月29日にMERS-CoVに対する検査で陽性であることが確認されました。
  2. 2.患者は35歳男性。彼の母親が最初の患者と同じ病棟にいました。5月15日から21日まで、彼は毎日母親を見舞いに訪れていました。彼は5月24日に発症し、救命救急室を受診しました。5月25日から27日に入院し、5月30日にMERS-CoVに対する検査で陽性であることが確認されました。

これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

サウジアラビア

  1. 1.71歳男性。サウジアラビア国籍をもたないフフーフ市の住民で、5月10日から別の疾患で入院中に、5月21日に発症しました。患者は、5月24日にMERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。
  2. 2.68歳女性。フフーフ市の住民で、5月13日に発熱と胸痛のため循環器病センターに入院していました。入院中の5月20日に、患者は呼吸困難を起こし、5月23日にMERS-CoVに対する検査で陽性であることが判明しました。患者は5月25日に死亡しました。患者には基礎疾患がありました。彼女の家族はヒツジとラクダを所有していました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

これらの症例に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

世界的には、WHOは、1,154人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも431人*の関連する死亡報告を受けています。

*誤植
WHOには、MERS-CoV関連の死亡者は、最初に報告された431人ではなく、少なくとも434人が報告されています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。

他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典