2015年06月03日更新 アフリカにおける流行感染症の報告 (更新1)

2015年5月に世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局(AFRO)から発行されたOutbreak Bulletin(流行の発生報告、Vol. 5 Issue 2, 31 May 2015)において、2015年1月から4月までのアフリカでのエボラ出血熱、コレラ、髄膜炎の発生状況が報告されています。このうち、ここではコレラと髄膜炎についてまとめています。原文には図表も掲載されています。詳細については原文をご参照ください。

概観

イベント管理システムを通じた早期警戒システムからのデータによれば、2015年1月から4月までの公衆衛生イベントは54件で、そのうち感染症が87%(47/54)で、そのうち、コレラの報告がもっとも多く30%を占めていました。

コレラ

アフリカ地域では、2015年1月1日から5月3日(第1週から18週)までに47か国のうち14か国で流行が発生しています。死亡者289人(致死率1.4%)を含む総計20,058人が、この地域の47か国のうち14か国から報告されています。全患者の90%は、モザンビーク(44%)、コンゴ民主共和国(27%)、ナイジェリア(10%)、ケニア(9%)の4つの国からの報告です。

現在も、アフリカの多くの国ではコレラの罹患率と致死率が高い状態です。この病気の重圧を下げるために、WHO/AFROはこの地域でのコレラの予防と制御の対策への計画を複数年で展開しています。

コレラプロジェクトを通してコレラの流行に取り組む中で、WHO/AFROは流行国に対して効果的な技術と物資の支援を行っています。その支援は、ガーナ、モザンビーク、マラウイ、タンザニアに対する豊富な技術や経験をもつ専門家の派遣、マラウイとタンザニアでの即時対応キャンペーンとしての経口コレラワクチンの提供、タンザニアでの経口コレラワクチンの即時対応キャンペーンの準備などです。コレラの予防と制御の対策への計画を展開するために、ケニアとナイジェリアにも支援を提供しています。

このアフリカ地域のハイリスク国では、さらなる準備と対策のための計画を作成し実行することが必要です。そのために、各国は、リスクアセスメントを行い、ハイリスクの地域を同定し、そこに焦点を当てることが必要となります。また、水と衛生改善事業(WASH activities)地域社会活動および多角的な活動領域からの取り組みをよりよい形で実行していくことも必要です。

また、加盟国も、それぞれに公衆衛生イベントの準備や準備強化への取り組み、サーベイランスや実際の対策に協力するためにWHOの標準操作手順書を理解しておくことが重要です。

髄膜炎

2015年1月以降、ガーナ、ニジェール、ナイジェリアでは脳脊髄性髄膜炎(CSM)が大発生しています。ニジェールでの流行は13地区に拡がり、髄膜炎菌C型としてはこれまでに記録された最大の流行となっています。ナイジェリアのKano(カノ)州、River(リバーズ)州、Zamfara(ザムファラ)州の3州、およびガーナの2地区で流行が蔓延しています。

2015年1月から4月までの間に、アフリカ地域では17か国から死亡者910人を含む総計11,838人の患者が報告されました。致死率は7.7%に達すると推定されています。ガーナ、ニジェール、ナイジェリアの合計15地区では警戒レベルを超えています。

警戒レベルを超える地区で最も多く同定される病原菌は、髄膜炎菌(66%)と肺炎双球菌(32%)です。髄膜炎菌髄膜炎が検出された606検体のうちの多くは髄膜炎菌C型でした(51%、n=313)。

2014年に警戒レベルを超えた地区で最も多く同定された病原菌は髄膜炎菌(68%)で、そのうち最も多かった型は髄膜炎菌W型でした(80%)。

過去40年を通して、C型はアフリカでは散発的な患者発生もしくは局所的な流行にとどまっており、一般には髄膜炎A型とC型が混在していました。西アフリカではナイジェリアで1975年に、ニジェールで1991年に、また、ナイジェリアで2013年から14年にこのような流行が起きました。

髄膜炎の流行発生に対して、WHOは支援する関係機関と協力して、各国保健省がサーベイランスの強化、計画の促進、即時対応の予防接種キャンペーン実施と、適正な健康対策メッセージの普及を確かなものにすることを支援しています。

国別の流行状況

ケニアにおけるコレラ

ケニアの保健省は2014年12月29日にコレラの流行が始まったことをWHOに報告しました。流行はナイロビから始まり、その他の10郡に拡大しました。2015年5月19日現在、死亡者65人(致死率2.2%)を含む総計3,234人の患者が11郡から報告されています。

コレラの流行はMigori(ミゴリ)、Homa bay(ホマ・ベイ)、Bomet(ボメット)の3郡では制御されました。一方、残る8郡では、未だにコレラ患者と死亡者が報告されています。検体はビブリオコレラに対して陽性です。

WHO及び関係機関からの支援を受けた保健省はコレラの感染制御対策を実行しています。治療センターが、流行が発生した全ての郡で開設され、医療関係者が国のガイドラインにしたがって患者を管理しています。薬剤と補給用ミネラルも流行発生地域に送られています。

モザンビークとマラウイにおけるコレラ

モザンビークとマラウイは、それぞれに2014年12月25日と2015年2月11日以降、コレラの流行を経験しています。両国の流行は、モザンビークでの約124,381人、マラウイでの約230,00人の住居の破壊と国内での立ち退きを伴う豪雨と洪水のために、状況が悪化しています。

2015年5月14日現在、モザンビークでは死亡者65人(致死率0.7%)を含む総計8,819人が、マラウイでは死亡者11人(致死率1.7%)を含む総計620人が、報告されています。マラウイの多くの患者がモザンビークの患者と疫学的に関係しており、国境に沿って発生しています。最近は、報告される患者数が減少する傾向にあります。

WHOと関係機関は両国保健省がコレラの流行発生に取り組むことを支援しています。継続的なリスク評価、早期の患者発見へのサーベイランス、疾病サーベイランスと患者管理に関する医療従事者の訓練、地域住民活動と地域教育、健康部門の全体での協力体制、そして、薬剤調達の財政支援と供給への実行をともなう感染制御対策が取られています。

2015年5月14日現在、WHO/ AFROは発生リスク評価、医療従事者の訓練、およびその他の緊急対応活動を支援するために、協力体制、衛生上の緊急事態、疫学および情報伝達の分野における19人の国際的な専門家を派遣しました。

マラウイとモザンビークとの国境会議が、流行の迅速な封じ込めに向けた相互国の連携強化と、洪水の影響を最小限に抑えるために必要となるその他の感染制御対策を話合うために2015年3月25日に実施されました

マラウイでは、二度にわたる11地区の160,482人を対象とするコレラ経口ワクチン(OCV)キャンペーンが行われました。

WHOは、国の準備と対策を向上させるための評価を行っています。

ニジェールの髄膜炎

ニジェールの保健省は急激な髄膜炎の流行の発生を宣言しました。2015年5月18日現在、死亡者467人(致死率6.4%)を含む7,254人の患者が報告されています。疑い患者はものすごい勢いで増え、最近の2週間で3倍になっています。この流行は、アフリカの髄膜炎ベルトで流行した髄膜炎C型による最大の規模かつ最速の拡がりをもっています。

首都ニアメ含む11地区で流行警戒レベルを超えています。患者の65%(4706/7254)はニアメの5つの地区から報告されています。

検査が行われた1,395検体のうち、44.2パーセント(617/1395)は簡易検査で髄膜炎菌に対して陽性で、血清群C型(72%)とW135型(14.4%)でした。

WHOと関係機関は保健省が以下の感染制御対策を実行することを支援しています。積極的なサーベイランス、患者管理、流行が発生する3州でのワクチン集団接種、複数の州にわたる地域サーベイランス、医療従事者の訓練、地域社会の関心の向上です。

2から15歳の子どもを対象とするワクチン接種キャンペーンが、ニアメを含む流行する11地区のうち8地区で進められています。国のタスクフォースが定期的に会議を開き、WHOと米国CDCからの専門家からなる国際的な学術チームが調査および取り組み活動を支援するために派遣されています。

アフリカへ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸収のよい水の作り方

出典

WHO/AFRO, EPR Outbreak News,
Outbreak Bulletin, Vol. 5 Issue 2, 31 May 2015
http://www.afro.who.int/en/clusters-a-programmes/dpc/epidemic-a-pandemic-alert-and-response/outbreak-news/4644-outbreak-bulletin-vol-5-issue-2-31-may-2015.html