2015年06月04日更新 韓国における中東呼吸器症候群(MERS)について

 6月2日付けで世界保健機関(WHO)からMERSの発生状況評価(MERS situation assessment)が公表されています。内容は以下のとおりです。

 韓国の中東呼吸器症候群(MERS)の流行が拡大を続けています。WHOは、韓国政府および保健省と緊密に連絡を取りながら、情報を受けとりつつ、事実を確認しています。

 報告は、流行の動態に対してほぼリアルタイムで洞察が行われる品質を保っています。積極的な接触者追跡と感染に対する検査は、流行の急速な拡大を説明することに役立っています。ヒト-ヒト間の感染が報告されています。現段階では、WHOは地域社会で感染伝播が持続するという証拠は得ておりません。

 韓国での最初の「指標となる」患者は5月20日に確認され、同日、WHOに報告されました。患者は、中東4か国に最近渡航した68歳の韓国人でした。5月4日に韓国に帰国したときには、患者に症状はありませんでした。

 患者は、5月11日に発症し、2か所の診療所と2か所の病院を受診し、医療従事者と他の患者に対して接触する多数の機会ができてしまいました。

 この最初の患者は、旅行中にウイルスと接触した可能性について語ることがなかったために、MERS-CoVが疑われることも、患者が隔離環境下で治療されることもありませんでした。患者が中東を旅行した際の接触機会について、情報を収集するさらなる努力が行われています。

流行の拡大
 この流行は、2012年4月に最初にこの病気が出現し、大量の患者が発生したサウジアラビア以外では、報告された最大規模のものです。

これまでに、濃厚接触者の追跡で、最初の患者と患者の治療にあたった医療従事者、同じ診療所や病院で治療を受けていた患者、家族、来院者を含む25人の患者が検査で確定診断されています。

 これらの新たな患者の何人かは、最初の患者と同室でした。その他の患者は同じ病棟にいました。データが事前調査段階ではあるものの、感染に至る接触機会は5分から数時間と短い時間であった可能性があります。

 これまでに、このうちの2人が死亡しました。

 最初の患者の治療にあたった診療所および病院の数を考えれば、さらに患者が増えることが予想されます。

 5月26日、韓国で接触機会のあった確定患者の1人が、医療者の助言に反して、香港経由で中国に入国しました。彼は、旅行中に症状がありました。5月29日、中国は、この患者が恵州病院で隔離され、MERS-CoVへの検査が陽性であったことをWHOに報告しました。

 中東以外でのこのような大規模の流行が、この病気の第3国へ感染輸出を起こしたことは新しい展開です。さらに、保健省からは最近の患者2人が3次感染であることが報告されました。それは、最初の患者と接触した誰かから、即ち、最初の患者と直接の接触のない第3者での感染です。

 感染の予防と制御への十分な対策を一貫して実行したことが、医療施設に関係するその他の大規模な感染集団を阻止しました。WHOは、急性呼吸器感染症の症状を有する患者の治療にあたる際、標準的な措置に加えて飛沫に対する防御措置が行われることを勧めています。

 WHOは、入国時に特別な検査を行うことへのアドバイスはしておらず、また、旅行あるいは貿易を規制することも推奨してはいません。

 MERS-CoVは、まだあまり解明が進んでいない新興疾患です。ヒトコブラクダが濃厚な接触を介してヒトにウイルスを感染させられることの証拠は上がっているものの、ウイルスの挙動については、多くが科学的に謎に包まれたままです。

 WHOは、ウイルスの遺伝子配列や知見の共有を含め韓国で進行中の調査がこの病気のさらなる科学的解明に貢献するであろうことを確信しています。

出典

WHO. MERS situation assessment. 2 June 2015
Middle East Respiratory Syndrome (MERS) in the Republic of Korea
http://www.who.int/mediacentre/news/situation-assessments/2-june-2015-south-korea/en/