2015年06月09日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新32)

2015年6月8日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者は6月6日に新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者9人をWHOに報告しました。

症例の詳細情報

  1. 1.54歳女性。5月25日に発症しました。彼女は、5月19日から別の疾患のために入院していました。彼女は、5月19日から20日にかけて、最初の患者が入院していた病棟に入院しました。5月21日から28日にかけて、彼女は異なる階に移動していました。その階では、後に、何人ものMERS-CoV確定患者が報告されていました。彼女には基礎疾患がありました。設備の整った病院に隔離され、5月29日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  2. 2.40歳男性。6月1日に発症しました。5月27日に、彼は息子が入院する病院に見舞いに行きました。このとき、6月1日に報告されたMERS-CoV感染と確定診断された患者(No.1)と同じ区域にいました。彼は、6月2日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明し、設備の整った病院に隔離されました。
  3. 3.68歳女性。6月2日に発症しました。患者は、5月27日に、別の疾患のため病院に行きました。彼女は救急室を受診し、治療を受けた後、帰宅しました。彼女は、その病院で6月1日に報告されたMERS-CoV感染と確定診断された患者(No.1)と同じ区域にいました。彼女は、患者との接触機会があったことを知らされ、自宅での自主隔離とマスクの着用を言い渡されました。6月2日、症状が現れたため、彼女は別の病院の救急室に行き、隔離の下で治療を受けました。その後、治療のためにさらに別の病院に搬送され、ICUの隔離室に収容されました。6月4日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  4. 4.65歳男性。6月1日に発症しました。しかし、呼吸器症状は全くありませんでした。彼は、5月28日から30日にかけて病院に行きました。このとき、彼は救急室および6月4日に報告されたMERS-CoV感染と確定診断された患者(No.1)と同じ病棟にいました。彼は6月2日に隔離され、3日に陰圧室に移されました。6月3日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  5. 5.24歳女性医療専門職。5月29日に発症しました。彼女は、何人ものMERS-CoV感染の確定診断を受けた患者がいた階で仕事をしていました。彼女は5月28日に自宅隔離となりました。基礎疾患はありません。6月5日に検査結果が陽性と判明しました。
  6. 6.51歳女性。6月1日に発症しました。彼女は5月18日から28日にかけて、何人ものMERS-CoV確定患者が報告された病院に入院していました。彼女は6月1日に隔離されました。6月5日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。
  7. 7.39歳男性。5月31日に発症しました。彼は病院の救急室に入院した妻を見舞っていました。彼の妻は6月1日に報告されたMERS-CoV感染と確定診断された患者(No.1)と同じ部屋に入院していました。彼は、6月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。
  8. 8.75歳男性。6月4日にMERS-CoVの検査で陽性と判明しました。彼は、5月27日に、何人ものMERS-CoV確定患者が報告された病院の救急室にいました。さらなる調査が行われています。
  9. 9.81歳女性。6月4日にMERS-CoVの検査で陽性と判明しました。彼女は、5月27日に、何人ものMERS-CoV確定患者が報告された病院の救急室に行きました。さらなる調査が行われています。

これらの患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

これまでに、死亡者4人を含む合計50人のMERS-CoV患者が韓国の国立国際保健規約(IHR)担当者から報告されました。50人の中の1人は中国でも確認され、中国の国立国際保健規約(IHR)担当者からも報告された患者です。

2012年9月以降、WHOには、世界で1,204人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも448人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス

WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

食品に対する衛生習慣は守るべきものです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO.Global Alert and Response(GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus(MERS-CoV)- Republic of Korea. 8 June 2015.
http://www.who.int/csr/don/08-june-2015-mers-korea/en/