2015年06月12日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新35)

 2015年6月11日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国立国際保健規約(IHR)担当者は、6月5日から8日の間に、新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者8人をWHOに報告しました。

症例の詳細情報
1. 72歳男性。フフーフ市の住民で、5月20日に発症し、23日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。6月8日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUに入り重篤な容態です。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

2. 56歳男性。フフーフ市の住民で、6月1日に発症しました。患者は、6月4日にMERS-CoV感染が集団発生したフフーフ市内の病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。6月5日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者の状態は安定しており、病棟の陰圧室で隔離されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

3. 65歳男性。フフーフ市の住民で、5月27日に発症しました。患者は、6月2日にMERS-CoV感染が集団発生したフフーフ市内の病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。6月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUに入り重篤な容態です。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

4. 58歳男性。サウジアラビア国籍をもたない(非サウジ国籍)リヤド市の住民で、5月30日に発症し、6月4日に入院しました。患者には基礎疾患がありました。6月5日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUに入り重篤な容態です。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

5. 55歳男性。非サウジ国籍のAsfan町の住民で、5月31日に発症しました。患者は、6月3日にMERS-CoV感染が集団発生したフフーフ市内の病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。6月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。患者にはラクダおよびヒツジとの頻繁な接触機会があり、彼はその生乳も飲んでいました。発症までの14日間に、その他には既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者はICUに入り重篤な容態です。

6. 29歳男性医療専門職。フフーフ市の住民で、6月2日に発症しました。患者は、6月3日にMERS-CoV感染が集団発生したフフーフ市内の病院に入院しました。患者に基礎疾患はありません。6月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。5月10日から23日にかけて、彼は6月1日に報告されたMERS-CoV確定患者(No.1)への医療を提供していました。発症までの14日間に、その他には既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者の状態は安定しており、病棟の陰圧室で隔離されています。

7. 41歳男性。フフーフ市の住民で、6月1日に発症し、同日、入院しました。患者は、MERS-CoV感染が集団発生したフフーフ市内の病院の警備員をしていました。患者には基礎疾患がありました。6月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。彼には6月4日に報告されたMERS-CoV確定患者(No.7)との接触機会がありました。その他には既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者の状態は安定しており、病棟の陰圧室で隔離されています。

8. 58歳女性。フフーフ市の住民で、6月1日に発症しました。同日、患者はMERS-CoV感染が集団発生したフフーフ市内の病院に入院しました。現在、患者の状態は安定しており、病棟の陰圧室で隔離されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

 これらの患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

 2012年9月以降、WHOは、世界で1,227人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも449人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染の予防と制御の対策には、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐことが重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS- CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣には注意深くあるべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事象に関連して入国時に特別な検査を行うことを勧めてはいません。また、現在、旅行あるいは貿易を規制することも推奨していません。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Saudi Arabia. 11 June 2015.
http://www.who.int/csr/don/11-june-2015-mers-saudi-arabia/en/