2015年07月09日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新49)

 2015年7月8日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、フィリピンの国際保健規約(IHR)国家担当者は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者1人が確定診断されたことをWHOに報告しました。

症例の詳細情報
 36歳のフィンランド人男性。彼は、6月10日から18日にサウジアラビアに渡航し、リヤド、ジッダ、Dammam(ダンマーム)に滞在していました。患者には、サウジアラビアへの渡航前から咳の症状がありました。しかし、サウジアラビア渡航中は体調不良を感じることも、診療を求めることもありませんでした。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

 6月18日、患者はサウジアラビアを発ち、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで夜を明かし、6月19日にフィリピンのマニラに到着しました。サウジアラビアを出発するときに、彼には症状はありませんでした。6月20日から22日、彼はマニラ首都圏内のTaguig(タギッグ)市とMakati(マカティ)市に滞在していました。6月23日と24日には、マニアからクアラルンプール経由でマレーシアのペナン島へ行きました。6月25日、彼は、ペナン島からシンガポールへ向かい、そこからさらにマニラへ戻りました。マレーシアからシンガポールへの移動中およびマニラに戻る途中には、彼に症状はありませんでした。

 6月30日、患者は発熱と咳症状で発症し、7月2日に病院を受診し、検査を受けました。病院の医療アドバイスに反して、彼は病院を離れました。7月3日には、彼は自宅に留まっていました。7月4日に、彼は検査結果を聞くために病院に戻りましたが、病院は閉まっていました。そこで、患者は医療専門者に診てもらうために別の病院を受診しました。7月4日のうちに結果が出て、彼はMERS-CoVに陽性と判明しました。彼は、3つ目の病院に救急車で搬送され、隔離されました。現在、患者に熱症状はなく、安定した状態です。

公衆衛生における対策
 
フィリピンの保健省により、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。保健省は同乗したシンガポール発マニラ便の乗客全員についても積極的に追跡を行っています。

 サウジアラビアとアラブ首長国連邦の国家行政当局は連絡を受けました。接触の可能性と接触者の調査が行われています。入念な疾患サーベイランスが行われているところです。

世界での発生状況
 WHOは、2012年9月以降、1,368人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも487人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染の予防と制御の対策には、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐことが重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣には注意深くあるべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生におけるよい習慣です。

 多くの人々が集まるために準備するホスト国では、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考えられており、すべての関係職員にそれが利用可能であることを、公衆衛生当局は確認しておく必要があります。また、公衆衛生当局は、多くの人々が集まる期間中に受診者が医療システムで収容可能であることを保証するために、殺到したときの収容能力に対しても計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- The Philippines. 8 July 2015.
http://www.who.int/csr/don/08-july-2015-mers-philippines/en/