2015年07月10日更新 西アフリカのエボラ流行に関するIHR緊急委員会の第6回会合における声明

2015年7月7日にWHOから以下の声明が発信されました。
註:本文はあくまで参考情報です。詳細な内容については原文をお確かめください。

西アフリカのエボラ出血熱の感染流行に関する第6回緊急委員会会議が、国際保健規則(IHR:2005)に則りWHO事務局長によって招集され、2015年7月2日(木曜日)にテレビ会議を使って、さらに7月2-6日に電子文書で行われました。

前回の会議と同様に、委員会の役割は事務局長に以下の議題について進言することにあります。

(1) 現在の状況が国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態を制定し続けるべきものか
(2) もしそうであるならば、現在の一時勧告は延長または改定、そして/あるいは新たな一時勧告を発行すべきか

疫学上の現在の発生状況、感染対策活動の進展状況、接触者追跡および出国スクリーニングについて、ギニアとシエラレオネの代表者から説明が行われました。リベリアからは、海岸近くのMargibi(マーギビ)郡で最近発生した3人のエボラ出血熱確定患者の情報を含む書面が提出されました。また、患者調査、最初の感染源の特定、接触者の同定と追跡、患者の隔離と管理に対する実行状況も概説されました。

委員会は、2015年4月9日の前回会議以降の進展状況を検討しました。ここには、全体としての患者発生数の減少、ここ5週間における発生数の停滞、主にギニアとシエラレオネの西部地域に感染の流行が集中すること、加えて、リベリアで新たに3人の患者が発生したことが含まれています。委員会は、隣接する国々でのWHOの準備活動を取り上げ、ギニアとギニアビサウとの国境での協力体制の強化の重要性について強調しました。また、委員会は、リベリアでの新たな患者への懸念を示し、調査継続の必要性について強調しました。

数々の調査研究の進展、具体的には、精液の中でウイルスが長期間存在し続ける可能性に関する研究、生存者に対する前向き調査、ワクチンおよび回復期血清による治療法の臨床試験に関する研究について、簡潔に議論されました。

委員会は、国の各機関同士の協力、特に相互の意思疎通のレベルでは改善の余地があり、活動と運営を行う機関が適切な言語で地域社会と意思伝達できるようにすべきである点を指摘しました。また、委員会は、国家指導者の役割の重要性に関して述べる中で、ギニアとシエラレオネの大統領の諮問会議が密接な協力関係を続ける方針を打ち出していることに賛辞を贈りました。

委員会は、エボラ出血熱への対応戦略に関して、新たな段階であるPhase 3に移行することを歓迎しました。Phase 3とは、個々の感染連鎖を細かく把握することに焦点を当てる段階です。Phase 3では残存する全ての感染連鎖を特定し分断することが中心となり、その特定や分断は、患者と接触者の発見の強化と注意力の向上、地域の首長による対策や地域社会自身が行う対策など、感染連鎖を個々の事例単位での管理するアプローチを通して達成しされることになります。さらなる対策は、エボラ発生のない地域に未だに残るリスクを発見し、それを軽減することに費やされます。その対策には、警戒管理体制の強化と状況に合わせた改変、地域および広域での迅速な対応能力の強化、および生存者との関わりの改善や支援が含まれてきます。Phase 3の行動計画は早急に完成させ、迅速に実施に移されるべきです。

委員会は、いくつかの改善が見られるものの、たくさんの国で旅行や輸送への不適切な感染対策が取られており、多くの国際航空会社が感染の影響を受けた国へのフライトを再開していないこと指摘しました。

委員会は、出国スクリーニングに関して詳しいデータが提供されたことを歓迎し、その重要性に焦点をあて、それを続けることの必要性を支持しました。

委員会は、エボラ出血熱の感染流行は国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態を構成しつづけており、これまでに発行された一時勧告は延長されるべきであることを進言しました。

さらに、委員会は、事務局長に以下の点について検討することを進言しています。

最も深刻な影響を受けた国への提言(ギニア、リベリア、シエラレオネ)

委員会は、そのゴールはできるだけ早く感染伝播ゼロを達成することにあると強調しました。流行3か国では出国スクリーニングは継続される必要があります。このような出国スクリーニングの詳細なデータは毎月公表されるべきです。また、委員会は、効果的に出国スクリーニングを実行するために、これらの国への国際支援を呼びかけました。

委員会は、これらの国、特にギニアとギニアビサウの間で、国境での協力体制と情報交換のさらなる強化を続けることを進言しました。

感染が流行した国々は、医療従事者を確保し、再訓練し、対策の全ての側面で地域社会の参加を確保するために日々努力する必要があります。委員会は、地域社会に対して社会的精神的支援と隔離下に置かれた人々に支援を提供することの重要性を強調しました。

委員会は、最近発生した医師と救急車運転手の感染に懸念を示し、民間、公共、両方の医療施設において適切な感染予防と管理への対策の厳格な適応を引き続き確保することが重要性であることを力説しました。

ギニア、リベリア、シエラレオネとの国境が隣接する国々への提言

委員会は、(特に、国境付近での)サーベイランス、国境を越えた協力体制、厳格に機能する警戒システムと接触者追跡、これらを厳しい目でみることの必要性について繰り返し強調しました。

また、委員会は、特にギニアビサウに対して準備態勢のさらなる強化と関係する対処能力の向上を促しました。

すべての国への渡航に関する提言

委員会は、国際保健規則(IHR:2005)委員会の第2条で述べられているとおり、また、現在の緊急勧告において表明されているとおり、現在の公衆衛生上のリスクに見合った対策だけを実施するために、海外渡航と国際貿易に対する不要な介入を避けることの必要性を再び断言しました。

この進言や情報に基づいて、事務局長は西アフリカにおける2014-2015年のエボラ出血熱の流行発生が依然として国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態の要件を満たしていることを宣言しました。事務局長は、委員会のアドバイスを支持し、IHR(2005)に基づいて、これまでの一時勧告を継続し、新しい一時勧告として追加の進言を交付しました。

事務局長は、感染の影響を受けている国に滞在した、または、その国の市民であるというだけで、渡航者の入国を拒否したり、隔離したりすることは、公衆衛生上は公正であるとは言えないことを強調しました。適応される如何なる対策も、適切な公衆衛生上の証拠や渡航者個人が持つ潜在的なリスクに対する情報に基づくものでなければなりません。

委員会委員およびアドバイザーからの進言に対し謝意を述べ、3か月もしくはそれよりも早く、彼らに現況の再評価を行うことを要請しました。

出典

WHO.Statement on the6th meeting of the IHR Emergency Committee regarding the Ebola outbreak in West Africa, WHO Statement. 7 July 2015.
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2015/ihr-ebola-7-july-2015/en/