2015年07月13日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新50)

 2015年7月10日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、フィリピンの国際保健規約(IHR)国家担当者は、国内で発見された中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者の更新情報を7月6日にWHOに報告しました。

症例の詳細情報
 フィリピン保健省が確認したところによれば、フィリピン国籍でない36歳男性が6月30日にMERS症状を発症し、7月4日にウイルス陽性であることが検査で確認されました。彼は、本日(7月6日)に熱帯医学研究所を退院します。退院にあたって、48時間をおいて2回の検査が陰性で、もはや感染性はないことが示されました。現在、彼は回復し、状態は良好であると報告されています。

フィリピン保健省の対応
 フィリピンの保健当局によれば、患者は調査に協力し、予め定められた公衆衛生上の措置を遵守しています。予防措置として、36人の濃厚接触者が患者と最後に接触した日から14日間の健康監視下に置かれています。さらに接触者の追跡が続けられています。

 疫学調査では、患者は2015年6月29日以前には感染性がなかったことが示されています。その結果、6月29日以前の患者と同じ便に居合わせた乗客の監視を現在は終了しています。

世界での発生状況
 WHOは、2012年9月以降、1,368人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも487人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染の予防と制御の対策には、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐことが重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣には注意深くあるべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生の実践においてよいことです。

 多くの人々が集まるために準備するホスト国では、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考えられており、すべての関係職員にそれが利用可能であることを、公衆衛生当局は確認しておく必要があります。また、公衆衛生当局は、多くの人々が集まる期間中に受診者が医療システムで収容可能であることを保証するために、殺到したときの収容能力に対しても計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- The Philippines(update). 10 July 2015.
http://www.who.int/csr/don/10-july-2015-mers-philippines/en/