2015年08月13日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新59)

 2015年8月12日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規約(IHR)国家担当者は8月3日から9日の間に、死亡者3人を含む新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者17人をWHOに報告しました。

症例の詳細情報
1. 55歳女性。サウジアラビア国籍を持たない(非サウジ国籍)リヤド市の医療従事者です。彼女は、8月5日に発症し、8月6日に入院しました。彼女に基礎疾患はありません。8月8日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼女は、MERS-CoV感染が集団発生した病院に勤めていました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。彼女が入院した病院でのMERS-CoV感染者との接触機会の調査が行われています。発症までの14日間にその他には既知のリスクファクターとの接触はありません。

2. 60歳女性。リヤド市の住民で、7月30日に発症し、8月6日にリヤド市内の病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。8月8日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、この患者は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

3. 31歳女性。リヤド市の住民で、7月12日から別の疾患で入院中、7月30日に発症しました。この病院では、MERS-CoV感染が集団発生していました。8月1日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者および担当していた医療関係者との疫学的な関連の可能性について調査が進められています。

4. 74歳男性。リヤド市の住民で、8月5日に発症し、6日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。8月7日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。彼は、MERS-CoV感染が確定診断された患者(下記、No.10)の接触者です。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

5. 50歳女性。リヤド市の住民で、8月6日に発症し、同日、MERS-CoV感染が集団発生していた病院に入院しました。彼女には基礎疾患がありました。8月7日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。彼女はMERS-CoV感染が確定診断された患者(下記、No.6)の接触者です。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

6. 55歳男性。リヤド市の住民で、7月23日に発症し、7月27日にMERS-CoV感染が集団発生していた病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。7月29日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUに収容され重篤な容態です。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者および担当していた医療関係者と疫学的に可能性のある関係についての調査が進められています。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

7. 42歳男性。リヤド市の住民で、7月10日より別の疾患で入院中、8月1日に発症しました。この病院では、MERS-CoV感染が集団発生していました。8月3日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUで重篤な状態です。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者および担当していた医療関係者との疫学的な関連の可能性について調査が進められています。

8. 72歳女性。リヤド市の住民で、7月29日より別の疾患で入院中、8月2日に発症しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。彼女には基礎疾患がありました。8月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しましたが、8月9日に患者は死亡しました。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者および担当していた医療関係者との疫学的な関連の可能性について調査が進められています。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触機会についても調査が進められています。

9. 29歳女性。非サウジ国籍のリヤド市の医療従事者で、8月3日に発症し、同日、入院しました。彼女に基礎疾患はありません。8月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。彼女はMERS-CoV感染が集団発生した病院に勤めていました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者との接触機会について調査が行われています。発症までの14日間においてその他に既知のリスクファクターとの接触はありません。

10. 49歳男性。リヤド市の住民で、7月24日に発症し、同日、入院しました。患者には基礎疾患がありました。8月2日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、この患者は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

11. 38歳男性。リヤド市の住民で、7月29日に発症し、8月2日に入院しました。患者に基礎疾患はありません。8月4日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUで重篤な容態です。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。

12. 50歳男性。Najran(ナジュラーン)市の住民で、7月29日に発症し、8月2日に入院しました。8月2日に、MERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。患者に基礎疾患はありません。患者は病院で管理者として働いていました。彼は、頻繁にラクダとの接触機会があり、その生乳も飲んでいました。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。

13. 31歳女性。非サウジ国籍のリヤド市の医療従事者で、7月27日に発症し、同日、入院しました。彼女に基礎疾患はありませんが、妊娠しています。7月31日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUで重篤な容態です。彼女は、MERS-CoV感染が集団発生した病院に勤めていました。7月2日から21日にかけて、彼女はMERS-CoV確定患者(7月24日付、No.4)を担当していました。病院に入院していた他のMERS-CoV患者との疫学的な関連の可能性について調査が進められています。発症までの14日間においてその他に既知のリスクファクターとの接触はありません。

14. 86歳男性。リヤド市の住民で7月25日に発症し、27日にMERS-CoV感染が集団発生していた病院に入院しました。患者には基礎疾患がありました。7月29日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、患者はICUで重篤な容態です。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が進められています。

15. 78歳男性。リヤド市の住民で、7月10日に発症し、11日に病院に入院しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。患者には基礎疾患がありました。7月28日に、MERS-CoVの検査結果で陽性と判明し、7月31日に死亡しました。患者と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者および担当していた医療関係者との疫学的な関連の可能性について調査が進められています。発症までの14日間においてその他に既知のリスクファクターとの接触はありません。

16. 75歳男性。非サウジ国籍のリヤド市の住民で、7月15日から別の疾患のために入院中、7月21日に発症しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。彼には基礎疾患がありました。7月27日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しましたが、8月4日に患者は死亡しました。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者および担当していた医療関係者との疫学的な関連の可能性について調査が進められています。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

17. 53歳男性。7月20日に発症し、同日、病院に入院しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。彼には基礎疾患がありました。7月30日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。彼は、MERS-CoV感染が確定診断された患者(7月29日付、No.5)の親戚です。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触機会について調査が進められています。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室で隔離されています。

 これらの患者に対して、家族と医療機関の接触者追跡が行われています。

 サウジアラビアの国際保健規約(IHR)国家担当者は、以前に報告されたMERS-CoV患者2人の死亡をWHOに報告しました。患者は、8月6日に報告されたNo.1と7月29日に報告されたNo.7です。

 WHOは、2012年9月以降、1,401人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも500人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために極めて重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初 期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべて の患 者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に 加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触 予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要がありま す。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、 特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHO は、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、 MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生の実践におけるよい習慣となります。

 大きな集会を予定しているホスト国では、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考慮されており、すべての関係職員にそれらが利用可能であることを、公衆衛生当局が確認しておく必要があります。また、公衆衛生当局は、多くの人々が集まる期間中に、来訪した人々に対して医療システムが確実に対応できるように、急激な患者増加の際の収容能力に対して計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Saudi Arabia. 12 August 2015.
http://www.who.int/csr/don/12-august-2015-mers-saudi-arabia/en/