2015年09月02日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新64)

 2015年9月1日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ヨルダンの国際保健規約(IHR)国家担当者は8月26日から28日の間に、死亡者1人を含む新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者4人をWHOに報告しました。これらの患者は全員が、現在、アンマン市の病院で起きているMERS-CoVの集団発生と関係しています。

症例の詳細情報
1. 60歳男性。サウジアラビアのジッダの住民で、7月28日からヨルダンのアンマン市を旅行していました。彼は、7月31日に発症し、8月10日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。症状に対し治療が行われ、8月18日に退院しました。しかし、8月20日には再び症状が現れ、8月23日に別の病院に入院しました。8月25日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しましたが、8月27日に死亡しました。発症までの14日間の既知のリスクファクターとの接触について調査が行われています。

2. 38歳男性。クウェートのクウェート市の住民で、8月7日からヨルダンのアンマン市を旅行していました。彼は、8月12日に発症し、8月17日にMERS-CoV感染が確定診断された患者(前出、No.1)が入院する病院に入院しました。アンマン市に到着後、彼は何度も同病院で家族のところを訪れていました。彼に基礎疾患はありません。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。彼は8月26日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼はICUで重篤な容態です。最初の患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。

3. 76歳男性。アンマン市の住民で、8月16日より別の疾患のために、MERS-CoV感染が確定診断された患者(前出、No.1)が入院する病院に入院し、同日、退院しました。彼は、8月20日に慢性疾患の医療処置のために同病院に再度入院し、8月24日に退院しました。ところが、8月25日に症状を発現し同病院に入院しました。8月25日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼はICUで重篤な容態です。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。

4. 47歳女性。クウェートのクウェート市の住民で、7月15日からヨルダンのアンマン市を旅行していました。彼女は、MERS-CoV感染が確定診断された患者(前出、No.2)の接触者に対するスクリーニング検査で発見されました。彼女に基礎疾患はありません。8月27日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼女は無症状のまま、自宅での隔離が行われています。彼女は、MERS-CoV感染が確定診断された患者(前出、No.1)が入院する病院で家族のところを訪れていました。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

 これらの患者に対する家族と医療機関の接触者への追跡が行われています。また、ヨルダンの国際保健規約(IHR)国家担当者は、最初の患者とのサウジアラビアでの接触者を追跡するために、サウジアラビアの国際保健規約(IHR)国家担当者にも情報を知らせました。

 世界的には、WHOは、1,478名の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも516人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、あらゆる異常を示す症例についても注意深く調査することを勧めています。

 医療施設でMERS-CoVが拡がる可能性を下げるには、感染予防および管理方法が重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うべきです。また、MERS-CoV感染の可能性がある症例、あるいは確定診断された症例の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特に ラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

  WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生の実践におけるよい習慣となります。

 大きな集会を予定しているホスト国の保健行政当局は、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考慮されており、すべての関係者にそれらが利用可能であることを確認しておく必要があります。また、保健行政当局は、多くの人々が集まる期間中に、来訪した人々に対して医療システムが確実に対応できるように、急激な患者増加の際の収容能力に対して計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR):
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV)- Jordan. 1 September 2015
http://www.who.int/csr/don/01-september-2015-mers-jordan/en/