2015年09月03日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新65)

 2015年9月2日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規約(IHR)国家担当者は8月24日から25日の間に、死亡者2人を含む新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者15人をWHOに報告しました。これらの報告された患者のうち11人は、現在、リヤド市の病院で起きているMERS-CoVの集団発生と関係しています。

症例の詳細情報
1. 68歳女性。リヤド市の住民で、8月13日に咳と息切れで発症し、8月15日にMERS-CoV感染が集団発生している病院に入院しました。入院中の8月20日に、彼女は発熱を示しました。彼女には基礎疾患がありました。8月22日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

2. 81歳男性。リヤド市の住民で、慢性疾患のため8月1日に入院し、8月7日に退院しました。この病院では、MERS-CoV感染が集団発生していました。彼は、8月9日に発症し、8月11日に同じ​​病院に入院しました。8月18日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

3. 51歳男性。サウジアラビア国籍を持たない(非サウジ国籍)リヤド市の医療従事者で、MERS-CoV感染が集団発生している病院に勤めていました。彼は、8月23日に発症し、同日、病院に入院しました。彼に基礎疾患はありません。8月24日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼はICUで重篤な容態です。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

4. 69歳男性。リヤド市の住民で、8月19日に発症し、8月21日にMERS-CoV感染が集団発生している病院に入院しました。彼は、発症までの14日の間に同病院の救急室を受診していました。彼には基礎疾患がありました。8月22日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼はICUで重篤な容態です。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

5. 30歳女性。非サウジ国籍のリヤド市の医療従事者で、MERS-CoV感染が集団発生している病院に勤めていました。彼女は、8月20日に発症し、同日、入院しました。彼女に基礎疾患はありません。8月22日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、自宅での隔離が行われています。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

6. 58歳男性。リヤド市の住民で、慢性疾患のため8月7日から入院中、8月19日に発症しました。この病院では、MERS-CoV感染が集団発生していました。彼は8月21日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

7. 78歳男性。リヤド市の住民で、別の疾患のために入院中、8月18日に発症しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。彼には基礎疾患がありました。8月20日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

8. 69歳女性。リヤド市の住民で、慢性疾患のため8月17日より入院中、8月19日に発症しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。彼女には基礎疾患がありました。8月21日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しましたが、8月24日に死亡しました。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

9. 51歳女性。リヤド市の住民で、8月17日に発症し、8月18日にMERS-CoV感染が集団発生している病院に入院しました。彼女は8月14日に慢性疾患のため同病院で医療処置を受けていました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼女と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

10. 75歳男性。リヤド市の住民で、慢性疾患のために8月2日より入院中、8月13日に発症しました。この病院ではMERS-CoV感染が集団発生していました。彼は8月19日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しましたが、8月25日に死亡しました。彼と同じ病院に入院していたMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

11. 64歳男性。非サウジ国籍のリヤド市の住民で、8月19日に発症し、8月22日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。8月24日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼はICUで重篤な容態です。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触について調査が行われています。

12. 67歳女性。Alzolfi市の住民で、8月18日に発症し、8月21日に入院しました。彼女には基礎疾患がありました。8月23日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触について調査が行われています。

13. 72歳女性。Delam市の住民で、8月17日に発症し、8月22日に入院しました。彼女には基礎疾患がありました。8月24日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼女はICUで重篤な容態です。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触の機会について調査が行われています。

14. 42歳男性。リヤド市の住民で、8月21日に発症し、同日、入院しました。彼には基礎疾患がありました。8月23日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼はMERS-CoV感染が確定診断された2人の患者(8月21日付、No.12;8月27日付。No.1)との接触歴があります。14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

15. 82歳男性。リヤド市の住民で、8月5日に発症し、8月20日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。8月22日にMERS-CoVの検査結果で陽性と判明しました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触について調査が行われています。

 これらの患者に対して、家族と医療施設の接触者への追跡が行われています。

 サウジアラビアの国際保健規約(IHR)国家担当者は、以前に報告されたMERS-CoV患者9人の死亡をWHOに報告しました。患者は、8月26日に報告されたNo. 4、5、8、13、14、17、および8月21日に報告されたNo.4、9、並びに8月18日に報告されたNo. 7です。

 WHOは、2012年9月以降、1,493人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告と、少なくとも527人の関連する死亡報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために極めて重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生の実践におけるよい習慣となります。

 大きな集会を予定しているホスト国の保健行政当局は、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考慮されており、すべての関係者にそれらが利用可能であることを確認しておく必要があります。また、保健行政当局は、多くの人々が集まる期間中に、来訪した人々に対して医療システムが確実に対応できるように、急激な患者増加の際の収容能力に対して計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Saudi Arabia. 2 September 2015
http://www.who.int/csr/don/02-september-2015-mers-saudi-arabia/en/