2015年09月24日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新70)

 2015年9月18日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ヨルダンの国際保健規約(IHR)国家担当者は8月(原文どおりに記載)7日から10日の間に、死亡者2人を含む新たな中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者5人をWHOに報告しました。

症例の詳細情報
1. 78歳男性。アンマン市の住民で、8月26日に発症し、9月1日に入院しました。患者は慢性疾患のために頻繁に病院を受診していました。この病院ではMERS-CoVが集団発生していました。彼は9月4日に亡くなり、9月5日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。この病院のMERS-CoV患者並びに担当していた医療従事者との疫学的な関連の可能性について調査が行われています。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

2. 53歳男性。アンマン市の住民で、8月27日に発症し、9月5日に入院しました。患者には基礎疾患と重度の喫煙歴がありました。9月8日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。患者は9月7日に亡くなりました。発症までの14日間におけるその他の既知のリスクファクターとの接触機会について調査が行われています。

3. 7歳女児。アンマン市の住民です。無症状ですが、9月10日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼女は無症状のまま、経過観察のため病棟の陰圧室で隔離されています。彼女に基礎疾患はありません。MERS-CoV感染が確定診断された患者(上記-No.2)との接触者です。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

4. 10歳女児。アンマン市の住民で、9月9日に発症しました。9月10日に入院し、同日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼女に基礎疾患はありません。MERS-CoV感染が確定診断された患者(上記-No.2)との接触者です。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

5. 65歳女性。アンマン市の住民で、9月3日に発症し、9月9日に入院しました。彼女に基礎疾患はありません。9月10日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室に隔離されています。彼女は、MERS-CoV感染が確定診断された患者(9月1日付No.3)の病院を訪れていました。そこではMERS-CoVが集団発生していました。発症までの14日間にその他の既知のリスクファクターとの接触はありません。

 これらの患者に対する家族と医療施設の接触者への追跡が行われています。

 ヨルダンの国際保健規約(IHR)国家担当者は、以前に報告されたMERS-CoV患者1人の死亡をWHOに報告しました。患者は、9月1日に報告された(No. 3)です。

 WHOは、少なくとも554人の関連する死亡者を含む、1,569人のMERS-CoV感染の検査確定患者の報告を受けています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために極めて重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させることは、公衆衛生の実践におけるよい習慣となります。

 大きな集会を予定しているホスト国の保健行政当局は、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考慮されており、すべての関係者にそれらが利用可能であることを確認しておく必要があります。また、保健行政当局は、多くの人々が集まる期間中に、来訪した人々に対して医療システムが確実に対応できるように、急激な患者増加の際の収容能力に対して計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR).
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Jordan. 18 September 2015
http://www.who.int/csr/don/18-september-2015-mers-jordan/en/