2015年10月22日更新 エボラ出血熱の発生状況 (第42週)

2015年10月21日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、エボラ出血熱の発生状況は以下のとおりです。これまでのエボラ出血熱の総患者数は28,512人、死亡者数は11,313人になりました。

註:情報を簡潔に伝えるために、ここでは全体の患者発生状況、医療従事者での患者発生状況に内容を絞り込んでいます。要約に書かれているように、この他にも国別の発生状況及び対応状況が報告されています。詳細については原文をご参照ください。

要約

  • 10月18日までの1週間に、新たなエボラ出血熱の確定患者3人が報告されました。全患者がギニアから報告されています。この国では2週間続けて確定患者数ゼロを報告していました。3人のうち、1人は首都コナクリから、2人はフォレカリア県下のKaliah(カリア)から報告されています。注目すべきことに、2人は接触の登録者ではなく、うち1人は地域社会内での死後検査で発見されました。現在、ギニアでは246人の接触者(うち70人はハイリスク)が観察下にあり、加えて、42日間に253人の接触者との連絡が取れない状態です。そのため、接触の登録者と連絡のとれない接触者の両方の中に、近い将来にもさらなる患者が発生するリスクが残されています。シエラレオネでは5週間続けて確定患者数がゼロと報告されています。
  • 患者発生数は12週連続して5人以下となっています。この間に、ウイルスの感染伝播は地理的にギニア西部とシエラレオネの僅かな狭い地域に絞られてきました。現況は確実に第3期に移行しています。第3期の対策ではエボラ出血熱に対する政府官庁間の協力体制の調整が図られ、現行の対策に加えられることで、患者発生数をゼロへと向わせ、エボラ出血熱流行の収束を維持することが確かなものにされます。(活動性のある感染伝播をもつ地域やウイルスを保有した動物宿主からの)ウイルスの再侵入や生存者からのウイルス再出現を早期に発見することに対しさらに強化された対応能力、生存者の快適な生活を守る包括パッケージの一部としての検査やカウンセリングの対応能力が、第3期の対策における枠組みの中心となります。
  • コナクリの患者は、21歳男性で、市内のRatoma(ラトマ)地区から報告されています。しかし、彼は以前の患者からの既知の接触者ではなく、遺伝子解析からはコナクリやフォレカリアで直近の患者で得られたエボラウイルス株からの感染ではないことを示唆しています。接触源を発見するための調査が行われています。フォレカリアの1人目の患者は、35歳女性で、接触者としては登録されておらず、地域社会内で死後の検査で発見されました。しかし、遺伝子解析では、彼女は2015年9月27日の週にフォレカリアの同じ県下で報告された4人の患者と同じ感染連鎖(ラトマ系統)であることが示唆されています。フォレカリアの2人目の患者は彼女の3か月の子どもで登録された接触者でした。10月18日現在、ギニアでは246人の接触者が観察下にあり、43人がコナクリに、残りがフォレカリアに居ます。
  • シエラレオネのボンバリとカンビアでは、この地域で活動性のある最近の2つの感染連鎖に関連する接触者全員が21日の観察期間を終えました。また、治療を受けた最後の患者が9月25日に連続検査の2回目でも陰性の結果を得て、回復が確認されました。さらなる患者が報告されなければ、この国では11月7日にエボラ出血熱の感染流行の終息が宣言される予定です。しかし、ボンバリとカンビアで1人ずつ、合わせて2人のハイリスク接触者との連絡が取れなくなっています。これらの連絡の取れない接触者と連絡を取る努力が、それぞれの地域で最後の患者が報告されてから42日間が過ぎるまで続けられます。
  • 現状には、感染の影響を受けていない地域におけるエボラ出血熱の再侵入や再出現を早期に確実に発見するために、厳重な調査活動への取り組みが重要です。ギニアでは、10月18日の週に合計654検体が9つの稼働する検査室で新たに又繰り返し検査されました。リベリアでは、同じ期間に新たな検体1,278本が集められ、国内で稼働する4つの検査室で検査されました。シエラレオネでは、1,592検体が集められ、稼働する検査室8か所で検査されました。

広範囲に及ぶ深刻な感染の伝播が生じている国

  • 流行の勃発以降、10月18日までに、ギニア、リベリア、シエラレオネではエボラ出血熱患者(確定患者、可能性の高い患者、疑い患者を含む)が合計28,476人、うち死亡者が11,298人となりました(多くの患者の帰転は不明ですが、この総計には可能性の高い患者および疑い患者から報告された死亡者が含まれます)。10月18日までの1週間に、新たに患者3人が報告されました。全患者がギニアからです。
  • 確定患者の合計は男女で近いものとなっています。患者発生数を15歳未満の小児と比較したとき、15歳から44歳までの成人ではギニアとリベリアで約4倍、シエラレオネでは約3倍感染しやすい傾向があります。45歳以上の成人ではギニアで約5倍、リベリアとシエラレオネで約4倍となっています。
  • 10月18日までの1週間に、新たな医療従事者の感染は報告されていません。ギニア、リベリア、シエラレオネから881名の医療従事者の感染が報告されています。このうち、513名が亡くなっています。(3か国以外の国でも、19名の感染と7名の死亡が報告されています)

表1:ギニア、リベリア、シエラレオネにおける可能性の高い患者、確定患者、疑い患者の発生数および死亡者数

図.エボラ出血熱の発生状況

註:データは各国の保健省からの公式情報に基づいています。これらの数値は再分類、再集計、検査結果の利用状況によって変わることがあります。*再分類された疑い患者と可能性の高い患者の割合が高いために報告が見送られています。**2015年5月9日以前に報告された患者は青色の陰で示されています。継続されている調査および患者と死亡者の遡及的な確定調査によって、これらの数字は改訂されることがあります。リベリアでは、人でのエボラウイルス流行の終息が2015年9月3日に宣言され、現在、高度警戒の調査体制に入っています。

図2:確定患者が報告された地図上の分布図(2015年10月18日)

図.確定患者が報告された地図上の分布図

註:この地図の中で使用される境界と表示されている名称および呼称は、いかなる国、領土、都市や地域についてもその統治状況に関して、あるいはその国境や境界の設定に関してWHOが見解を発表しているものではありません。また、地図上の点線と破線は、その地域間で完全な合意にいたっていない可能性があるためにおおよその境界線を表しています。

出典

WHO.Situation reports:Ebola response roadmapSituation report. 21 October 2015
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/190067/1/ebolasitrep_21Oct2015_eng.pdf?ua=1