2015年10月26日更新 中東呼吸器症候群(MERS)の発生状況 (更新77)

 2015年10月25日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、韓国の国際保健規約(IHR)国家担当者は以前に報告されていた中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者の追加情報を提出しました。この患者は、MERS-CoVに対する2回の連続したPCR検査で陰性の結果を得たことから10月3日に病院を退院していましたが、発熱のため10月11日に再び入院し、12日にMERS-CoVに対する検査が再び陽性に転じました。

症例の詳細情報
 35歳男性。10月11日に発症し入院しました。彼は隔離のために別の病院に搬送されました。患者には基礎疾患があります。10月12日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。10月14日現在、彼の状態は改善してきていると報告されています。家族と医療施設の接触者への追跡が行われています。 
 
 患者のこれまでの既往歴は以下のとおりです。
 患者は5月27日にMERS-CoV確定患者から暴露を受け、6月6日に隔離のために病院に入院となりました。6月7日に、初めてMERS-CoVに対して陽性であることが判明し、7月3日には隔離のために別の病院に搬送されました。患者は、10月1日にMERS-CoVに対する2回の連続したPCR検査で陰性の結果を得たことから、10月3日に病院を退院していました。

 これまでに、韓国ではこの集団感染に伴い患者186人が発生し、うち36人が死亡しています。

世界の発生状況
WHOは、2012年9月以降、少なくとも574人の関連する死亡報告を含む、1,599人の検査確定したMERS-CoV感染の患者報告を受けています(数値は原文どおりに記載)。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために極めて重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS‐CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して入国の際に特別な手続きを取ることや渡航及び貿易を制限することを勧めてはいません。

 大きな集会を予定しているホスト国の保健行政当局は、MERS-CoVに関してWHOから発行されたすべての勧告とガイダンスが十分に考慮されており、すべての関係者にそれらが利用可能であることを確認しておく必要があります。また、保健行政当局は、多くの人々が集まる期間中に、来訪した人々に対して医療システムが確実に対応できるように、急激な患者増加の際の収容能力に対して計画しておく必要があります。

出典

WHO. Global Alert and Response (GAR). 25 October 2015
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Republic of Korea
http://www.who.int/csr/don/25-october-2015-mers-korea/en/