2015年11月30日更新 アフリカにおける流行感染症の報告 (更新2)

2015年10月に世界保健機関(WHO)アフリカ地域事務局(AFRO)から発行されたOutbreak Bulletin(流行の発生報告、Vol. 5 Issue 5, 31 October 2015)において、アフリカでのエボラ出血熱、コレラの発生状況が報告されています。このうち、ここではコレラについてまとめています。原文には図表も掲載されています。詳細については原文をご参照ください。

概観

イベント管理システムを通じた早期警戒システムからのデータによれば、2015年1月から9月までの公衆衛生イベントは80件でした。そのうち感染症が83%(66/80)で、コレラの報告がもっとも多く23%を占めていました。

コレラ

アフリカ地域では、2015年1月から9月までに47か国のうち15か国でコレラの流行が発生し、死亡者585人(致死率1.7%)を含む総計35,112人の患者が報告されました。全患者の90%は、コンゴ民主共和国(34%:致死率1.7%)、モザンビーク(24%:致死率0.7%)、ケニア(9%:致死率1.9%)、ナイジェリア(9.7%:致死率4.4%)、タンザニア(8.5%:致死率1.7%)の5か国で占められています。

全体として、コレラの流行は雨期とエルニーニョ現象により主にアフリカ東部と中央部で拡大しています。アフリカ南部でも同様に拡大しています。

コレラ流行に対する取り組みとして、WHOと加盟国は各国の保健省に対して協力体制、調査活動、検査体制、患者管理、手洗い活動(WASH activities)地域社会活動の分野での支援を続けます

発生に対応した経口コレラワクチン接種キャンペーンが、南スーダン、カメルーン、マラウイ、タンザニアで行われています。

タンザニアのコレラ流行

WHOは、タンザニアの健康保健省(MOHSW)から新たなコレラ流行の発生について報告を受けました。感染の影響を受けているのは次の13州です。

Dar es Salaam(ダルエスサラーム)、 Morogoro(モロゴロ)、Pwani(プワニ)、Kigoma(キゴマ)、Kilimanjaro(キリマンジャロ)、Iringa(イリンガ)、Dodoma(ドドマ)、Geita(ゲイタ)、Mara(マラ)、Singida(シンギダ)、Shinyaga(シニャンガ)、Mwanza(ムワンザ)、Zanzibar(ザンジバル)

ダルエスサラームが最も流行の影響を受けています。

10月21日までに、全国で流行の影響を受けた地域から死亡者74人を含む患者4,922人が報告されています。患者の71%はダルエスサラームからの報告です。

検査検体はコレラ菌に対して陽性の結果を示しました。

キゴマ州(タンザニア西部)におけるコレラの流行は制御されてきました。キゴマ州では、5月にコレラの流行が発生し、死亡者32人を含む4,528人がブルンジ難民の中から報告されました。

WHOと加盟国からの支援を受け、健康保健省は、定期的な国家コレラ対策室の調整会議の開催、患者管理、調査活動と検査体制の整備、手洗い活動(WASH)、地域社会での注意喚起などのコレラにおける感染制御対策を行っています。治療センターが設置されました。WHOは、リスク評価、計画の推進、調査活動、患者管理、地域動員活動、手洗い活動(WASH)の各領域において技術的支援を行うために4人の国際的な専門家を配備しました。定期的に3者(WHOの国家担当事務局、WHOアフリカ地域事務局、対策責任者)の間で、対策の進捗状況の評価と新たな戦略及び地域介入へ提言を行うために電話会議が行われています。

コンゴのコレラ流行

コンゴ民主共和国では、コレラの流行が続いています。2015年1月1日から10月11日までに死亡者224人を含む患者14,085人(致死率1.6%)が、11州のうちの9州から報告されました。Sud-Kivu(南ギブ), Maniema(マニエマ)、Nord-Kivu(北ギブ), Katanga(カタンガ)、Oriental(東部)の各州が最も流行の影響を受けています。

WHOとその他の加盟国からの支援を受け、健康保健省は、コレラの予防と感染制御の対策を実施してきています。ここでは、国と地方レベルでの流行対策委員会の定例会議、患者数および死亡数の定期報告、手洗い活動(WASH)、公衆衛生に対する意識向上、地域活動の動員への支援の継続などが行われています。

アフリカへ渡航、滞在される方は、今後の情報に注意していただくとともに、以下の対策を行ってください。

  • 飲料水や歯みがき、うがいの水にはミネラルウォーターを使うか、十分に沸騰させた水を使うこと。氷は生水から作られている可能性があるので食べないこと。
  • 食事は加熱されたものを、冷めないうちに食べること。
  • 食事の前、トイレの後には石けんと水で十分に手洗いすること。
  • 下痢になった場合、以下の作り方で作った水を十分にとり、できるだけ早く医療機関で診療を受けること。

図.吸収のよい水の作り方

出典

WHO/AFRO.Outbreak Bulletin, Vol. 5 Issue 5, 31 October 2015
http://www.afro.who.int/en/clusters-a-programmes/dpc/epidemic-a-pandemic-alert-and-response/outbreak-news/4764-outbreak-bulletin-vol-5-issue-5-31-october-2015.html