2016年02月17日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新)

 WHOよりジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)に関する発生情報が報告されています。2016年2月12日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:今回からは、内容を簡潔に伝えるために、内容を絞って掲載しています。内容の一部に矛盾もみられますが、翻訳は原文にしたがって行っています。詳細は、原文でご確認下さい。

要約

WHOは、感染対策、調査活動、研究に焦点を絞った対策戦略の基本骨格に関係する機関を通じて、協調体制での多部局にまたがる対応を呼び掛けています。
2007年1月以降に、39か国でこのウイルスの国内感染での流行が報告されています。地理的な分布は着実に拡大しています。
ブラジル、フランス領ポリネシア、エルサルバドル、ベネズエラ、コロンビア、スリナムの6か国で、ジカウイルス感染症の集団発生と同時期に小頭症及びギラン・バレー症候群患者の発生数の増加が報告されています。プエルトリコとマルティニーク島では、患者数の増加はないものの、ジカウイルスへの感染が関係するギラン・バレー症候群患者が報告されています。これまでのところ、ジカウイルスと小頭症またはギラン・バレー症候群とを関連付ける科学的証拠は確認されていません。
ジカウイルスの拡大に伴い、女性生殖機能の健全性に焦点が集まり始めています。最新の研究では、妊娠中にジカウイルスに感染したことが新生児の小頭症と関連している可能性が示唆されています。
WHOは、妊娠女性だけでなく、これからの妊娠を考えている女性とその配偶者に向けて、ジカウイルス感染症が流行する国への渡航に当たってのアドバイス(助言)をしています。

発生状況の概観

・WHOは、ジカウイルスの流行と潜在的に関係が疑われる神経系合併症に対し、今後6か月以内に早期の対策活動を実施するため、対策戦略の基本骨格(SFR)を作成するに当たって協力機関に指導的役割を果たしてきました。基本骨格は、協調活動、調査活動、地域組織の開拓、媒介蚊の制御、母子の健康、公衆衛生学的研究、そして疫学研究とその発展で構成されています。WHOは、現在、ジカウイルス感染症の対策において、早急に必要な事項と必要となる条件の最終的な取り纏め作業を行っています。
・2月10日に行われた加盟国への説明会で、WHOは、100人以上の参加者に対して、ウイルスと合併症、そして対策戦略の基本骨格のことを説明しました。
・ジカウイルスの拡大による国際的な懸念が広がっているため、WHOは、現在、流行が発生している34か国の関係者と協力関係を強化する活動を行っています。報告される小頭症の患者数が同時期に増加しており、特にブラジルで報告される新生児の先天異常が認められます。ギラン・バレー症候群(GBS)についても、ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、スリナム、ベネズエラで増加しています。GBSは、2013年から2014年にかけてのフランス領ポリネシアでの流行発生時にもみられました。
予防対策が喫緊の課題となります。蚊が生息できる環境ならば、世界中どこででもジカウイルスは広がる可能性があると懸念されています。この事態を受けて、様々な分野で影響が出る可能性があることから、国際的に分野を超えた対策への呼び掛けが行われています。
・先週WHOは、WHO本部及び各地域事務局レベルで非常事態管理体制(Incident Management System)を立ち上げました。南米地域では、WHOは汎米保健機構(PAHO)と協力し、政府、国連機関、赤十字、赤新月社、NGO、宗教団体等と連携しながら対策活動に当たっています。
・妊娠中または今後妊娠を計画する女性においては、新生児に対する小頭症の発生リスクへの警戒が必要となっています。小頭症の原因については、まだ多くが解明されていません。WHOは、更なる証拠が明らかになるまで、女性がジカウイルスの感染から自分自身を守る方法について提言しています。

疫学情報

ジカウイルスの発生
・2007年以降、ジカウイルスの伝播は、合計で46の国と地域で記録されています。ここには、2015年から2016年までに感染伝播が報告された34の国と地域、ウイルスの流行に該当した6か国、ジカウイルスの流行が終息した5か国と、蚊による感染はないものの一部で国内感染が発生した国が含まれています。
・2015年から2016年にかけて、ジカウイルスの地理的な分布は着実に拡大しており、現在、アメリカ大陸26の国と地域でこのウイルスの国内感染の伝播が報告されています。
・ブラジルでは、流行が始まって以来、ジカウイルスの感染者数は1.5億人に上ると見積もられています。
・コロンビアは、ブラジルに次いで最も感染の影響を受けた国で、2015年10月に同国初の患者が確認されて以降、疑い患者は25,000人を超え、ジカウイルス感染症患者1,331人が確認されました。
・カーボベルデでは、7,000人を超えるジカウイルス感染症の疑い患者が報告されています。

小頭症の発生
・2016年1月30日時点で、2015年1月以降、ブラジル保健省は死亡者76人を含む小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形4,783人を報告しました。
・ブラジル政府は、小頭症の報告例4,783例のうち1,113例の調査を終結しました。(このうち、)709例ではデータが処分され、404例が確認されました。現在も、3,670例が調査中です。
・確認された患者のうち、387例では先天性感染症と所見が一致し、17例ではジカウイルスの感染が検査で確認されました。全員がブラジル北東部の州での出生でした。
・先天奇形による死亡が報告された76件のうち、ジカウイルスが5例の胎児組織から検出されました。すべてがブラジル北東部からでした。より厳格な調査と研究が、この潜在する関連性をより深く理解するために計画されています。
・2013年から2014年にかけてフランス領ポリネシアで行政当局によって行われた出生データの見直しでは、2014年3月から2015年5月までの間に生まれた子どもで、例年を上回る出生児の中枢神経奇形が示されていました。
・ハワイ州とスロベニアで出生した小頭症の新生児からジカウイルスへの感染が確認されました。ハワイ州でもスロベニアでも、ジカウイルスの国内発生は報告されていません。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生
・ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、スリナム、ベネズエラでジカウイルスが流行する中で、ギラン・バレー症候群(GBS)患者数の増加が報告されました。
・2015年7月には、ブラジル政府がバイーア州で患者42人(55%)のGBS患者を報告しました。このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。また、神経症候群を示す患者7人からは、2015年11月にジカウイルスの感染に陽性であったことが確認されました。2015年には前年と比べて19%の増加が報告されました。
・コロンビアで報告されたGBS患者からは、これまでにジカウイルスへの感染または他の原因に対して検査で(原因)が確認された患者はいません。
・エルサルバドルでは、死亡者2人を含む46人のGBS患者が報告されました。これまでの患者でジカウイルスへの感染または他の原因に対して検査で(原因)が確認された患者はいません。
・スリナムでは、2015年に報告されたGBS患者10人のうち2人でジカウイルスの感染が確認されました。
・ベネズエラでは、2016年1月に、時間的・空間的にジカウイルスと関連性をもつGBS患者252人が報告されました。スリア州のGBS患者66人からの予備解析では、ジカウイルスの感染と臨床経過との一貫性が示されました。ジカウイルスへの感染が、致死的であった患者1人を含む3人の患者から確認されました。
・マルティニークでは、GBS患者2人でジカウイルスの感染が確認されたことが報告されています。プエルトリコでは、GBS患者1人が報告されました。これらは、何れも前年と比べて発生数の増加を示すものではありません。
・フランス領ポリネシアでは、42人全員が、2013年から2014年にかけて流行したデング熱およびジカウイルス感染に陽性であったことが示されました。
・ブラジル、コロンビアエル、サルバドル、スリナムでみられたGBS発生率の増加の原因は、特に、アメリカ大陸ではデング熱、チクングニアおよびジカウイルスが全て同時に流行発生したことから、未解明のままです。調査は、感染の原因を解明するための調査がGBS発生率の増加する国で続けられています。

感染への取り組み

 加盟国と協議の上で歳策戦略の基本骨格(SRF)が作成されました。全体的な戦略の目的は以下のようになっています。
・調査活動:ネッタイシマカ、ジカウイルス感染症、神経症候群および先天奇形に関する最新かつ正確な情報を提供すること
・対策:ジカウイルス関連疾患のリスクを伝え、(感染から)健康を守るための行動を促進し、不安を軽減し、偏見に対処し、風評や文化的な誤解を払拭するために、地域社会を取り込んでいくこと。ジカウイルスのよる感染の影響を受ける、妊娠女性と妊娠を考える女性並びに子どもを含めた家族に注意喚起のための資料を提供し、衝撃を和らげること
・調査および研究:小頭症及び神経症候群の病因を調査し、ジカウイルスの感染による結果であることの可能性を確立すること。迅速診断、ワクチン、治療薬などの新製品の研究開発を最優先とすること

加盟国との協調活動
WHOは、国家の担当部局やその他の支援組織と協力して、対策戦略の優先順位と、多数の分野と領域にわたる対応能力の地図(構成図)を作成しています。
WHOは、地域および世界的視野で効果的に対策を調整するために、国連機関、GOARN(地球規模感染症に対する警戒 と対応ネットワーク)および技術ネットワーク、公衆衛生および研究の支援組織、国内および国際的なNGOや開発支援組織と関わっています。
WHOと国連人道問題調整事務局(OCHA)は、調整機構と相互情報伝達が既存の人道対策システムとともに運用可能であることを確認しながら緊密に協力し合っています。
国際会計基準委員会(IASC)の加盟国は、特に現地での運用能力を持つ組織とともに、国際的な対応のための数々の計画を調整しています。この取り組みを促進するために、IASCの加盟国への説明会が、国連本部(ニューヨーク)の支援を受けて、WHO本部(ジュネーブ)で2月3日に開催されました。
GOARN運営委員会および検査と技術の支援団体との会議が、戦略、運用計画やガイドラインやアドバイスの作成を組み入れるために組織されました。
主要機関や専門家との協議が、ワクチン/診断/治療と媒介昆虫の制御メカニズムの利用と活用にために始まり、現在使用できる物品の把握に取り掛かっています。ワクチン開発の状況は急速に進んでおり、約15の製薬会社が取り組みを開始しました。米国国立衛生研究所(NIH)のDNAワクチンとバーラト・バイオテック社(インド)の不活性化ワクチンは、両方ともに開発がかなり進んでいます。ワクチンの承認は、あらゆる大規模臨床試験から少なくとも18ヶ月間先になります。診断とワクチンのための対象医薬品の輪郭(TPP)を作成する作業が進められています。TPPが医薬品の開発までこぎ着けられれば、ワクチン接種活動の完成地図を利用して優先順位を付けることができます。

ジュネーブでの加盟国への説明会に対するアメリカ大陸各国の声
ジュネーブでの加盟国への説明会で、ブラジル、コロンビア、グアテマラ、エルサルバドル、ウルグアイからの代表者は、各国と各地域における発生状況、準備体制と対策について説明しました。ブラジルは、発生状況を制御下に置くために、国を挙げての対策への努力の手順を詳細に説明しました。蚊の繁殖地を発見するために、ブラジルの20万世帯に、公衆衛生機関の職員による訪問が行われており、50万人以上が、媒介昆虫の駆除活動を実施するために動員され、感染のリスクに対する情報伝達と注意喚起、衛生サービスの提供が行われました。ブラジルのリオは、オリンピック2016年を主催していることから後手に回ることはないといえます。8月は、ジカウイルスへの感染リスクが最小となり、この地域では真冬に当たるため蚊の活動が最も少なくなります。
コロンビアは、ジカウイルスの感染の影響が2番目に大きい国ですが、ここでは小頭症患者は報告されていないことを取り上げました。
説明会では多くの国から、ウイルスの特性とその遺伝子株の違い、現在の流行の原因、性行為による感染の可能性、妊娠女性のための具体的なリスクコミュニケーションのメッセージ、ワクチンの開発、媒介昆虫の駆除に対する具体的な行動、および潜在する旅行/貿易の制限について、質問や疑問が出されました。WHOは、多くの研究者が、現在の流行を調査し、その他の合併症をともなうこのウイルスに潜在的する因果関係の解明を進めていることを述べました。

物的・人的資源の動員

・毎週、援助の調整のためのテレビ会議が、広く援助国と関係機関の代表が出席して、開催されています。
・WHOは、国際保健規則(IHR)の下で加盟国がジカウイルス感染症の流行対策に財政支援を行い、それぞれの役割を果たすべきことを求めています。
・WHOは、各国への直接支援の可能性、蚊の防虫剤の緊急在庫の提供、感染の影響を受けた国の感染しやすい住民へのリスク・コミュニケーションや直接支援について、民間部門とも相談しています。

出典

WHO. ZIKA Situation Report. 12 February 2016
Neurological Syndrome and Congenital Anomalies
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report/who-zika-situation-report-12-02-2016.pdf?ua=1