2016年02月24日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新2)

 WHOよりジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)に関する発生情報が報告されています。2016年2月19日付けの世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:今回からは、内容を簡潔に伝えるために、内容と図表を絞り込んで掲載しています。詳細は、原文でご確認下さい。

概要

2007年1月1日から2016年2月17日までに、現在はジカウイルスの流行が終息している国と間接的に地域での感染伝播の証拠が見つかっている国と地域を含めて、合計48の国と地域でジカウイルスの地域(国内)感染が報告されています。48の国と地域の中では、アルバとボネール島がジカウイルスの国内感染の最も新しい報告になります。
2015年にアメリカ大陸で初めてウイルスが発見された後、ジカウイルスの地理的な分布は着実に拡大しています。ジカウイルスへの感染伝播は28の国と地域から報告されてきました。地理的に媒介能力をもつ蚊(特に、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカ属)が生息する地域では、ジカウイルスがさらなる国で発見される可能性は高いと考えられます。
6つの国と地域(ブラジル、フランス領ポリネシア、エルサルバドル、ベネズエラ、コロンビア、スリナム)では、ジカウイルス感染症の集団発生に続いて、小頭症患者及びギラン・バレー症候群(GBS)患者の発生数の増加が報告されています。これまでのところ、小頭症はブラジルとフランス領ポリネシアのみで報告されています。プエルトリコとマルティニーク島でも、ギラン・バレー症候群の発生における全体数の増加の科学的証拠はないものの、ジカウイルスの感染が関係するギラン・バレー症候群患者が報告されています。
小頭症およびGBSなどの神経疾患がジカウイルス感染症に関係していることは、状況証拠のままですが、増え続ける臨床および疫学的データの核心はジカウイルスに原因としての役割があるという方向を示しています。
世界における感染の予防と制御の戦略が、対策戦略の基本骨格(SRF)に基づきWHOによって開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動で構成されています。支援組織との協議および患者の発生状況の変化を考慮して、対策戦略の基本骨格(SRF)は、疫学的な証拠に焦点を当てて、この緊急事態に取り組むことのさらに明確な役割と責任の区分を反映させた上で、2016年3月末に更新されます。

調査活動

ジカウイルスの発生
・2007年1月1日から2016年2月17日までに、合計で48の国と地域でジカウイルスへの感染伝播が記録されています。ここには、2015年から2016年までに感染伝播が報告された36の国と地域、間接的なウイルス伝播の証拠のある6か国、ジカウイルスの流行が終息している5か国と、蚊による感染はないものの一部で国内感染が発生した国が含まれています。48の国と地域の中では、アルバとボネール島がジカウイルスの国内感染の最も新しい報告になります。
・2014年後半に、ブラジル北東部の地域で発熱性発疹患者の集団発生がみられました。2015年4月にジカウイルスの診断が確認されました(ウイルスRNAに対するRT-PCR法検査にて)。ブラジル政府は、感染発生のあまりの大きさに、ジカウイルス感染患者を数えることを中止しました。ブラジル保健省は、流行の開始以降に発生したジカウイルスへの感染者数は497,593人から1,482,701人に上ると推定しています。最近、ウイルスはこの地域(アメリカ大陸)で急速に拡大しています。2016年2月11日までに、アメリカ大陸28の国と地域でウイルスの国内感染伝播が報告されました。中南米においては、2015年10月以降、拡大が報告される割合が速度を増しています。
・コロンビアでは、2015年10月から2016年2月6日までに、確定患者1,504人を含む31,555人が報告されました。2015年12月から2016年2月までは、報告される患者数が、毎週、増え続けています。
・カーボベルデでは、2015年10月から2016年1月31日までに、ジカウイルス感染症の疑い患者7,258人が報告されました。

小頭症の発生
・ブラジルでは、2015年11月から2016年2月13日までに、死亡件数108件を含む小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形5,280例が報告されました。この数値は、2001年から2014年の間に年平均の小頭症患者数が163例と記録されていることとは対照的です。
・ブラジル政府は、小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形1,345例の調査を完了しました。(このうち、)837例では(手がかりが)処分され、508例では確認されました。現在も、3,935例が調査中です。2月6日時点で確認された462例のうち、421例では先天性感染症に一致する画像所見があり、41例ではジカウイルスへの感染が検査で確認されました。
・小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形5,280例のうち出生児もしくは妊娠中(流産または死産)に発生した死亡例108件のうち70件で調査が行われています。11件では(手がかりが)処分され、27件では小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形が確認されました。ジカウイルスへの感染が関係する小頭症の出生児が、2016年1月8日にハワイ州の保健衛生局から報告されました。また、2016年2月10日にも同様の症例がスロベニアの公衆衛生専門家から報告されました。両者ともに、母親は妊娠前期にブラジルで過ごし、その間にジカウイルス感染症に一致する症状を経験していました。両者とも、そのときにはジカウイルス感染症の検査は受けていませんでした。ハワイの小頭症出生児では、ジカウイルスへの感染が検査で確認され、スロベニアの胎児(妊娠中絶した全ての症例で必須)の剖検標本からも確認されました。ハワイ州でもスロベニアでも、ジカウイルスの国内発生は報告されていません。
・フランス領ポリネシアでは、2014年3月から2015年5月までに生まれた子どもで、中枢神経奇形をもって生まれた子どもの増加が報告されました。全国の年間平均例数0〜2例に比べ、この期間に、小頭症児9例を含む18例が報告されました。
・ジカウイルスは、ブラジルで報告される小頭症の増加の原因とは証明されていません。しかし、ジカウイルス感染症とGBSとの時間的・地理的関係を踏まえると、有力な代替仮説が存在しない限り、ジカウイルスが原因としての役割をもっている可能性が高いため、さらなる調査を必要とします。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生
・ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、スリナム、ベネズエラでは、ジカウイルスが流行する中で、ギラン・バレー症候群(GBS)患者数の増加が報告されました。この症候群は、フランス領ポリネシアで2013-2014年にジカウイルスの流行が発生したときにもみられました。
・2015年7月には、ブラジル政府がバイーア州で42人のGBS患者を報告しましたが、このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。また、2015年11月には、GBSなどの神経症候群を示す患者7人でジカウイルスへの感染が確認されました。2015年には、全国で1,708人のGBS患者が報告されました。発生数の増加は全ての州ではないものの、前年(GBS患者1,439人)と比べて平均19%の増加を示していました。さらなる調査が行われています。
・2016年2月には、コロンビアでGBS患者の増加が報告されました。これは、2015年には既に始まっていました。コロンビアでは、過去7年間(2009-2015年)に毎年平均で223人のGBS患者が登録されていました。(ところが、)2015年12月中旬から2016年1月後半までの5週間に、86人のGBS患者が報告されました。ジカウイルスが小頭症の原因でもあるならば、今後、2016年に起きることとして、コロンビアでは小頭症患者の発生が予想されます。
・エルサルバドルでは、2015年12月1日から2016年1月9日までに死亡者5人を含む118人の GBS患者が記録されました。一方、2015年より以前の毎年の平均患者数は169人に過ぎませんでした。情報を入手できた患者22人のうち、12人(54%)が症候群発症の15日以内にジカウイルス感染症と一致する発熱性発疹を発現していました。エルサルバドルでは、これまで、患者でジカウイルスへの感染または他の原因に対して、(原因が)検査では確認されていません。
・スリナムでは、2016年1月29日に2015年のGBS患者発生数の増加が報告されました。スリナムでは、GBS患者発生の登録は2015年以前に毎年平均4人でしたが、2015年には10人の患者が報告され、2016年には最初の3週で3人が報告されました。2015年に報告された患者10人うち2人ではジカウイルスへの感染が確認されました。
・ベネズエラでは、2016年2月2日に2016年第2週以降のGBS患者の増加が報告されました。2016年1月1日から1月31日までに、時間的・空間的にジカウイルスと関係するGBS患者252人が報告されました。患者は国内のほとんどの州から報告されており、主にマラカイボ地方Zulia(スリア)州で66人が確認されています。スリア州のGBS患者での予備的分析では、神経学的症状を発症するまでの数日の間に、GBS患者の76%にジカウイルス感染症に一致する臨床経過がみられました。ジカウイルスへの感染が、RT-PCR 法検査によって3人のGBS患者で確認されました。
・フランス領ポリネシアでは、42人が2013年から2014年にかけてのジカウイルスの流行時に確認され、そのうち88%がジカウイルス感染症に一致する症状を示していました。レトロスペクティブに実施された血清中和法検査では、42人全員がデング熱およびジカウイルスに感染していました。
・小頭症と同様に、ブラジル、コロンビア、エルサルバドル、スリナム、ベネズエラでみられたGBS患者発生の増加の原因は、解明されていません。しかし、ジカウイルスが原因としての役割をもっている可能性が高まっています。アメリカ大陸ではデング熱、チクングニア熱およびジカウイルス感染症が全て同時に流行発生し、これらは同じ蚊によって媒介されるという交絡因子をもっています。GBSと関連する、または潜在的に関連することが知られている(いくつもの感染症を含む)その他の因子に潜在する役割を特定するために、さらなる研究が必要とされます。

感染への取り組み

 この公衆衛生上の緊急事態に対応して、主要な活動が、WHO、国際機関、地域機関、加盟国と共同で企画されています。
註:WHOは、対策戦略の基本骨格と共同活動への対応計画(対策活動)として具体的項目を示した表を提示しています。

・WHOは、ジカウイルス感染症の拡大及びその後の小頭症や神経疾患患者の急増に対して関係機関どうしが国際的に取り組むために、5,600万ドルを求めています。この要求額は、次の6か月間に、この緊急事態に対処する23の加盟組織で必要とされる必要要件の合算を示しています。そのうち2,500万ドルはWHO / PAHOが緊急対策を行う資金として、3,100万ドルは支援組織の活動のための資金として、必要とされます。およそ45の支援組織が対策戦略の基本骨格を議論するために会議に集まりました。WPRO、SEARO、EURO、PAHOが参加しました。支援組織は説明された必要性と要件項目について検討しています。
・世界銀行グループは、2016年2月18日にジカウイルス感染症の流行の影響を受けているラテンアメリカおよびカリブ海諸国を支援するために、直ちに利用できる1.5億米ドルを準備したことを発表しました。この資金は、ジカウイルス感染症の流行が拡大する中で、アメリカ大陸で報告される最近の小頭症患者及びその他の神経障害患者の集団発生に対して、WHOが2016年2月1日に国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)を宣言してことに続いたものです。世界銀行グループは、感染の影響を受けた国へ技術専門家派遣するなど、地域全体にわたり各国政府とともに関わっています。さらなる資金調達が必要な場合には、世界銀行グループはその支援を増強する姿勢を示しています。これらの最初に見積もられた資金は、健康への最も大きなリスクが妊娠女性にあることを前提としたものです。
・WHOは、ジカウイルス感染症の定義、ジカウイルスの性行為感染の予防、媒介昆虫の駆除および血液の安全性に関する新しい情報やアドバイスの資料を作成しています。

研究活動

・公衆衛生に対する研究は、妊娠女性と彼女らの赤ちゃんにおける小頭症との因果関係を明らかにする上で、さらにジカウイルス感染症の病態生理を解明する上で重要です。感染の影響を受けた国が重大な疑問点を認識し、それに答えるために、世界中の様々な支援組織の関係機関との間で技術支援の調整が行われています。
・PAHOによって、公衆衛生上の研究課題を決める会議が、2016年3月1日から2日にかけてワシントンD.C.で組織されています。科学的根拠とさらなる研究計画を査定するために、2016年3月7日に世界各国の専門家諮問グループが集まります。

註:WHOは、対策戦略の基本骨格と共同活動への対応計画(研究目標と活動)として具体的項目を示した表を提示しています。

出典

WHO. Situation Report. 19 February 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/204454/1/zikasitrep_19Feb2016_eng.pdf?ua=1