2016年03月01日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新3)

 2016年2月26日付けでWHOよりジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する情報が報告されています。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:今回からは、内容を簡潔に伝えるために、内容と図表を絞って掲載しています。詳細は、原文でご確認下さい。

概要

2007年1月1日から2016年2月25日までに、現在はジカウイルスの流行が終息している国と間接的に地域での感染伝播の証拠が見つかっている国と地域を含めて、合計52の国と地域でジカウイルスの地域(国内)感染が報告されています。52の国と地域の中では、マーシャル諸島、セントビンセント及びグレナディーン諸島、トリニダード・トバゴがジカウイルスの国内感染の最も新しい報告になります。
2015年にアメリカ大陸で初めてウイルスが発見された後、ジカウイルスの地理的な分布は着実に拡大しています。ジカウイルスへの感染伝播は31の国と地域から報告されました。地理的に媒介能力をもつ蚊(特に、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカ属)が生息する地域では、さらなる国でジカウイルスが発見される可能性は高いと考えられます。
これまでに、ブラジルに滞在していた2例がさらに2か国で確認された以外は、小頭症及びその他の先天奇形の増加はブラジルとフランス領ポリネシアのみで報告されています。
2015年から2016年にかけて、8つの国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者におけるジカウイルスへの感染の検査確認が報告されました。
ジカウイルス感染症が小頭症およびGBSなどの神経疾患と関係していることは、状況証拠のままですが、増え続ける臨床および疫学的データの核心はジカウイルスに原因としての役割があるという方向を示しています。
世界における感染の予防と制御の戦略が、対策戦略の基本骨格(SRF)に基づきWHOによって開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動からなり、この発生状況の報告もこの項目に基づいて構成されています。支援組織との協議および患者の発生状況の変化を考慮して、対策戦略の基本骨格(SRF)は、疫学的な証拠に焦点を当てて、この緊急事態に取り組むことのさらに明確な役割と責任の区分を反映させた上で、2016年3月末に更新されます。

調査活動

ジカウイルスの発生
・2007年1月1日から2016年2月25日までに、合計52の国と地域でジカウイルスの感染伝播が記録されています。ここには、2015年から2016年までに感染伝播が報告された40の国と地域、間接的なウイルス伝播の証拠のある6か国、ジカウイルスの流行が終息している5か国と、蚊による感染はないものの一部で国内感染が発生した国が含まれています。
・2014年後半に、ブラジル北東部の地域で発熱性発疹患者の集団発生がみられました。2015年5月にジカウイルスの診断が確認されました(ウイルスRNAに対するRT-PCR法検査にて)。ブラジル保健省は、2015年に報告や確認された人数よりも多い40万から130万人がジカウイルスに感染したと推定しています。
・最近、このウイルスがこの地域(アメリカ大陸)で急速に拡大しています。2016年2月25日までに、アメリカ大陸31の国と地域でウイルスの国内感染伝播が報告されました。中南米においては、2015年10月以降、拡大が報告される割合が速度を増しています。
・コロンビアでは、2015年10月から2016年2月13日までに、確定患者1,612人を含む37,011人が報告されました。
・2007年以降、西太平洋地域14の国と地域から、国内感染したジカウイルス感染症患者が報告されてきました。太平洋の4つの島国と地域(アメリカ領サモア、マーシャル諸島、サモア、トンガ)では、ジカウイルス感染症患者が報告されました。ナウル政府は、感染に備えるために、ジカウイルスには国家非常事態の懸念があると宣言しました。これまでのところ、ジカウイルス感染症患者は報告されていません。
・カーボベルデ(アフリカ地域)では、2015年10月から2016年2月7日までに、ジカウイルス感染症の疑い患者7,325人が報告されました。この流行は、2015年11月の最終週にピークとなり、以後は着実に減少してきています。2016年2月7日までの週には、患者67人が報告されました。対象者で確認された予備調査の情報では、この流行はアフリカ株のジカウイルスによって発生したことが示されました。神経学的な異常は報告されていません。

小頭症の発生
・ブラジルでは、2015年10月から2016年2月20日までに小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形5,640例が報告されました。このうち死亡報告が120例でした。この数値は、2001年から2014年の間に年平均の小頭症患者数が全国で163例と記録されていることとは対照的です。
・ブラジルで小頭症発生が報告される数の増加は、東北部地域に集中しています。
・ブラジルは、報告された小頭症が疑われる5,640症例のうち1,533例の調査を完了しました。これらの例のうち、950例は(小頭症および/または先天性感染が関与する中枢神経系奇形の診断基準を満たしていないため)棄却され、583例は確定されました。現在も、4,107例が調査中です。
・小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形が疑われた5,640例のうち、120例は出生時もしくは妊娠中(流産または死産)に死亡しました。このうち30例で小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形と潜在するジカウイルスの感染が確認されています。また、80例が調査中で、10例が(小頭症および/または先天性感染が関与する中枢神経系奇形の診断基準を満たしていないため)棄却されました。
・フランス領ポリネシアでは、2014年3月から2015年5月までに生まれた子どもで、中枢神経奇形をもって生まれた子どもの増加が報告されました。全国の年間平均例数0〜2例に比べ、この期間に、小頭症児9例を含む18例が報告されました。
・ジカウイルスは、ブラジルで報告される小頭症の増加の原因とは証明されていません。しかし、ジカウイルス感染症との時間的・地理的関係を踏まえると、有力な代替仮説が存在しない限り、調査の段階ではジカウイルスが原因としての役割をもっている可能性が高くなっています。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生
・ジカウイルスが流行する8つの国と地域において、ギラン・バレー症候群(GBS)患者数の増加もしくはGBS患者でのジカウイルス感染症の確認が報告されました。
・2015年7月には、ブラジル政府がバイーア州でGBS患者42人の発生を報告しており、このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。2015年には、全国でGBS患者1,708人が登録されました。発生数の増加は全ての州ではないものの、前年(2014年にはGBS患者1,439人)と比べて平均19%の増加を示していました。
・コロンビアでは、2月14日までの9週間にジカウイルスへの感染が疑われる経過をもつGBS患者201人が報告され、GBSの発生率は増加していました。ほとんどの患者は、多くのジカウイルス感染症患者が登録されているノルテ・デ・サンタンデール県とバランキージャ市の地域からでした。これまでは、患者の中でのジカウイルスへの感染または他の原因は検査では確認されていません。
・エルサルバドルでは、2015年12月1日から2016年1月9日までに死亡者5人を含む118人の GBS患者が記録されました。一方、2015年より以前の毎年の平均患者数は169人に過ぎませんでした。これまでは、患者の中でのジカウイルスへの感染または他の原因は検査では確認されていません。
・スリナムでは、2016年1月29日に2015年のGBS患者発生数の増加が報告されました。スリナムでは、2015年以前におけるGBS患者発生の登録は毎年平均4人でしたが、2015年には患者10人が報告され、2016年には最初の3週でGBS患者3人が報告されました。2015年に報告された患者10人うち2人でRT-PCR法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。
・ベネズエラでも、GBS患者発生数の増加が報告されました。2016年1月1日から1月31日までに、GBS患者252人でジカウイルスと関係が疑われました。最大数の患者(66人)がスリア州の6つの行政地区から報告されており、主にマラカイボ地区に集中していました。ジカウイルスへの感染が、RT-PCR 法検査によって3人のGBS患者で確認されました。
・ジカウイルスへの感染が検査確認されたGBS患者が、マルティニーク(2人)とプエルトリコ(1人)から報告されました。
・フランス領ポリネシアでは、GBS患者42人が2013年から2014年にかけてのジカウイルスの流行時に確認され、そのうち88%がジカウイルス感染症に一致する症状を示していました。レトロスペクティブに実施された血清中和法検査では、患者42人全員がデングおよびジカウイルスに陽性でした。
・小頭症と同様に、ブラジル、コロンビアエル、サルバドル、スリナム、ベネズエラでみられたGBS患者発生の増加の原因は、解明されていません。しかし、ジカウイルスが原因としての役割をもっている可能性が高まっています。アメリカ大陸ではデング熱、チクングニア熱およびジカウイルス感染症が全て同時に流行発生し、これらは同じ蚊によって媒介されるという交絡因子をもっています。GBSと関連する、または潜在的に関連することが知られている(いくつもの感染症を含む)その他の因子に潜在する役割を特定するために、さらなる研究が必要とされます。

感染への取り組み

 この公衆衛生上の緊急事態に対応して、WHO、国際機関、地域機関、加盟国と共同で、中核となる活動を企画しています。
註:WHOは、対策戦略の基本骨格と共同活動への対応計画(対策活動)として具体的項目を示した表を提示しています。

・WHOと支援組織は、6つの主要分野に対する活動を組み合わせた統合対策計画を策定し継続するために、共同で(これらに)取り組んでいます。6つの主要分野は、活動の協調と調整、調査活動、医療、媒介昆虫の駆除、地域住民へのリスク情報の伝達と地域住民の参加、および地球規模および国や地域レベルでの研究です。
・WHOは、ジカウイルス感染症の拡大及びその後の小頭症や神経疾患患者の急増に対して関係機関どうしが国際的に取り組むために、5,600万ドルを求めています。この要求額は、次の6か月間に、この緊急事態に対処する23の加盟組織で必要とされる必要要件の合算を示しています。そのうち2,500万ドルはWHO / PAHOが緊急対策を行う資金として、3,100万ドルは支援組織の活動のための資金として、必要とされます。およそ45の支援組織が対策戦略の基本骨格を議論するために会議に集まりました。支援組織は説明された必要性と要件項目について検討しています。
・世界銀行グループは、2016年2月18日にジカウイルス感染症の流行の影響を受けているラテンアメリカおよびカリブ海諸国を支援するために、直ちに利用できる1.5億米ドルを準備したことを発表しました。この資金は、ジカウイルス感染症の流行が拡大する中で、アメリカ大陸で報告される最近の小頭症患者及びその他の神経障害患者の集団発生に対して、WHOが2016年2月1日に国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)を宣言してことに、続いたものです。世界銀行グループは、感染の影響を受けた国へ技術専門家派遣するなど、各国政府とともに地域全体にわたり関わっています。さらなる資金調達が必要な場合には、世界銀行グループはその支援を増強する姿勢を示しています。これらの最初に見積もられた資金は、健康への最も大きなリスクが妊娠女性にあることを前提としています。
・WHOは、ジカウイルス感染症の定義、ジカウイルスの性行為感染の予防、媒介昆虫の駆除、血液の安全性、ギラン・バレー症候群(GBS)の発見と患者管理、ジカウイルス流行地での授乳、小頭症の定義と新生児の評価など、に関する新しい情報やアドバイスの資料を作成しています。
・これらの資料は、地域住民へのリスク情報の伝達や地域住民の活動参加を支援するために、また、医療従事者を含む主要関係者の使用を想定して、さまざまな形式に変換されています。

研究活動

・妊娠女性とその出生児における小頭症との因果関係を確立し、さらにジカウイルス感染症の病態生理を解明するために、公衆衛生における研究は重要です。感染が発生した国が重大な疑問点を認識し、その答えを得るために、世界中の様々な支援機関の間では技術支援の調整が行われています。
・PAHO(汎米保健機構)によって、世界規模の感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)も参加する研究集会など、公衆衛生上の研究課題を決める会議が、2016年3月1日から2日にかけてワシントンD.C.で組織されています。
・現在の研究状況を評価し、新たな研究を計画するために、ジカウイルス感染に関する研究の世界規模での協議が、2016年3月7日から9日に開催されます。

註:WHOは、対策戦略の基本骨格と共同活動への対応計画(研究目標と活動)として具体的項目を示した表を提示しています。

出典

WHO. Situation Report. 26 February 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report-26-02-2016.pdf?ua=1