2016年03月15日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新5)

 2016年3月10日付けでWHOよりジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する情報が報告されています。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:内容を簡潔に伝えるために、内容を絞って掲載しています。詳細は、原文でご確認下さい。

概要

2016年3月8日に、国際保健規則(2005)に則り、第二回緊急委員会会議が事務局長によって召集されました。委員会は、ジカウイルス感染症が発生するいくつかの地域で小頭症やその他の神経障害が集団発生していることが国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態の構成条件を引き続き満たしており、ジカウイルスと因果関係があることを示す証拠が増えてきていることを助言しました。
2007年1月1日から2016年3月9日までに、合計52の国と地域(原文どおり記載)でジカウイルスの地域内(国内)感染が報告されています(2015年1月以降は41か国)。最新のジカウイルスの国内感染はフィリピンで報告されています。これらの国と地域のうち、現在は5か国で流行が終息したことが報告されています。また、3か国では、媒介することが知られている如何なる蚊も存在しない中で国内感染が報告されており、性交渉による感染の可能性が高いとみられています。
2014年にアメリカ大陸で初めてウイルスが発見されて以降、ジカウイルスの地理的な分布は着実に拡大しています。ジカウイルスへの感染伝播はアメリカ大陸31の国と地域から報告されました。
これまでに、ブラジルに滞在していたことに関係する2例がアメリカ合衆国とスロベニアで確認された以外、小頭症及びその他の先天奇形の増加はブラジルとフランス領ポリネシアのみで報告されています。コロンビアでは、小頭症および/または先天奇形の報告例が調査されています。
9つの国と地域で、ギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者の中でのジカウイルス感染の検査確認が報告されました。
最近、発表されたブラジルでのコホート研究では、妊娠中のジカウイルス感染に伴い小頭症やその他の先天異常のリスクが増加することが示され、ジカウイルスと小頭症やその他の先天異常との間に因果関係が存在する可能性をさらに支持する情報が提供されています。
世界における感染の予防と制御の戦略が、対策戦略の基本骨格に基づきWHOによって開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動からなり、この発生状況の報告もこれらの項目に基づいて構成されています。

調査活動

ジカウイルスの発生
・2007年1月1日から2016年3月9日までに、合計55の国と地域でジカウイルスの感染伝播が記録されています。(既に前回報告されているアメリカ合衆国、フランス、イタリアに加えて)アルゼンチンとニュージーランドでも性交渉によるジカウイルルス感染の可能性の報告があり、現在、さらに調査が進められています。
・新たにニューカレドニアで報告されたジカウイルス感染症の確定患者について、この患者が感染輸入か国内感染かが慎重に調査されています。
・2014年末以降、ブラジルでは国内北東地域で発熱性発疹の患者が集団発生しました。2015年5月に(ウイルスRNAに対するRT-PCR法検査にて)ジカウイルスの診断が確認されました。ブラジル保健省は、2015年に40万から130万人がジカウイルスに感染したと推定しています。
・最近、このウイルスがこの地域(アメリカ大陸)で急速に拡大しています。2016年3月9日までに、アメリカ大陸31の国と地域でウイルスの国内感染伝播が報告されました。中南米では、2015年10月以降、拡大が報告される割合が速度を増しています。
・コロンビアでは、2015年10月1日から2016年2月20日までに、47,771人のジカウイルス疑い感染者が報告されました。確定診断された患者数は2,090人になります。
・2007年以降、西太平洋地域15の国と地域から、国内感染したジカウイルス感染症患者が報告されてきました。太平洋の4つの島国と地域(アメリカ領サモア、マーシャル諸島、サモア、トンガ)では、2016年にジカウイルス感染症患者が報告されました。
・カーボベルデ(アフリカ地域)では、RT-PCR法検査によって確認された患者は2人だけですが、2015年10月1日から2016年2月28日までに、ジカウイルス感染症の疑い患者7,457人が報告されました。この流行は、2015年11月22日の週にピークとなり、以後は減少してきています。流行は、プライアで始まり、その後、他の行政地域に広がっていったようです。予備調査で確認された対象者の情報では、この流行はアフリカ株のジカウイルスによって発生したことが示されています。現在までに、ジカウイルスへの感染が疑われた妊娠女性165人が経過観察されています。これらの女性のうち44人(27%)が出産しましたが、どの新生児にも小頭症の徴候は見られませんでした。神経学的な異常は報告されていません。

小頭症の発生
・ブラジルでは、2015年10月22日から2016年3月5日までに、小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形6,158例が報告されました。このうち死亡報告が157例でした。この数値は、2001年から2014年の間に年平均の小頭症患者数が全国で163例と記録されていることとは対照的です。この急激な増加の詳細な説明が、最近発表された論文に掲載されています。ジカウイルスの伝播が確認された15州における小頭症の発生率(10,000生児出生あたり2.8例)は、ジカウイルスの伝播がない4州における小頭症の発生率(10,000生児出生あたり0.6例)を大幅に上回っています。
・ブラジルで報告される小頭症の発生数の増加は、東北部地域に集中しています。
・ブラジルは、報告された小頭症が疑われる6,158症例のうち1,927例の調査を完了し、745例ではジカウイルスが確認されました。
・小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形が疑われた6,158例のうち、157例は出生時もしくは妊娠中(流産または死産を含む)に死亡しました。このうち37例で小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形と潜在するジカウイルスの感染が確認されています。また、102例が検討中で、18例が(小頭症および/または先天性感染が関与する中枢神経系奇形の診断基準を満たしていないため)除外されました。
・フランス領ポリネシアでは、2014年3月から2015年5月までに生まれた子どもで、中枢神経奇形をもって生まれた子どもの増加が観察されました。全国の年間平均例数0〜2例に比べ、この期間に、小頭症児8例を含む19例が報告されました。
・コロンビアで、小頭症および/または先天奇形が報告された症例が調査されています。
・ジカウイルスは、ブラジルで報告される小頭症の増加の原因とは証明されていません。しかし、ジカウイルス感染症と時間的・地理的関係が一致すること、胎児の脳組織で繰り返しウイルスが発見されること、有力な代替仮説が存在しないことを踏まえると、調査の段階ではジカウイルスが原因としての役割を果たしている可能性が高くなっています。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生
・ジカウイルスが流行する9つの国と地域において、ギラン・バレー症候群(GBS)患者数の増加もしくはGBS患者でのジカウイルス感染症の確認が報告されました。
・フランス領ポリネシアでは、2013年10月から2014年4月にかけて、この国で初めてジカウイルスの流行を経験しました。流行中に、患者42人がGBSで入院しました。これは、過去4年間にフランス領ポリネシアで発生した患者数と比べて、20倍に増加したことを示しています。これらのデータ(症例対照研究)から最近発表された正式な解析で、ジカウイルスの感染とGBSの間に強い相関性が示されました。
・2015年には、ブラジル政府がバイーア州でGBS患者42人の発生を報告しており、このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。全国でGBS患者1,708人が登録されました。発生数の増加は全ての州ではないものの、前年(2014年にはGBS患者1,439人)と比べて平均19%の増加を示していました。
・コロンビアでは、2月14日までの9週間にジカウイルスへの感染が疑われる経過をもつGBS患者201人が報告されました。これまでのところ、検査では患者の中でのジカウイルスへの感染または他の原因は確認されていません。
・エルサルバドルでは、2015年12月1日から2016年1月8日までに死亡者5人を含む118人の GBS患者が記録されました。一方、2015年より以前の年間平均患者数は169人に過ぎませんでした。これまでのところ、検査では患者の中でのジカウイルスへの感染または他の原因は確認されていません。
・スリナムでは、2016年1月29日に2015年のGBS患者発生数の増加が報告されました。スリナムでは、2015年以前におけるGBS患者発生の登録は毎年平均で4人でしたが、2015年には患者10人が報告され、2016年には最初の3週でGBS患者3人が報告されました。2015年に報告された患者10人うち2人でRT-PCR法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。
・ベネズエラでも、GBS患者発生数の増加が報告されました。2015年12月6日から2016年2月14日までに、GBS患者578人が報告され、うち235人がジカウイルス感染症の症状を示していました。2016年、27人のうちの6人の患者からRT-PCR 法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。
・ジカウイルスへの感染が検査確認されたGBS患者が、マルティニーク(2人)とプエルトリコ(1人)、パナマ(1人)から報告されました。
・最近、グアドループでジカウイルスに感染した15歳の少女が急性脊髄炎を発症したことが報告されました。これは、ジカウイルスの感染に関係する神経疾患の範囲をより詳しく解明することの必要性を強く示す初めての報告です。
・小頭症と同様に、フランス領ポリネシアでの最近の知見は関連性を強く示唆させるものの、ブラジル、コロンビアエル、サルバドル、スリナム、ベネズエラでみられたGBS患者発生の増加の原因は、まだ解明されていません。アメリカ大陸ではデング熱、チクングニア熱およびジカウイルス感染症が全て同時に流行し、これらは同じ蚊によって媒介されるという交絡因子をもっています。GBSと関連する、または潜在的に関連することが知られている(いくつもの感染症を含む)その他の要因に潜在する役割を特定するために、さらなる研究が必要とされます。

対策活動

・この公衆の保健上の緊急事態に対して、中核となる活動が、WHO、国際、地域、および国内の支援組織と共同で計画されています。
註:WHOから対策戦略の基本骨格と共同活動への対応計画(対策活動)として具体的項目を示した表が提示されています。
・WHOと支援組織は、6つの主要分野に対する活動を組み合わせた統合対策計画を策定し継続するために、共同で(これらに)取り組んでいます。6つの主要分野は、活動の協調と調整、調査活動、医療、媒介昆虫の駆除、地域住民へのリスク情報の伝達と地域住民の参加、および地球規模および国や地域レベルでの研究です。
・WHOと加盟国は、国際機関に対して、ジカウイルス感染症の拡大及びその後の小頭症や神経疾患患者の急増に取り組むために、5,600万ドルが必要であることを訴えています。この要求額は、次の6か月間に、この緊急事態に対処する23の加盟組織で必要とされる要件の合算を示しています。そのうち2,500万ドルはWHO / PAHOが緊急対策を行う資金として、3,100万ドルは支援組織の活動のための資金として、必要とされます。およそ45の支援組織が対策戦略の基本骨格を議論するために会議に集まりました。支援組織は説明された必要性と要件項目について検討しています。
・世界銀行グループは、2016年2月18日にジカウイルス感染症の流行が発生しているラテンアメリカおよびカリブ海諸国を支援するために、直ちに利用できる1.5億米ドルを準備したことを発表しました。この資金は、ジカウイルス感染症の流行が拡大する中で、アメリカ大陸で報告される最近の小頭症患者及びその他の神経障害患者の集団発生に対して、WHOが2016年2月1日に国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)を宣言してことに、続いたものです。世界銀行グループは、感染が発生している国へ技術専門家を派遣するなど、各国政府とともに地域全体にわたり関わっています。さらなる資金調達が必要な場合には、世界銀行グループはその支援を増強する姿勢を示しています。これらの最初に見積もられた資金は、健康への最も大きなリスクが妊娠女性にあることを仮定したものです。
・WHOは、ジカウイルス感染症の定義、ジカウイルスの性行為感染の予防、媒介昆虫の駆除、血液の安全性、ギラン・バレー症候群(GBS)の発見と患者管理、ジカウイルス流行地での授乳、ジカウイルス流行地での妊娠管理、ジカウイルス流行地での妊婦や小頭症やその他の神経合併症の子どもを抱えた家族に対する精神的支援、ジカウイルス流行地での小頭症患児の定義と新生患児の評価など、シマカ属の蚊が生息する地域での監視活動と殺虫剤の管理、などについて新しい情報やアドバイスの資料を作成してきました。
・これらの資料は、地域住民へのリスク情報の伝達や地域住民の活動参加を支援するために、また、医療従事者を含む主要関係者が使用することを想定して、さまざまな形式に変換されています。
・今週、ジカウイルスの対策担当者と医療関係者が鍵となる情報、指針、便利道具を利用しやすくするために、WHOから携帯端末に対して2つのアプリケーションが発表されました。多数の言語によるものが開発されています。このネット上の場所には、今後、トレーニングや説明会の動画やその他の便利道具を格納することになっています。
・ユニセフの主導と、WHO、PAHO、IFRCの連携によって、現地レベルでの対策チームに対するリスクの情報伝達の物資が確定されてきています。
・一般化されたWHOの知識・態度・実践(KAP)の調査が、すべての加盟国によって、使用に対して完成されてきています。
・感染が発生した全ての国、感染のリスクのある国に対する情報のマッピングツールをよりよく作成するために、災害コミュニティとの連絡機関(CDAC)ネットワークとの合意で、ジカウイルスのリスクへの情報交換のために地元の記者が参加しています。

研究活動

・公衆衛生の研究は、妊娠女性のジカウイルスへの感染と小頭症新生児との因果関係を確立しジカウイルス感染症の病原性を解明するために重要です。重大な疑問点を発見し答えるために、世界中の様々な加盟機関の間で、また感染の発生国どうしで技術支援が調整されています。
・世界規模の感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)も参加した研究集会が、2016年3月2日にワシントンD.C.で開かれました。支援組織は、3〜6か月の活動期間における支援の要求、技術移転、資材、日用品、訓練、特別調査や特別計画など、各国の対処能力に対する地域検査環境を含む、ジカウイルスの感染対策への準備手続きに入ることで合意しました。
・ジカウイルスの研究に関する初めての世界協議「アメリカ大陸におけるジカウイルスの感染流行と公衆衛生への影響を特徴づける研究課題の作成に向けて」が、2016年3月1日と2日にワシントンD.Cで開かれました。研究のための優先度の高い話題には、調査活動を支援するための中心となる検査拠点、この病気の特徴、リスク要因、因果関係の研究、および公衆衛生と臨床上の意義、アメリカ大陸におけるアルボウイルスの流行と媒介昆虫およびジカウイルスの関係にみられる特徴、この3つの領域が確認されました。
・ジカウイルス感染症に関する研究についての世界協議が、2016年3月7日から9日に開催されました。国際的な専門家らは、ジカウイルスに対する医薬品の研究と開発を促進するための最優先の課題として、以下のことに合意しました。優先課題は、「フラビウイルス」(ジカウイルスに関連するウイルス。例えば、デング熱とチクングニア熱など)に対する多重検定と、さらに古典的な検定、妊娠可能年齢の女性に対する死滅ウイルス(または、さらに活性化されたウイルス)の準備に基づいた予防ワクチン、蚊の生息数を抑制する画期的な媒介昆虫の駆除道具です。
・ジカウイルス感染症の診断テストのために使用する緊急評価とリストの書き出しが開始され、公に投稿のための呼び掛けが行われています。

出典

WHO. Situation Report. 10 March 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/204609/1/zikasitrep_10Mar2016_eng.pdf?ua=1