2016年04月11日更新 ジカウイルス感染症の発生状況 (更新9)

2016年4月7日付けでWHOより発表されたジカウイルス感染症(いわゆるジカ熱)の発生状況に関する報告です。ジカウイルス感染症の発生状況は以下のとおりです。

註:この報告は、調査活動、対策活動、研究活動の3項目で構成されていますが、内容を簡潔に伝えるために、調査活動に内容を絞って掲載しています。詳細は、原文でご確認下さい。

概要

  • 2007年1月1日から2016年4月6日までに、ジカウイルスの感染伝播が合計62の国と地域で記録されました。これらの国と地域のうち、現在は5か国(クック諸島、フランス領ポリネシア、チリのイースター島、ミクロネシア連邦のヤップ島、ニューカレドニア)で流行が終息したことが報告されています。6か国(アルゼンチン、チリ、フランス、イタリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国)では、性交渉による感染が報告されました。最近ではベトナムが、新しく蚊による媒介でのジカウイルスの感染伝播が報告された国となりました。
  • 2015年にアメリカ大陸で初めてウイルスが発見されて以降、ジカウイルスの地理的な分布は着実に拡大しています。蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播はアメリカ大陸33の国と地域から報告されました。
  • 2007年以降、西太平洋地域では、蚊によって媒介されるジカウイルス感染者が17の国と地域で報告されています。
  • ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は疑われる小頭症やその他の胎児奇形が、ブラジル(1,046例)、カーボヴェルデ(2例)、コロンビア(7例)、フランス領ポリネシア(8例)、マルティニーク(3例)、パナマ(1例)で報告されました。また、ブラジルに滞在していたことに関係する2症例がアメリカ合衆国とスロベニアで確認されました。
  • ジカウイルスの感染が発生する状況において、13の国と地域ではギラン・バレー症候群(GBS)の発生率の増加、および/またはGBS患者でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • 増え続ける予備調査の結果に基づけば、ジカウイルスが小頭症やギラン・バレー症候群の原因であるということで、学術的に意見が一致しています。
  • 世界における感染の予防と制御の戦略が、対策戦略の基本骨格に基づきWHOによって開始されました。この骨格は、調査活動、対策活動、研究活動からなり、この発生状況の報告もこれらの項目に基づいて構成されています。(対策活動、研究活動については原文をご参照下さい)

調査活動

ジカウイルスの発生

  • 2007年1月1日から2016年4月6日までに、ジカウイルスの感染伝播が合計62の国と地域で記録されています。現在は5か国(クック諸島、フランス領ポリネシア、チリのイースター島、ミクロネシア連邦のヤップ島、ニューカレドニア)で流行が終息したことが報告されています。6か国(アルゼンチン、チリ、フランス、イタリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国)では、性交渉による感染が報告されました。最近ではベトナムが、新しく蚊による媒介でのジカウイルスの感染伝播が報告された国となりました。
  • ジカウイルスはアメリカ大陸で急速に拡大しています。2016年4月6日までに、アメリカ大陸33の国と地域でウイルスが蚊によって媒介される感染伝播と3人の性交渉による感染伝播が報告されました。中南米では、2015年10月以降、拡大が報告される割合が速度を増しています。
  • コロンビアでは、2015年10月1日から2016年3月26日までに、58,790人のジカウイルス疑い感染者が報告されました。流行は、2016年2月7日の週にピークに達したようで、現在は減少傾向です。確定診断された患者数は2,603人になりました。
  • 2007年以降、ニュージーランドの性交渉による感染1例を含めて、西太平洋地域18の国と地域から、国内感染したジカウイルス感染症患者が報告されてきました。太平洋の9つの島国と地域(アメリカ領サモア、フィジー、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、パプア・ニューギニア、フィリピン、サモア、トンガ、ベトナム)では、2016年にジカウイルスの感染者が報告されました。
  • カーボヴェルデ(アフリカ地域)では、2016年4月5日までに801人の疑い患者の検査が行われ、先行分析で206人のジカウイルス感染症患者が確認されました。確定患者は、最も発生の多かったサンティアゴ島、フォゴ島、マイオ島とブラバ島、ボス・ヴィスタ島で確認されました。疑い患者と確定患者の時間的な経過では、2015年8月30日の週に最初の患者が確認され、2015年11月1日の週にピークとなり、その後の発生数は減少してきています。2015年10月から2016年3月までに、妊娠女性87人がジカウイルスの検査を行い、19人がジカウイルスの遺伝子もしくはジカウイルスに対するIgM抗体に陽性を示しました。

小頭症の発生

  • ブラジルでは、2015年10月22日から2016年4月2日までに、小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形6,906例が報告されました。この数値は、2001年から2014年の間に年平均の小頭症患者数が全国で163例と記録されていることとは対照的です。この急激な増加の詳細な説明が、最近発表された論文に掲載されています。
  • ブラジルで小頭症が疑われると報告された6,906症例のうち2,860例の調査を完了し、1,046例で先天性の感染症が原因と疑われました。
  • 小頭症および/または中枢神経系奇形はブラジル27州のうち21州で確認されています。しかし、報告数の増加は北東地域に集中しています。
  • 小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形が疑われた6,906例のうち、227例が出生時もしくは妊娠中(流産または死産を含む)に死亡しました。このうち51例に先天性の感染症が原因とみられる小頭症および/または中枢神経(CNS)奇形があり、148例が検討中で、28例が(小頭症および/または先天性感染が関与する中枢神経系奇形の診断基準を満たしていないため)除外されました。
  • フランス領ポリネシアでは、2014年3月から2015年5月までに生まれた子どもの中で、中枢神経奇形をもって生まれた子どもの増加が観察されました。全国の年間平均例数0~2例に比べ、この期間には小頭症児8例を含む19例が報告されました。最近発表された研究では、妊娠初期に感染した妊娠女性10,000人あたり95人に小頭症へのリスクがあると推定されました。
  • カーボヴェルデにおけるジカウイルス感染症流行の発生状況において、小頭症児2例が報告されました。1例目では、母親と新生児から採取された検体で血清中和法検査によりジカウイルスに対するIgG抗体が示されました。2例目では、女性の血清からの予備検査では、ジカウイルスに対するIgM抗体に陽性の結果が得られました。
  • コロンビアは、3月30日に、2016年1月4日から3月20日の間に小頭症の新生児50人を報告しました。この数値は、過去の年平均の予想数(年間140人)に比べて増加を示しています。登録された50人のうち、18人は関連が疑われたジカウイルスの感染による小頭症であることから除外されました。これまでに、患者32人のうち7人でRT-PCR法検査によりジカウイルスに陽性と判明しました。調査は続けられており、さらなる情報が期待されています。

ギラン・バレー症候群(GBS患者)の発生

  • ジカウイルスの感染が発生状況にある13の国と地域では、GBS発生率の増加および/またはGBS患者の間でのジカウイルス感染の検査確認が報告されています。
  • フランス領ポリネシアでは、2013年10月から2014年4月にかけて、この国は初めてジカウイルスの流行を経験しました。流行中に、患者42人がGBSで入院しました。これは、過去4年間にフランス領ポリネシアで発生した患者数と比べて、20倍に増加したことを示しています。これらのデータ(症例対照研究)から最近発表された正式な解析で、ジカウイルスの感染とGBSの間に強い相関性が示されました。42人全患者でのジカウイルスへの感染も確認されました。(血清学的調査から判断した)住民におけるジカウイルス感染症の発病率66%に基づいて、GBSのリスクはジカウイルスの感染者1,000人あたり0.24であると推定されました。
  • 2015年には、ブラジル政府がバイーア州でGBS患者42人の発生が報告され、このうち、26人(62%)にジカウイルス感染症と一致する症状の既往がありました。全国でGBS患者1,708人が登録されました。これは発生数の増加が全ての州ではないものの、前年(2014年にはGBS患者1,439人)と比べて平均19%の増加を示していました。
  • コロンビアでは、2015年12月1日から2016年3月26日までにジカウイルスへの感染が疑われる経過をもつ神経症候群患者401人が報告されました。このうち、270人がGBSでした。現在までに、これらのうちの18人が、RT-PCR法検査によりジカウイルスに陽性であったことが判明しました。ポリオの調査活動における報告の中で、2015年9月14日から2016年3月19日までに、ジカウイルス感染症に罹った15歳未満の子ども35人で急性弛緩性麻痺が報告されました。
  • エルサルバドルでは、2015年12月5日から2016年3月22日までに死亡者5人を含む135人の GBS患者が記録されました。一方、2015年より以前の年間平均患者数は169人に過ぎませんでした。患者1人でジカウイルスの感染が検査確認されました。
  • スリナムでは、2016年1月29日に2015年のGBS患者発生数が増加していたことが報告されました。スリナムでは、2015年以前におけるGBS患者発生の登録は毎年平均で4人でしたが、2015年には患者10人が報告され、2016年には最初の数週でGBS患者4人が報告されました。2015年に報告された患者のうち2人でRT-PCR法検査によってジカウイルスへの感染が確認されました。
  • ベネズエラでも、GBS患者発生数の増加が報告されました。2015年12月12日から2016年3月9日までに、GBS患者578人が報告され、うち235人がジカウイルス感染症の症状を示していました。2016年に、患者6人からRT-PCR 法検査によってジカウイルスが確認されました。
  • ドミニカ共和国では、2016年3月6日から20日までに、ジカウイルス感染症様の既往をもつGBS患者11人が報告されました。患者のうち6人は15歳未満の子どもで、残りのうち5人は50歳以上でした。ジカウイルス感染症が、 GBS患者1例(国家行政区に住む1歳児)から確認されました。患者は順調に回復し、病院を退院しました。
  • ジカウイルスへの感染が検査確認されたGBS患者が、フランス領ギアナ(2人)、ハイチ(1人)、ホンジュラス(1人)、マルティニーク(6人)、パナマ(2人)とプエルトリコ(1人)からも報告されました。
  • 2016年3月に、ジカウイルス感染症に関係するその他の神経障害が2例報告されました。1例は、グアドループでジカウイルスに感染した15歳の少女が急性脊髄炎を示しました。もう1例は81歳男性で、脊髄の炎症と、髄膜脳炎、脳と髄膜の療法に炎症が波及する病態を示していました、これらの報告は、ジカウイルスの感染に関係する神経疾患の範囲をより詳しく解明することの必要性を強く示す報告です。

出典

WHO. Situation Report, Emergencies. 7 April 2016
Zika virus, Microcephaly and Guillain-Barré syndrome
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/204961/1/zikasitrep_7Apr2016_eng.pdf?ua=1[PDF形式:1,009KB]