2016年06月20日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生(更新17)

 2016年6月19日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)国家担当者は、5月15日から6月15日にかけて新たに死亡者1人を含む中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染者6人をWHOに報告しました。

患者の詳細情報
1.49歳女性。ブライダ市の住民で、6月9日に発症し、6月10日に入院しました。6月12日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。患者には基礎疾患がありました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が行われています。現在、彼女は重篤な容態でICUに収容されています。

2.68歳男性。メディナ市の住民で、6月8日に発症し、6月13日に入院しました。6月15日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼には基礎疾患がありました。また、彼はラクダの生乳を頻繁に飲んでいました。その他には発症までの14日間におけるリスクファクターとの接触はありません。現在、彼は安定した状態で病棟の陰圧室に隔離されています。農業省にも報告され、ラクダの調査も行われています。

3.54歳男性。Alkharj(アル カルジ)市の住民で、6月7日に発症し、6月11日に入院しました。6月13日に、MERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼には基礎疾患がありました。また、彼は頻繁にラクダと接触し、その生乳を飲んでいました。現在、彼は安定した状態で病棟の陰圧室に隔離されています。農業省にも報告され、ラクダの調査が続けられています。

4.59歳男性。Tabuk(タブーク)市の住民で、6月1日に発症し、6月6日に入院しました。6月8日に、MERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼には基礎疾患がありました。彼には基礎疾患がありました。また、彼はラクダと頻繁に接触し、その生乳を頻繁に飲んでいました。その他には発症までの14日間におけるリスクファクターとの接触はありません。患者は6月12日に亡くなりました。農業省にも報告され、ラクダの調査が続けられています。

5.85歳女性。リヤド市の住民で、5月27日に発症し、6月1日に入院しました。咽頭ぬぐい液が採取され、6月2日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼女には基礎疾患がありました。現在、発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触について調査が行われています。現在、彼女は安定した状態で病棟の陰圧室に隔離されています。

6.72歳男性。Hail(ハイル)市の住民で、5月8日に発症し、5月12日にリヤドの病院に入院しました。5月14日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼には基礎疾患がありました。また、彼はラクダの生乳を頻繁に飲んでいました。その他には発症までの14日間におけるリスクファクターとの接触はありません。現在、彼は安定した状態で病棟の陰圧室に隔離されています。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われました。

 WHOは、2012年9月以降、世界中で少なくとも629人の関連する死亡報告を含む、検査で確定された1,739人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

WHOによるリスクアセスメント
 
MERS-CoVは、致死率が高い重症感染症を引き起こし、人から人への感染力を示しています。これまでのところ、確認された人から人への感染伝播は、主に医療施設の環境下で発生しています。

 この新たな患者の報告による全体のリスク評価の変更はありません。WHOは、MERS-CoVへの新たな感染者が中東から報告されること、動物や動物製品(例えば、ヒトコブラクダとの接触後)もしくは感染者(例えば、医療施設内)と接触した後に感染した者が、今後も他の国に感染輸出されるであろうことは想定しています。WHOは、疫学的な発生状況を監視し、入手可能な最新の情報に基づいてリスク評価を行っています。

WHOからのアドバイス
 
WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS-CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています。地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。感染の影響を受けた国からの、また、影響を受けた国へ行く、渡航者において、MERS-CoVに対する注意を向上させておくことは、実践的な公衆衛生上のよい習慣の実践となります。

出典

WHO. Emergencies preparedness, response. Disease outbreak news. 19 June 2016
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Saudi Arabia
http://www.who.int/csr/don/19-june-2016-mers-saudi-arabia/en/