2016年11月01日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生(更新27)

 2016年10月31日に公表された世界保健機構(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)国家担当者は、2016年9月16日から10月10日までの間に、新たに中東呼吸器症候群(MERS)の感染者7人をWHOに報告しました。そのうち、1人が死亡しました。

患者の詳細情報
1. 28歳男性。サウジアラビア国籍を持たないHail 州Hail(ハーイル)市の住民で10月5日に発症し、10月8日に入院しました。彼に基礎疾患はありません。10月9日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。

2. 51歳女性。リヤド州Al kharj(アル カルジ)市の住民で、9月22日に発症し、9月27日に入院しました。彼女には基礎疾患がありました。9月29日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼女には、発症までの14日間にラクダとの接触歴がありました。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。

3. 52歳男性。リヤド州Wadi Ad-Dwaser(ワディー・アルドウォッシャー)市の住民で、9月12日に発症し、9月19日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。9月22日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。現在、彼は重篤な容態でICUに収容されていますが、人工呼吸器は装着していません。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。

4. 69歳男性。サウジアラビア国籍を持たないリヤド州リヤド市の住民で、9月15日に発症し、9月22日に入院しました。同日、MERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼に基礎疾患はありません。発症までの14日間における既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。

5. 78歳女性。Al jouf(ジャウフ)州Skaka(サカーカ)市の住民で、9月16日に発症し、9月18日に入院しました。彼女には基礎疾患がありました。9月20日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼女には、発症までの14日間にラクダとの接触歴があり、その生乳も飲んでいました。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。

6. 50歳男性。リヤド州Shaqra(シャクラー)市の住民で、9月11日に発症し、9月15日に入院しました。9月16日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼には基礎疾患がありました。彼には、発症までの14日間にラクダとの接触歴があり、その生乳も飲んでいました。現在、患者は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。

7. 70歳男性。ハーイル州ハーイル市の住民で、9月8日に発症し、9月13日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。9月15日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。患者は安定した状態で病棟の陰圧室に入院していましたが、容態が悪化し、2016年9月27日に亡くなりました。

 これらの患者の家族内および医療者における接触者の追跡が行われています。

 WHOは、2012年9月以降、世界中で少なくとも645人の関連する死亡報告を含む、検査で確定された、1,813人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

WHOによるリスクアセスメント
 MERS-CoVは、致死率の高い重症感染症を引き起こし、人から人への感染力を示してきました。これまでのところ、観察された人から人への感染は主に医療の現場で発生しています。

 追加された患者の事例は、全体的なリスク評価を変えるものではありません。WHOは、中東から新たなMERS-CoV感染患者が報告されることや、動物やその家畜生産物(例えば、ヒトコブラクダとの接触後)もしくは感染源となる人(例えば、医療施設内で)と接触することで感染した可能性のある人々が他の国に感染輸入されることはあり得ると考えています。WHOは、疫学上の発生状況の監視を続け、入手できる最新の情報に基づいてリスク評価をおこなっています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS-CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです

 WHOは、この状況において入国時に特別なスクリーニング検査と行うことも、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 31 October 2016
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Saudi Arabia
http://www.who.int/csr/don/31-october-2016-mers-saudi-arabia/en/