2016年11月14日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生(更新28)

 2016年11月11日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)国家担当者は、2016年10月15日から10月29日までの間に、死亡者4人を含めて、新たに中東呼吸器症候群(MERS)の感染者13人を報告しました。

 中東呼吸器症候群(MERS)の集団感染が、Al Ahssa(アル アハサー)州フフーフ市の病院で発生しました。患者4人が、この病院の集団感染に関係しています。関係する患者は以下のとおりです。

・73歳男性。10月15日にWHOに報告されました。(下記、No.13。発端となる患者と考えられています。)
・33歳女性。10月17日にWHOに報告されました。(下記、No.12)
・61歳男性。10月21日にWHOに報告されました。(下記、No.7)
・55歳男性。10月23日にWHOに報告されました。(下記、No.4)

 また、この他にも発端となる患者と関係のある患者がいます。但し、病院での集団感染とは関係がありません。この患者は、40歳男性で、10月21日にWHOに報告されました。(下記、No.6。中東呼吸器症候群(MERS)への感染が確認され、隔離される前に、発端となる患者を搬送した救急車の運転手をしていました。)

 緊急対策チームが派遣され、広域で接触者追跡の初期対応が行われました。合計で医療従事者27人と患者14人が、病院内で確認されました。このセンターでは、選択的に入院の中断が行われており、必要となる感染の予防と管理への対策が行われています。

患者の詳細情報
1. 41歳男性。Qassim(カスィーム)州ブライダ市の住民で、10月12日に発症し、10月27日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。10月28日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。現在、人工呼吸器は装着していませんが、彼は重篤な容態でICUに収容されています。
2. 65歳男性。サウジアラビア国籍を持たない(非サウジ国籍)北部国境州Arar(アラー)市の住民で、10月24日に発症し、10月25日に入院しました。彼に基礎疾患はありません。10月26日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼はWHOに10月23日に報告されたMERS-CoV感染者(下記、No. 5)の家族内接触者の1人です。接触者追跡を通して確認されました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。
3. 46歳男性。Al Ahssa(アル アハサー)州フフーフ市で働く非サウジ国籍の住民で、10月18日に発症し、10月22日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。10月23日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼は、発症までの14日間にラクダおよびその生肉との接触機会がありました。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。
4. 55歳男性。非サウジ国籍のアル アハサー州フフーフ市で働く住民で、10月2日に心筋梗塞のため、現在もMERSが集団発生する病院に入院していました。彼は、10月20日に入院し、10月22日に発症しMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。同じ病院でMERS感染が確認された患者と疫学的に関連する可能性について、調査が行われています。彼は重篤な容態でICUに収容されていましたが、10月22日に亡くなりました。
5. 58歳男性。非サウジ国籍の北部国境州Arar(アラー)市で働く住民で、10月14日に発症し、10月20日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。10月22日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。彼は重篤な容態でICUに収容されていました。人工呼吸器は装着していませんでしたが、10月27日に死亡しました。
6. 40歳男性。東部州Uaryarah市の住民で、10月19日に発症し、10月20日に入院しました。彼に基礎疾患はありません。10月21日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼は、患者であることが確認され隔離される前、10月13日に、73歳のMERS患者(下記、No13。10月15日、WHOに報告)を、MERSが集団発生する病院に救急車で搬送していました。現在、彼は安定した状態で、自宅での隔離が行われています。
7. 61歳男性。アル アハサー州フフーフ市の住民で、10月13日にカテーテル検査のために、現在もMERSが集団発生する病院に入院しました。彼は、入院中の10月14日に発症しました。10月20日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。同じ病院でMERS感染が確認された患者と疫学的に関連する可能性について、調査が行われています。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。
8. 72歳女性。Najran(ナジュラーン)州ナジュラーン市の住民で、10月13日に発症し、10月16日に入院しました。彼女には基礎疾患がありました。10月20日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。現在、彼女は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。
9. 53歳男性。Asir(アスィール)州Abha(アブハー)市の住民で、10月9日に発症し、10月19日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。10月20日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。彼は重篤な容態でICUに収容されていました。人工呼吸器は装着していませんでしたが、10月22日に死亡しました。
10. 47男性。カスィーム州ブライダ市の非サウジ国籍の住民で、10月10日に発症し、10月15日に入院しました。彼に基礎疾患はありません。10月17日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼は、発症までの2週間にラクダとの接触およびその生乳を飲む機会がありました。現在、彼は安定した状態で、病棟の陰圧室に入院しています。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。
11. 72歳男性。リヤド州リヤド市の住民で、10月13日に発症し、10月17日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。10月17日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。既知のリスクファクターとの接触についての調査が行われています。現在、彼は、重篤な容態で人工呼吸器を装着し、ICUに収容されています。
12. 33歳女性。アル アハサー州フフーフ市、現在もMERSが集団発生する病院で働く非サウジ国籍の住民です。彼女に症状はありません。73歳男性のMERS患者(下記、No.13。10月15日にWHOに報告)との接触者の追跡で確認されました。彼女に基礎疾患はありません。10月15日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。現在、彼女は安定した状態で、自宅での隔離が行われています。
13. 73歳男性。アル アハサー州フフーフ市の住民で、10月10日に発症し、現在はMERSが集団発生している病院に10月13日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。10月14日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼は、発症までの14日間にラクダとの接触およびその生乳を飲む接触機会がありました。彼は安定した容態で、病棟の陰圧室に入院していました。しかし、容態は悪化し、10月18日に死亡しました。農業省にも報告され、ラクダの調査が行われています。

 これらの患者の家族内および医療者における接触者の追跡が行われています。

 WHOは、2012年9月以降、世界中で少なくとも649人の関連する死亡報告を含む、検査で確定された、1,826人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

WHOによるリスクアセスメント
 報告された患者に関連して現在の医療体制が、全体的なリスク評価を変更するものではありません。しかし、根底でも、調査活動、感染の予防と管理への対策を適応させる必要性は続いています。

 MERS-CoVは、致命率が高い重症感染症を引き起こし、人から人への感染力を示してきました。これまでのところ、観察されたヒト-ヒト感染は主に医療の現場で発生しています。

 追加された患者の事例では、全体的なリスク評価は変わりません。WHOは、中東から新たなMERS-CoV感染患者が報告されることや、動物やその家畜生産物(例えば、ヒトコブラクダとの接触後)もしくは感染源となる人(例えば、医療施設内で)と接触することで感染した可能性のある人々が他の国に感染輸入されることはあり得ると考えています。WHOは、疫学的な状況の監視を続け、入手できる最新の情報に基づいてリスク評価をおこなっています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS-CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。

出典

WHO. Emergencies preparedness, response. Disease outbreak news. 11 November 2016
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Saudi Arabia
http://www.who.int/csr/don/11-november-2016-mers-saudi-arabia/en/