2016年12月09日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生(更新31)

 2016年12月8日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、オマーンの国際保健規則(IHR)国家担当者は、2016年11月29日に、新たに中東呼吸器症候群(MERS)感染者1人を報告しました。

患者の詳細情報
 
67歳男性。Dakhlia(ダーヒリーヤ)行政区の住民で、11月18日に発症し、11月20日に入院しました。彼には基礎疾患がありました。11月29日にMERS-CoVの検査結果が陽性と判明しました。彼は、発症までの14日間にさまざまな動物(ラクダ、ヤギ、ウシ)と接触する機会がありました。彼は安定した状態で、病院を退院しました。患者の家族内の接触者への追跡が続けられています。ラクダの調査も行われています。

 WHOは、2012年9月以降、世界中で少なくとも652人の関連する死亡報告を含む、検査で確定された、1,842人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

WHOによるリスクアセスメント
 MERS-CoVは、致命率が高い重症感染症を引き起こし、人から人への感染力を示してきました。これまでのところ、観察されたヒト-ヒト感染は主に医療の現場で発生しています。

 追加された患者の事例から、全体的なリスク評価は変わりません。WHOは、中東から新たなMERS-CoV感染患者が報告されることや、動物やその家畜生産物(例えば、ヒトコブラクダとの接触後)もしくは感染源となる人(例えば、医療施設内で)と接触することで感染した可能性のある人々が他の国に感染輸入されることはあり得ると考えています。WHOは、疫学的な状況の監視を続け、入手できる最新の情報に基づいてリスク評価をおこなっています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS-CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、警戒体制をとりながら、発生状況を監視しています地域住民の中で人から人へ持続的に感染が伝播していることの証拠は得られておらず、WHOは、この事象に関連して渡航や貿易を制限することを勧めてはいません。

出典

WHO. Emergencies preparedness, response. Disease outbreak news. 8 December 2016
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Oman
http://www.who.int/csr/don/8-december-2016-mers-oman/en/