2016年12月21日更新 鳥インフルエンザA(H7N9)の発生状況 (更新12)

中国国家衛生家族計画委員会(NFHPC)から、2016年12月12日に、11月6日から20日までに発生した新たな鳥インフルエンザ(H7N9)感染者6人の発生がWHOに通知されました。また、マカオ特別行政区からも、2016年12月14日に、鳥インフルエンザ(H7N9)感染者1人の発生が報告されました。

報告の概要

NFHPCから

2016年11月6日から20日までの発生患者です。患者の年齢幅は、32歳から80歳(中央値61歳)で、性別はすべて男性でした。すべての患者が入院となり、重篤な容態であると報告されています。

患者5人からは、生きた家禽類との接触または生きた家禽類の市場での接触機会のあったことが報告されました。患者1人は、明らかな家禽との接触機会はありませんでした。患者は3省から報告されました。Jiangsu(江蘇省)から4人、Fujian(福建省)から1人、Guangdong(広東省)から1人でした。患者の集団感染は報告されませんでした。

マカオ特別行政区から

患者は58歳男性です。2016年12月13日に中国広東省から持ち込まれた家禽に定期検査を行ったところ、マカオの卸売市場でH7抗原に陽性と判明しました。プロトコールにしたがい、疫学調査が開始され、感染した家禽との濃厚接触者(家禽の売り主と運搬した運転手)2人が同定されました。家禽の売り主は12月13日早朝に、感染した家禽の混ざる一連の家禽群をトラックで出荷していました。

家禽の売り主は、さらに詳しい調査を行うために病院に送られました。彼は、公衆衛生研究所で行われた検体3本で、RT-PCR法検査によって鳥インフルエンザA(H7N9)に陽性であることが判明しました。これまでのところ、彼にインフルエンザ様の症状はありません。彼は隔離下に置かれ、公立病院で抗ウイルス薬を投与されています。彼の妻も同じ卸売市場で働いており、患者と濃厚接触者と確認されましたが、検査結果は陰性でした。その後の10日間は健康監視下に置かれています。

2013年初頭以降、IHRを通して、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者807人が報告されています。

公衆衛生上の取り組み

中国政府

中国政府は以下のサーベイランスおよび感染対策を講じました。

  • サーベイランスおよびその評価分析の強化。
  • 鳥インフルエンザ症例に対する医療ケアの強化。
  • 一般大衆に対するリスクコミュニケーション。

マカオ特別行政区

以下の感染対策に取り組んでいます。

  • リスク評価の実施
  • 患者の管理と濃厚接触者の健康監視
  • 中国本土との連絡によって、感染した家禽との濃厚接触が確認された運転手の健康監視を行うこと
  • 患者が働いていた卸売市場で働く人々の健康監視の強化
  • 患者が働いていた卸売市場に健康維持への教育情報を提供すること
  • 発生状況と対策に関する情報へ認識を共通にするために情報公開の会見を開催すること

WHOのリスク評価

人におけるほとんどの患者は、感染した家禽との接触または生きた家禽を扱う市場などのウイルスに汚染された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)に感染しています。このウイルスが動物や環境中で検出され続けている限り、さらに患者が発生することが予想されます。医療従事者が関係する感染も含めて、これまでにも人への感染の小さな集団発生は報告されてきましたが、現在の疫学的・ウイルス学的な根拠からは、このウイルスが人と人との間で感染伝播を維持し続ける能力は獲得していないことが示唆されています。それ故に、地域レベルで感染が拡がる可能性は低いと考えられます。

このA(H7N9)ウイルスの人での感染は稀ですが、公衆衛生上に深刻な影響を与える可能性があるものとして、このウイルスの変異の有無および/または人への感染率の変化を検出する必要があり、厳密に監視することが必要です。

WHOからのアドバイス

WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、可能な限り養鶏場への立ち入り、生きた家禽類をさばく市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣の維持に努めるべきです。

WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。

WHOは各国に対して、重症急性呼吸器感染症(SARI)およびインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる傾向がないか慎重に調査し、人症例が生じた際には国際保健規則(2005)に基づき必ずWHOに報告し、各国国民の健康に備える活動を続けていくことを求めています。

中国に滞在される方は、今後も情報に注意していただくとともに、手洗いや咳エチケットをこころがけてください。また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりしないようにしてください。入国の際に、発熱、咳、喉の痛みなどの症状がある場合には検疫所に相談してください。

出典