2017年02月28日更新 鳥インフルエンザA(H7N9)の発生状況 (更新5)

2017年2月27日にWHOから公表された情報によりますと、2月18日に中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)より、ウイルスの遺伝子配列の結果がWHOに報告されました。このウイルスは、以前に広東省で報告されていた鳥インフルエンザA(H7N9)患者2人から分離されたものです。中国疾病対策センター(中国CDC)の国家インフルエンザ・センター(National Influenza Centre)によって、HA遺伝子の切断部位に変化がみられ、家禽に対する病原性が高いことを示唆していることが確認されました。

報告の詳細

これらの患者2人は、2017年1月19日に国際保健規則(IHR)を通して報告されました。

  • 43歳の女性。2016年12月29日に発症しました。患者は(その後)回復しました。彼女は家禽との接触があったことに加えて、鳥インフルエンザA(H7N9)への感染で入院した妹の世話もしていました。この事例は、家族内での集団感染として報告されました。
  • 57歳の男性。2017年1月5日に発症しました。患者は、2017年2月22日の時点で入院中であり、未だに重篤な容態です。彼は、家禽との接触があったことが報告されていました。

調査からは、病気になったり死んだりした家禽との接触が明らかになりました。これら2人の患者との濃厚接触者105人は医学的な経過が観察されましたが、いずれも、2週間以内に症状の発現はありませんでした。これまでのところ、人に対する病原性および感染力が変化したことの証拠はありません。

公衆衛生上の取り組み

中国政府は、H7N9の遺伝子配列が新たに展開を示したことを考慮して、広東省に対して現行の感染対策に加え、次のような対策を実施しています。

  • 消毒のための市場の閉鎖
  • 家禽市場と養鶏場の緊急監視
  • 監視中にウイルス株が確認されたときは、養鶏場のすべての家禽を殺処分

WHOのリスク評価

これは、2013年に鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスが出現して以来、遺伝的配列が低病原性から高病原性の鳥類ウイルスに進化したことを示唆する初めての報告です。 HA遺伝子の切断部位における同様の変化は、2017年2月4日に台湾から報告された、最近、広東省に旅行していた患者からのウイルスの遺伝子配列が鳥インフルエンザ情報共有の国際推進機構(Global Initiative on Sharing Avian Influenza Data;GISAID]に掲載され、この報告よりも早くに指摘されていました。また、中国農業省も、2017年2月21日に、広東省の生きた家禽を取り扱う市場から(分離された)ウイルスの遺伝子配列が高病原性の鳥インフルエンザウイルスと一致する変化を示したことを、世界獣疫事務局(OIE)に報告していました。これまでのところ、上記の遺伝子変異は、広東省または広東省へ旅行していた患者、家禽および環境サンプルのウイルスに見られています。

さらに、広東省の患者2人と台湾から報告された患者の遺伝子配列は、抗ウイルス薬ノイラミニダーゼ阻害剤への耐性に関係するアミノ酸配列の置換を示していました。3人の患者は検体を採取する前に抗ウイルス薬の投与を受けていたことが報告されています。

これまでのところ、人に対する鳥インフルエンザA(H7N9)感染の疫学的パターンに変化がみられた証拠はありません。低病原性の鳥インフルエンザウイルスから高病原性の鳥インフルエンザウイルスへのウイルスの変異が、人での病原性や感染力に影響を及ぼすという科学的な根拠もありません。

全体としては、地域レベルで感染が拡大する可能性は低いままです。

WHOは、世界インフルエンザ・サーベイランス及び対応システム(GISRS)ネットワークを通して公衆衛生上でのこれらのウイルスの影響を綿密に監視し、国連食糧農業機関(FAO)およびOIEとの協力の下で動物の健康への影響を監視しています。また、必要に応じて公衆衛生上のリスク評価を更新しています。

低病原性から高病原性へのウイルスの変異は、動物分野における監視体制および感染制御の戦略に影響を与える可能性があります。

WHOからのアドバイス

WHOは、鳥インフルエンザの発生が確認されている国への渡航者に対し、可能な限り養鶏場への立ち入り、生きた家禽類を扱う市場での動物との接触、家禽を解体する場所への立ち入り、家禽や動物の排泄物で汚染されているとみられるあらゆる物品との接触を避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、食品の安全と衛生習慣の維持に努めるべきです。

WHOは、この事象に関連して、特別な入国スクリーニングおよび渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中又は帰国した直後に、渡航者が重症の急性呼吸器症状を発症した場合には、常に鳥インフルエンザウイルスへの感染を鑑別診断として考えておくべきです。

WHOは各国に対して、重症急性呼吸器感染症(SARI)およびインフルエンザ様疾患(ILI)のサーベイランスを含むインフルエンザのサーベイランスの強化を継続し、通常と異なる傾向がないか慎重に調査し、人での症例が生じた際には国際保健規則(2005)に基づき必ずWHOに報告し、各国国民の健康に備える活動を続けていくことを求めています。

中国に滞在される方は、今後も情報に注意していただくとともに、手洗いや咳エチケットをこころがけてください。また、鳥に直接触ったり、病気の鳥や死んだ鳥に近寄ったりしないようにしてください。入国の際に、発熱、咳、喉の痛みなどの症状がある場合には検疫所に相談してください。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 27February2017
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus - China
http://www.who.int/csr/don/27-february-2017-ah7n9-china/en/