2017年03月01日更新 アンゴラ及びコンゴ民主共和国における黄熱の流行の終息

南米のブラジルでは、黄熱の集団感染に関する報告が続いていますが、一方で、昨年、発生が続いていたアンゴラとコンゴ民主共和国の流行が終息したことを示す情報が、WHOから2017年2月14日に公表されました。また、外務省からも同様の情報が広域安全情報に2月28日付けで掲載されています。

コンゴ民主共和国(DRC)は、2017年2月14日に黄熱の流行の終息を宣言しました。これは、アンゴラが2016年12月23日に発表した宣言に続くものです。両国ともに、過去6か月間に、新たに診断確定患者が報告されなかったことから、流行の終息がもたらされたことが宣言されました。

WHOアフリカ事務局長Matshidiso Moeti博士は、かつてない流行に対する大規模な感染対策を賞賛しながら、次のように述べています。「国の担当当局、地元の医療従事者、そして、その支援者たちによって、協調しながら強力な感染対策が行われたことで、近年、稀にみる大規模な黄熱の流行のひとつに対し、終息を宣言することができました。」

アンゴラで2015年12月に最初に確認されたこの感染の流行では、両国で確定患者965人が確認され、疑い患者が数千人に上りました。アンゴラで最後に患者が確認されたのは2016年6月23日、また、コンゴ民主共和国の最後の患者は7月12日のことでした。

緊急に行った予防接種キャンペーンでは、2か国で3000万人以上の人々が予防接種を受けました。この対策で鍵となることは、リスクのあるすべての地域で、できる限り多くの人々に確実にワクチンの効果を届けるため、その実施が難しい地域での予防キャンペーンを年末までに実施し、(接種漏れがないように)一掃していったことでした。この前例のない対策では、世界の黄熱ワクチンの備蓄を何度も枯渇させかけました。

56を越えるNGOの支援団体からの41,000人以上のボランティアと8,000以上のワクチン接種チームが、この大規模な予防接種キャンペーンに参加しました。使用されたワクチンは、国境なき医師団(Médecins Sans Frontières:MSF)、国際赤十字および赤新月連盟(IFRC)、ユニセフ、WHOが共同管理する世界の備蓄庫から提供されました。2016年の最初の6か月間だけでも、支援団体は1,900万回を越えるワクチン接種を行いました。Gavi(ワクチンと予防接種のための世界同盟)は、かなりの部分のワクチンを財政支援しました。

挑発的な感染の流行

この流行の発端となる患者は、2015年12月5日に、アンゴラ・Luanda(ルアンダ)県Vianaで確認されました。この流行は、全国および隣国のコンゴ民主共和国に広がり、2016年3月には、各地での感染伝播が確立されました。

発生の開始から、アンゴラでは、合計で疑い患者4,306人と死亡者376人が報告されました。このうち、患者884人と死亡者121人では診断が検査確認されました。

(また、)この流行で、コンゴ民主共和国では、疑い患者2,987人が報告されました。このうち、患者81人で診断が検査確認され、16人が死亡しました。

より多くの人々にワクチンを接種するための緊急ワクチン用量

この流行への対策の大きな成果の1つは、黄熱ワクチンを通常用量の5分の1で使用する思い切ったワクチン分割戦略を導入したことでした。これは、世界のワクチンに対するWHOの専門家グループによって容認された方法で、大都市で即時に流行することの脅威からできるだけ多くの人々を守るために実施されたものでした。

WHOは、黄熱に対して少なくとも12か月間の免疫力を獲得するための短期的な対策として、コンゴ民主共和国の保健省がワクチン用量の分割戦略を採用してキンシャサ市内1,070万人に予防接種することを支援しました。

各国に続く支援

大規模な予防接種キャンペーンを支援することに加えて、WHOと支援団体は、疾病の調査活動を強化し、蚊の拡散を防ぐこと、(さらには)地域社会の住民が自分たちで自分自身を守ることへの支援を、アンゴラとコンゴ民主共和国に対して、引き続き行ってきました。

気候変動、農村部から人口が密集する都市部への国境を越えた人々の移動量の増加、アネッタイシマカ属の蚊の大量発生などが黄熱の流行へのリスクを高めています。

WHOの緊急対策・地域局長であるIbrahima SocéFall博士は、次のように述べています。「アンゴラやコンゴ民主共和国のような黄熱の流行は、最もリスクの高い人々を守るための感染対策に協力して取り組まれなければ、世界の多くの地域で今以上に頻繁に発生する可能性があります。そのため、リスクに曝されている住民に、地域全体で予防接種を強力に推し進めるための予防へのアプローチを実施する必要があります。」

これに対応して、世界における活動を強化し、アンゴラとコンゴ民主共和国での流行の発生からの教訓を集約するために、WHOをはじめとする幅広い支援組織は、最近、「黄熱の撲滅(Elimination of Yellow fever Epidemics:EYE)」を呼び掛ける新しい戦略を作成しました。

EYE戦略で鍵となる要素には、感染の流行に襲われる前に、住民が確実にワクチン接種を受け、流行への対策では世界でのワクチン備蓄量を増やし、リスクの最も高い国ではさらに大規模な備えに対して支援を行うことが含まれています。

この流行への対策に尽力した組織である、アンゴラ、ドイツ、日本政府、Gavi、the Vaccine Alliance(ワクチン同盟)、Bio Manguinhos(ブラジルの研究施設)、the Central Emergency Response Fund(CERF:中央緊急対応基金)、the WHO International Coordination Group(ICG:ワクチンの国際調整グループ)の基金運用制度、USAID(米国国際開発庁)およびthe Contingency Fund for Emergencies(緊急対応基金)からの財政支援に深謝致します。

出典

AFRO/WHO.Press release, Media centre. 14February2017
The yellow fever outbreak in Angola and Democratic Republic of the Congo ends
http://www.afro.who.int/en/media-centre/pressreleases/item/9377-the-yellow-fever-outbreak-in-angola-and-democratic-republic-of-the-congo-ends.html