2017年03月13日更新 ラッサ熱の発生について-ベナン、トーゴ、ブルキナファソ

2017年3月10日付けで公表されたWHOの情報によりますと、ベナン、トーゴ、ブルキナファソから、ラッサ熱の発生について報告されています。

ベナンおよびトーゴ、ベナンからの感染輸出

2017年2月20日にベナン保健省は、ナイジェリア国境に近いベナンBorgou県Tchaourou地区で発生したラッサ熱患者について報告しました。この患者は、(ベナンとの国境に近い)ナイジェリアに住む妊娠女性でした。

彼女は、2017年2月11日に入院し、帝王切開により新生児(未熟児)を出産しましたが、2月12日に亡くなりました。検体は、ベナンのCotonou(コトヌー)にある検査施設でラッサ熱に陽性であることが判明しました。その後、ナイジェリアのラゴス大学研修病院のラッサ熱研究室でも確認されました。新生児と父親は、2017年2月14日に(感染を)知らされることなく病院を出て、彼らが入院していた病院のあるトーゴ北部のMangoに向かいました。

トーゴのLomé(ロメ)にある国立衛生研究所により、新生児はラッサ熱に陽性、父親は陰性であることが判明しました。新生児はリバビリンによる治療を受け、現在は安定した状態です。この子は、未熟児のためトーゴ北部で現在も入院しており、総合的に管理が行われています。

この妊娠女性と新生児に関連して、ベナンでは合計で68人の接触者が健康監視下に置かれ、トーゴでも29人の接触者が健康監視下に置かれています。

トーゴ、ブルキナファソからの感染輸出

ブルキナファソ保健省は、トーゴからの情報を受けて2017年2月26日に、トーゴ北部の病院でラッサ熱患者が確認されたことをWHOに知らせました。この患者は、ブルキナファソの中東部にあるOuargaye地区を感染源としていました。

この患者は、妊娠女性で、以前にブルキナファソで入院していました。彼女は退院しましたが、自宅で流産しました。ブルキナファソで2度目の入院の後、彼女はトーゴ北部Mangoにある病院に転送されましたが、2017年3月3日に亡くなりました。

妊娠女性から採取された検体は、トーゴのLomé(ロメ)にある国立衛生研究所でラッサ熱であることが判明しました。

トーゴでは、この妊娠女性に関連して7人の接触者が確認され、追跡が行われています。ブルキナファソでは、この妊娠女性に関連して135人の接触者が確認され、追跡が行われています。

トーゴ

2017年3月2日に、Kiantial保健行政地区で、発熱と下血のために1人の男性が医療センターに入院しました。2017年3月3日には、地域病院に紹介されました。

この男性から採取された検体は、トーゴのLomé(ロメ)にある国立衛生研究所でラッサ熱であることが判明しました。患者は3月6日に退院しました。現在、調査が行われています。この男性患者と近親者が自宅で経過観察を受けています。

トーゴでは、この男性患者に関連して合計18人の接触者が確認されました。

公衆衛生における取り組み

ベナン、ブルキナファソ、トーゴの保健当局は、これらのラッサ熱患者に対処するために、次のようなことを実施しています。

  • 感染の発生地域へ疫学調査のために感染対応チームを速やかに派遣すること
  • 接触者の特定と追跡
  • 保健医療施設における感染の予防と管理への対策の強化および医療従事者への概要の説明
  • トーゴ、ブルキナファソ、マリ、ベニンの間での国境を越えた連携と情報交換の強化

WHOのリスク評価

ラッサ熱は、急性ウイルス性出血熱のひとつです。ラッサ熱ウイルスは、ウイルスが混じった齧歯類の尿や糞便、食品、家庭用品との接触を介して人に感染します。人から人への感染や検査施設での感染も発生することがあります。

ラッサ熱は、近隣のナイジェリアおよびその他西アフリカ諸国には常在しており、毎年12月から2月にかけての感染のピークがみられ、この地域のさまざまな場所で流行を引き起こしています。最近のベナンでのラッサ熱の発生は、2016年1月~5月に同地域で発生しました。国のレベルでは、死亡者28人を含め、54人を越える患者が報告されています。ブルキナファソとトーゴでも、過去に患者が散発的に報告されています。

ナイジェリア、トーゴ、ブルキナファソ、ニジェール、ベニンの間では、常に重要な人々の出入りがあり、西アフリカでは散発的にラッサ熱患者が発生することが予想されます。今後も、この地域では患者が散発的に発生する可能性があります。

しかし、ベニン、トーゴ、ブルキナファソでは、感染制御への対策が続けられており、今回確認された患者からさらに病気が広がるリスクは低いと考えられます。これまでの年から季節性の流行ピークを考え、全般的な感染への備えと対策の向上、地域での連携の強化を考慮すると、大規模な感染の流行が起こるリスクは中程度と位置づけられます。

WHOからのアドバイス

ラッサ熱の感染予防は、齧歯類が家に侵入しないようにするために、「地域の衛生環境」の整備を促進することに係っています。医療施設内では、スタッフは診断の有無に関係なく、患者に対処する際に、常に、標準的な感染の予防を行い、感染への予防対策が図られる必要があります。

稀な場合として、ラッサ熱が流行している地域から帰ってきた旅行者が、この病気を他の国に持ち出しててしまうことがあります。他の熱帯性の感染症の方がはるかに起こりやすいことですが、西アフリカから戻ってきた発熱性の患者、特に、ラッサ熱が常在していることが知られている農村地域やその国の病院で(患者と)接触の機会があったような患者では、ラッサ熱の診断が鑑別される必要があります。医療関係者は、ラッサ熱が疑われる患者を診察する際には、直ちに、現地および国の専門家に連絡し助言を受けるとともに、検査体制を整えてください。

出典

WHO.Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 10 March 2017
Lassa Fever- Benin, Togo and Burkina Faso
http://www.who.int/csr/don/10-march-2017-lassa-fever-benin-togo-burkina-faso/en/