2017年03月17日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新8)

2017年3月16日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

2017年第1週から第9週までに、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、スリナムでは黄熱の疑い患者と確定患者が報告されています。

ブラジル、エクアドル、ペルー、ボリビア、スリナムから、次のように発生状況が報告されています。

ブラジルでは、2016年12月始めの流行発生以降、2017年第9週までに、黄熱患者1,538人(確定患者396人、破棄184人、疑い患者および検査中の患者958人)が報告されました。このうち、255人(確定患者134人、破棄9人、検査中112人)が死亡していました。死亡率(CFR)は、確定患者で34%、疑い患者で12%でした。

感染する可能性が高い地域のうち、感染の疑い患者と確定患者の79%がミナス・ジェライス州(1,070人)から報告されました。次いで、エスピリト・サント州(245人)、サンパウロ州(15人)、バイーア州(9人)、トカンティンス州(6人)、ゴイアス州(3人)、リオ・グランテ・ノルテ州(1人)からでした。一方、確定診断された患者は、ミナス・ジェライス州(303人)、エスピリト・サント州(89人)、サンパウロ州(4人)の3州に分布していました。

ミナス・ジェライス州では、5週連続して疑い患者と確定患者の減少傾向がみられました。一方、エスピリト・サント州では、2017年第5週に患者が減少傾向となりました。(けれども)この流行の展開に対する監視は続ける必要があります。

2月13日から3月13日までに報告された新たな患者(確定患者および検査中の患者)については、エスピリト・サント州で125人、ミナス・ジェライス州では同時期に108人となりました。

今回の流行における黄熱の伝播サイクルは変化してきている可能性があります。しかし、これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。

エスピリト・サント州とミナス・ジェライス州の大都市に近い行政地区からの確定患者が、動物での集団感染の発生で確認されたウイルスと結びついており、エスピリト・サント州Vitori(ビトリア)行政地区でも疑い患者が報告されていることから、感染伝播サイクルの変化に対するリスクが高まりをみせています。

確定診断と感染の可能性が高かった死亡者は、ミナス・ジェライス州が111人、サンパウロ州が3人、エスピリト・サント州が20人でした。疑い患者と確定患者を合わせた死亡率は、高い順に、サンパウロ州で75%、ミナス・ジェライス州で37%、エスピリト・サント州で22%でした。

前回から2017年3月13日までに更新された黄熱に関する疫学情報では、新たに260件の人以外の霊長目における動物での集団感染の発生が報告され、調査されています。この間に、新たに検査でウイルスが確認された事例はありませんでした。流行の開始以来、合計で1,228件の人以外の霊長目における動物での集団感染が報告されました。このうち386件で黄熱への感染が確認され、11件で棄却されました。

人以外の霊長目における集団感染は、連邦直轄地区と、アラゴアス州、バイーア州、ゴイアス州、エスピリト・サント州、マットグロッソ・ド・スール州、ミナス・ジェライス州、パラ(Pará)州、パライバ(Paraíba)州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、リオグランデ・ド・スール州、ロンドニア(Rondônia)州、サンタ・カタリーナ州、サンパウロ州、セルジッペ州、トカンティンス州から報告されています。

人以外の霊長目における集団感染の発生について、現在、(ボリビアとパラグアイと国境を接する)マットグロッソ・ド・スール州、(アルゼンチンと国境を接する)サンタ・カタリーナ州、(ウルグアイとアルゼンチンと国境を接する)リオグランデ・ド・スール州、(ボリビアと接する)ロンドニア州、(ガイアナ、スリナム)と接するパラ州、(アルゼンチンとパラグアイと国境を接する)パラナ州で調査が行われています。これは、国境を接する国々、特に共通の生態系をもっている地域に、ウイルスが拡がるリスクのあることを示しています。

エクアドルでは、IHR国家担当者からPAHO/WHOに、2017年第10週に黄熱の確定患者が報告されました。この患者は、コロンビアと国境を接するSucumbios(スクンビオス県)に住む31歳の男性患者です。患者は、県立中央検査施設でRT-PCR法検査を使って確認されました。

エクアドルで、前回、黄熱の確定患者が報告されたのは、2012年にNapo(ナポ県)からでした。

ペルーでは、2017年第9週までに、死亡者2人を含めて、合計で7人の確定患者もしくは感染の可能性の高い患者が報告されました。Ayacucho(アヤクーチョ県)では、Sivia地区とSanta Rosa地区から患者3人か報告されました。そのうち、Santa Rosa地区の1人は死亡しました。残る患者4人は、Amazonas(アマソナス県:2人)、Pasco(パスコ県:1人)、San Martin(サン・マルティン県:1人)で感染の可能性が高い患者として報告されました。

ボリビアでは、IHR国家担当者からPAHO/WHOに、2017年第6週に黄熱患者が報告されました。IgM抗体検査とELISA法検査で陽性と判明しました。

この患者は、2017年1月8日にボリビアに到着した28歳の男性旅行者で、ワクチン接種はしておらず、1月9日にCaranavi(カラナビ州)に行き、そこで感染したようでした。

ボリビアでは、黄熱が常在しており、2012年までは様々な規模の流行が周期的に発生していました。2013年には、単発の患者だけが報告されていました。

スリナムで、2017年第10週に、オランダから来た旅行者で黄熱が検査確認されたことが報告されました。この患者は、ワクチン接種をしておらず、2017年2月中旬から3月初めまでスリナムに滞在していました。ロッテルダムのErasmus Medical CenterでRT-PCR法検査と遺伝子解析によって、また、ドイツ・ハンブルクのBernhard Nocht InstituteでRT-PCR法検査によって確認されました。

勧告事項

PAHO / WHOは、ブラジルでの現在の黄熱の発生状況、および数年間は患者が発見されて来なかった地域で患者が発生していることを踏まえ、黄熱患者を発見し、確認し、速やかにかつ適切に治療するための取り組みを続けることを、加盟国に促しています。この目的のために、医療従事者は常に最新の情報を把握し、特にウイルスの伝播が確認されている領域においては、患者を発見し、治療するためにトレーニングしておくことが必要です。

PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを促しています。

出典

PAHO.Epidemiological Update. 16 March 2017
Yellow Fever
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=38672&lang=en