2017年03月27日更新 アメリカ大陸の黄熱の発生状況(更新9)

 2017年3月23日付で汎米保健機構(PAHO)より、アメリカ大陸での黄熱の発生状況に関する情報が更新されました。

アメリカ大陸での黄熱の発生状況

 2017年第1週から第11週までに、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、スリナムでは黄熱の疑い患者と確定患者が報告されています。

 ブラジル、ペルーから、次のように発生状況が報告されています。

 ブラジルでは、2016年12月始めの流行発生以降、2017年3月17日までに、黄熱患者1,561人[確定患者488人(28.7%)、破棄263人(16.9%)、疑い患者および検査中の患者850人(54.4%)]が報告されました。このうち、264人(確定患者144人、破棄10人、検査中110人)が死亡していました。死亡率(CFR)は、確定患者で32%でした。

 感染する可能性が高い地域のうち、49.4%がミナス・ジェライス州の188行政地区から報告されました。この州は、感染の疑い患者と確定患者を合わせて1,016人となり、(患者の)大半を占めています。次いで、エスピリト・サント州(243人)、サンパウロ州(15人)、バイーア州(8人)、トカンティンス州(6人)、ゴイアス州(3人)、リオ・デ・ジャネイロ州(3人)となっています。一方、確定診断された患者は、ミナス・ジェライス州(349人)、エスピリト・サント州(93人)、サンパウロ州(4人)、リオ・デ・ジャネイロ州(2人)の4州に分布していました。

 リオ・デ・ジャネイロ州から報告された患者は、Casimiro de Abreu行政地区の農村部に住む男性3人で、黄熱ウイルスの伝播が確認されている州への旅行歴はありませんでした。

 ミナス・ジェライス州とエスピリト・サント州では、5週連続して報告された患者数の減少傾向がみられました。

 今回の流行における黄熱の伝播サイクルは変化してきている可能性があります。しかし、これまでのところ、ネッタイシマカが感染の伝播に関わっていることは報告されていません。

 エスピリト・サント州とミナス・ジェライス州の大都市に近い行政地区から、確定患者が報告されています。これは、動物での集団感染の発生で確認されたウイルスと結びついており、エスピリト・サント州Vitori(ビトリア)行政地区でも疑い患者が報告されていることから、感染伝播サイクルの変化に対するリスクが高まりを示しています。

 確定診断と感染の可能性が高かった死亡者は、ミナス・ジェライス州が118人、サンパウロ州が3人、エスピリト・サント州が22人、リオ・デ・ジャネイロ州が1人でした。疑い患者と確定患者を合わせた死亡率は、高い順に、サンパウロ州で75%、ミナス・ジェライス州で34%、リオ・デ・ジャネイロ州で33%、エスピリト・サント州で24%でした。

 患者の感染が確認された行政地区と動物での集団感染の発生が確認された行政地区が、エスピリト・サント州とミナス・ジェライス州では、重なっていることが観察されています。アラゴアス州、マットグロッソ・ド・スール州、パラ州、パライバ州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・スール州、ロンドニア州、サンタ・カタリーナ州、セルジッペ州では、患者の発生は報告されていませんが、動物での集団感染の発生に対する調査が行われています。

 前回から2017年3月17日までに更新された黄熱に関する疫学情報では、新たに21件の人以外の霊長目による動物での集団感染の発生が報告されました。流行の開始以来、人以外の霊長目による動物での集団感染が合計で1,249件報告されました。このうち389個体で黄熱への感染が確認され、3,94個体で検査が行われています。12個体では、診断が棄却されました。

 人以外の霊長目による集団感染は、連邦直轄地区と、アラゴアス州、バイーア州、ゴイアス州、エスピリト・サント州、マットグロッソ・ド・スール州、ミナス・ジェライス州、パラ州、パライバ州、パラナ州、ペルナンブーコ州、リオグランデ・ド・ノルテ州、リオグランデ・ド・スール州、ロンドニア州、サンタ・カタリーナ州、サンパウロ州、セルジッペ州、トカンティンス州から報告されています。

 人以外の霊長目による集団感染の発生について、(ボリビアとパラグアイと国境を接する)マットグロッソ・ド・スール州、(アルゼンチンと国境を接する)サンタ・カタリーナ州、(ウルグアイとアルゼンチンと国境を接する)リオグランデ・ド・スール州、(ボリビアと接する)ロンドニア州、(ガイアナ)と接するパラ州、(アルゼンチンとパラグアイと国境を接する)パラナ州では、国境を接する国々、特に共通の生態系をもっている地域に、ウイルスが拡がるリスクのあることを示しています。

 ペルーでは、2017年第10週までに、死亡者2人を含めて、合計で患者14人が報告され、このうち、確定患者が3人、感染の可能性の高い患者が5人、診断の棄却が6人でした。確定患者が報告されたのはAyacucho(アヤクーチョ県)で、感染の可能性の高い患者はAmazonas(アマソナス県:2人)、San Martin(サン・マルティン県:1人)、Madre de Dios(マードレ・デ・ディオス県:1人)、Pasco(パスコ県:1人)から報告されました。

PAHOからの勧告事項

 PAHO / WHOは、現在のブラジルでの黄熱の発生状況、および数年間は患者が発見されて来なかった地域で患者が発生していることを踏まえ、黄熱患者を発見し、確認し、速やかにかつ適切に治療するための取り組みを続けることを、加盟国に促しています。この目的のために、医療従事者は常に最新の情報を把握し、特にウイルスの伝播が確認されている領域においては、患者を発見し、治療するためにトレーニングしておくことが必要です。

 PAHO / WHOは、黄熱の予防接種が要求され、情報が提供され、ワクチン接種が行われている地域に向かう旅行者に対し、加盟国が必要な措置を講じていくことを求めています。

黄熱ワクチンの接種について
 黄熱への最も重要な予防対策は、ワクチン接種です。ワクチン接種は、小児期の定期的な予防接種や発生リスク地域でワクチンの接種率を高めるために行う独自の集団接種キャンペーンを通じて、実施されています。また、リスク地域を旅行する者へのワクチン接種も行われています。

 黄熱ワクチンは安全で高くはない価格であり、ワクチン接種した者には10日後に80〜100%、30日後には99%の幅で免疫の効果が現れるようになります。接種は単回で生涯にわたり免疫保護を得るのに十分であり、(免疫力の)増強のための追加接種は必要ありません。

 入手できるワクチンの量には限りがあるため、各国の担当部局は、黄熱の感染リスク地域におけるワクチン接種率を評価し、ワクチンの分配に重点を置くことが求められます。また、流行が発生する可能性に備えて、国のレベルでワクチンの在庫量を維持することが求められます。

 次のような人には、黄熱ワクチンは禁忌となっています。
•一般の健康人で急性の発熱性疾患を患っている人
•鶏卵や鶏卵から作る製品に対する過敏症の既往歴のある人
•妊娠中の女性(緊急事態や規制当局からの明白な勧告がある場合を除く)
•重度の免疫不全(例、がん、白血病、AIDSなど)のある人
•6か月未満の乳児
•胸腺に関連する疾患を有する人(年齢は問わない)

 予防対策
•ワクチン接種を受けたことのない60歳以上の人で、有害事象が発生するリスクに直面している場合には、黄熱に罹患ときの疫学的なリスクを個別に評価することが求められます。

出典

PAHO. Epidemiological Update. 27 March 2017
Yellow Fever
http://www2.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=38796&lang=en