2017年03月30日更新 撲滅への進展を脅かす麻疹の流行- ヨーロッパ

 2017年3月28日に、WHOヨーロッパ地域事務局(EURO)からヨーロッパ各国で麻疹が流行し、撲滅に向けた目標の達成を脅かしていることの記事が掲載されました。

情報の詳細

 2017年1月に、WHOヨーロッパ地域事務局(EURO)には500人を超える麻疹患者が報告されました。麻疹は、ヨーロッパ各国、また、国内各地に拡がり続けており、予防接種率が必要とされる基準である95%を下回っている地域では、どこにでも大流行が起こり得る状態になっています。

 「この2年間、撲滅に向けて着実に進んできていただけに、ヨーロッパでの患者数の増加は強く懸念されます。」「最近の旅行のパターンでは、麻疹ウイルスと接触することのない人はおらず、ウイルスが到達していない国もありません。住民を完全に保護するために必要となるレベルの予防接種率に達するまでは、他の地域と同じように、ヨーロッパにも流行が発生し続けます。」と、WHOヨーロッパ地域事務局長Zsuzsanna Jakab博士は述べています。

 この地域にある53か国のうち3分の2の国では、既に常在する麻疹は遮断されています。しかし、麻疹と風疹を撲滅するためのこの地域の認定委員会(RVC)によれば、14か国では(麻疹が)常在したままです。

撲滅への進展を脅かす見逃された感染の伝播

 2017年1月に、この地域で麻疹患者559人が報告されました。このうち、患者474人は14ある(麻疹の)常在国のうちの7か国(フランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、ルーマニア、スイス、ウクライナ)から報告されました。2月の速報による情報でも、新たな感染者の数が急増していることが示されています。これら全ての国では、全国規模での2回目の麻疹ワクチンの予防接種率が必要とされる基準95%未満です。

 「(麻疹が)常在するすべて国に対し、国境で麻疹の伝播を阻止するために緊急の措置を講ずることが強く求められます。また、この基準を達成している国には、予防できる状態を保ち、高い予防接種率を維持し続けることが求められます。私たちは、この地域から(麻疹を)撲滅することに向けられた多大な努力による進展が失われてしまわないように、力を合わせて確実に行動しなければなりません。」と、Jakab博士は続けています。

現在の主な流行の発生状況

 ルーマニアとイタリアでは、現在、ヨーロッパで最大級の麻疹の流行が発生しています。

 ルーマニアでは、2016年1月以降(2017年3月10日現在)、3,400人を超える患者と17人の死亡者が報告されています。ほとんどの患者が、予防接種率が特に低い地域に集中しています。

 報告されたデータによれば、2016年1月以降、ルーマニアでは3つの遺伝子型の麻疹が流行しています。しかし、(これらは)これまでにこの国で広がったことがなく、2015年にヨーロッパの他の国や地域で報告されたウイルスでした。感染源や感染経路を特定するために、検査データと疫学データを総合的にみる必要があります。

 イタリアでは、2017年第1週に患者数が急増しました。2017年1月までに患者238人が報告され、少なくとも、多くの患者が示されている2月の速報値によれば、2016年に報告された患者数(約850人)を直ぐに超える勢いです。

最もリスクの高い国

 麻疹は、重篤な病態を引き起こす力をもつ極めて伝染性の強いウイルスです。麻疹は世界のほとんどの地域にも常在している病気であるため、この病気を撲滅した国を含めて、どの国でも広がる可能性があります。そのため、この病気に感染するリスクが、年齢に関係なく、免疫力のない人または免疫力の低い人のすべてにあります。このことは、特に、予防接種率の低い状態が続き、大惨事となるような大規模な流行の発生リスクが増している国に当てはまります。国の担当当局は、感染輸入による流行発生を防ぐために、2回の麻疹ワクチンの接種率を最低限95%まで上げて維持できるように最大限に努力する必要があります。

 WHOヨーロッパ地域事務所は、適切な対策を計画し実施するために、リスクのある国、大規模な流行が発生し、適切な対応策を計画し、実施している国、の国レベルの担当当局と密接に協力し合っています。これには、サーベイランスを強化することと、感染の可能性が高い人、特に感染した人と接触したり、その可能性があったりした人を特定し、ワクチンを接種すること、並びに予防接種が必要なすべての人に接種を促すために地域社会が関わることなどが含まれます。

ヨーロッパにおける麻疹および風疹の撲滅活動

 欧州のワクチン接種活動計画2015-2020を採択するにあたり、53の加盟国すべてが、この地域で優先的にワクチン接種する目標のひとつとして麻疹および風疹の撲滅を掲げました。

 この目標への歩みは、2016年の第5回RVC会議で確認され、次のことが結論づけられました。
・53ある国のうち37か国が、常在する麻疹の伝播を遮断しました。
・そのうち、24か国では36か月を超えて(ウイルスの)遮断が維持されています。このことから、これらの国では麻疹は撲滅されたと考えられました。
・14か国では、麻疹の伝播のために(ウイルスが)常在しています。
・2か国からは、年間報告書と最新の更新情報が提出されませんでした。

 WHOの技術専門家らは、予防接種プログラムの強化、住民の免疫力の増強とワクチンの信頼性の向上、疾患の調査活動に対応する能力の構築、(麻疹の)撲滅に向けた各国の取り組みにおける流行への対策などを包括的に支援しながら、この目標を達成するために、加盟各国と緊密に協力し合っています。

出典

EURO/WHO. Press release. 28 March 2017
Measles outbreaks across Europe threaten progress towards elimination
http://www.euro.who.int/en/media-centre/sections/press-releases/2017/measles-outbreaks-across-europe-threaten-progress-towards-elimination