2017年05月08日更新 E型肝炎の発生- ニジェール

2017年5月5日に世界保健機関(WHO)の情報によりますと、ニジェール保健省から4月12日に、この国の東部に位置するディファ州でE型肝炎が集団発生したことが報告されました。4月19日には、この大流行が保健省大臣によって公式に宣言されました。

情報の詳細
2017年1月9日以降、The Centre Mere-Enfant de Diffa(母子保健センター)で妊娠女性での黄疸患者の増加が話題となりました。当初は、頭痛、嘔吐、発熱、結膜炎、骨盤痛、および記憶喪失などが訴えられました。
最初は、黄熱がこの流行の原因であると疑われていました。しかし、ディファ州の母子保健センターに報告された妊婦の患者数と隣国チャドでのE型肝炎の流行発生を考えると、自他覚症状からの原因にE型肝炎の可能性も考えられました。検査施設で検査をするための検体が採取され、Institut Pasteur de Dakar(ダカール・パスツール研究施設)に送られました。これまでに検査された29検体で、すべての検体が黄熱に対して陰性であったのに対し、15検体がPCR 法検査でE型肝炎に陽性でした。
2017年5月3日現在、死亡者27人含む282人の疑い患者が報告されています。死亡者1人を除くと、報告されたすべての死亡者は妊婦でした(死亡率:9.6%)。現在までに、ディファ州にある6地区のうち5地区で患者が報告されています。患者188人はディファ州内およびN'Guigmi(ンギグミ)の街からの報告でした。ディファ州地域は、チャド湖流域の感染危機状態が発生している地域にあり、国境を越えて(人々が)盛んに行き来しています。

公衆衛生上の取り組み
2017年4月6日に、保健省は、流行が疑われる発生状況をじっくりと検討し、理解を深めるための緊急会議を開催しました。この流行の発生に対応して、以下の取り組みが開始されています。
・緊急の感染対策の計画が立ち上げられ、毎週、流行への対策活動を調整するための会議が開かれています。
・ディファ州では大流行の発生に対する先行調査が実施され、その間に、生体からの検体が採取されました。「One Health(健康は一体のもの)」の方針にしたがって、詳しい調査のための準備が進められています。
・WHOと国境なき医師団の支援を軸に、患者の管理は無償で実施されています。
・報告義務のある病気のリストにE型肝炎を含めることで、E型肝炎の調査活動が強化されています。
・「early care seeking(医療施設への早期受診)」を促すために地域社会への関わり、特に、妊婦への関わりが強化されています。
・定期的に情報を共有することで、周辺諸国との国境を越えた連携も強化されています。
・必要とされる人的・物的資源を動員するために、包括的な感染流行への対策の計画が準備されています。

WHOによるリスクアセスメント
チャド盆地周辺諸国、特に、ナイジェリア、チャド、カメルーン北部の周辺地域では、患者が移動民や避難民の中でも報告されているため、国境を越えた感染の拡大が起こる危険な状態にあります。また、ニジェールの流行の感染源とその規模が把握される必要があります。
この流行は、ニジェールで初めて確認されたE型肝炎の感染発生です。この事例は、感染に罹りやすい人々が政情の不安定のために移住してきた後に(感染に)無防備な状態になっている地域で発生していることに注意を払う必要があります。現在、ディファ州は全地域で感染が発生しています。
流行の規模への理解を深めるために、この地域ではさまざまな保健所や地域行政のレベルで、積極的に患者の発見が行われています。飲料水、下水道、衛生環境(Water, Sanitation and Hygiene;WASH)への介入の強化は、ウイルスの伝播の遮断と新たな患者の発生防止への支えとなります。国境を越えた情報交換を継続することが重要です。そうすることで、E型肝炎の感染発生を管理することへの経験を交換できるようになります。

WHOからのアドバイス
WHOは、流行の規模と感染源を確認するために、現在のE型感染の発生状況を詳しく調査することを強く勧めています。WHOは疫学的な発生状況の監視を続け、新しい情報が入手できたときにリスクの評価を実施しています。WHOは、現在入手できている情報に基づく限り、ニジェールへの旅行や貿易の制限を勧めてはいません。

出典

WHO.Disease outbreak news.Emergencies preparedness, response. 5 May 2017
Hepatitis E- Niger
http://www.who.int/csr/don/05-may-2017-hepatitis-e-niger/en/