2017年06月05日更新 エボラ出血熱の発生- コンゴ民主共和国(更新2)

2017年6月1日付けで、WHOアフリカ事務局からエボラ出血熱への取り組みに関する情報が公表されています。その中から、渡航に関係する項目を取り上げます。詳しくは、原文でお確かめください。

発生の状況および取り組みの状況

WHO、国連、国際支援組織、非政府支援組織、加盟各国は、コンゴ民主共和国北東部Bas Uele(バ・ズエレ州)Likati保健行政地区で発生しているエボラ出血熱の発生を速やかに調査し、対処するために、保健省(Ministry of Health;MoH)への支援を続けています。

2017年6月1日現在、新たに、エボラ出血熱の確定患者、感染の可能性の高い患者、疑い患者が確認されたことは報告されておりません。最後に患者の確認が報告されたのは、2017年5月11日でした。現在、確定患者は2人、感染の可能性の高い患者は3人、感染が疑わしい患者は8人です。

感染が疑わしい患者のうちの2人は、検査初期の段階で、エボラ出血熱へのIgG抗体が陽性でした。IgG抗体の存在は、以前にエボラ・ウイルスと接触機会があったことを示しています。最近の(ウイルス)との接触での感染であることの確認および最終的な分類を行うには、さらなる検査が必要です。

確定患者および感染の可能性の高いとされた患者は、Nambwa(確認患者2人、可能性の高い患者2人)とNgayi(可能性の高い患者1人)から報告されました。疑い患者は、4つの保健行政地区(Nambwa、Muma、Ngayi、Ngabatala)から報告されています。感染の発生は、依然として、Likati保健行政地区に限定されています。6月1日現在、接触者72人に対してエボラ出血熱の徴候や症状の健康監視が行われています。

モデルからの推察では、今後の患者発生のリスクは、ゼロではありませんが、現在のところ低いことが示唆されています。新たに確定患者や感染の可能性の高い患者の発生はなく、(感染発生の可能性は)は日々に減ってきています。現状で想定される展開では、今後30日間以内にさらなる患者の発生がないとする予想(確率)は80%とされています。

感染発生の調査、患者管理、手洗いと衛生環境の整備(WASH)およびバイオ・セーフティ(病原体からの安全行動)、検査および研究、心理社会的な管理、物資(の供給)、情報の伝達といった、国のレベルで設置されるべき7つの対策委員会すべてが、稼働しています。さらに、感染の発生地には対策チームが置かれています。

コンゴ民主共和国におけるこのエボラ出血熱の感染発生は、2017年5月11日に保健省からWHOに通知されました。2017年4月下旬以降は、これまでに確認できていない病態の集団発生や死亡(事例)が報告されています。Likati保健行政地区は、コンゴ民主共和国国内2つの州と接し、中央アフリカ共和国とも接しています。感染の発生している地域は遠隔の地にあり、通信手段も交通の便も限られています。

現在のリスク・アセスメント

国内レベルでのリスクは、エボラ出血熱が流行したときの影響、遠隔の地にある感染の発生地域、次善の策としての調査活動を含めた医療支援への利用環境への制限などから、高い状態にあります。

  • この地域でのリスクは、中央アフリカ共和国との国境の近さや難民が最近は流入している状況から、中等度の状態にあります。
  • 世界レベルでのリスクは、(この地が)主要な国際的な港湾からは遠く、交通の便が悪いために、低い状態にあります。

リスク・アセスメントは、感染発生の展開や入手できる情報に基づいて、WHOによって再評価されています。

WHOは、現在、入手できている情報に基づく限り、コンゴ民主共和国に対する渡航にも貿易にも制限を適用させないように助言しています。WHOは、国境検問で実施されている措置についての報告を、引き続き注意深く見ていきます。

現在までの取り組み

保健省およびこの国のその他の担当部局を支援するために、省庁を越えた緊急対策チームがLikati保健行政地区に派遣されました。彼らは、感染発生の緊急調査を支援し、感染源となった地域での主要な柱を確立しました。省庁を越えた緊急対策チームは、WHO、INRB(首都キンシャサの国立研究所)、国境なき医師団(MSF)、UNICEF、ALIMA(患者管理や地域社会での教育を補助している野外の非政府機関)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)、世界食糧計画(WFP)、国連人道支援航空サービス(UNHAS)、その他の支援団体などによって構成されています。

WHOは、国に直接的な技術支援および運営の支援を提供し、この感染発生に対して迅速かつ効果的に対処するために(それぞれの)支援組織と協力しながら緊密に取り組んでいます。

IHRの渡航者への対応

現在、WHOは、この流行に関連して渡航および貿易への制限を勧告してはいません。

  • 2017年6月1日現在、9か国(ケニア、マラウイ、ナイジェリア、ルワンダ、南アフリカ共和国、ウガンダ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ)が空港と港湾で入国時に審査を行い、1か国(ルワンダ)では、コンゴ民主共和国への不必要な旅行を控えることの助言が行われています。また、2か国(ケニア、ルワンダ)では、コンゴ民主共和国から入国する乗客、経由してきた乗客に対して、到着時に情報の確認を実施しています。これらの措置は、加盟国の特権の範囲内であり、IHR第43条(2005年)で定められた国際交通を著しく妨げる保健衛生上の追加措置(の主旨)を妨げるものではありません。
  • また、ルワンダは、コンゴ民主共和国で感染の発生した地域から来た発熱した乗客の入国を拒否する措置を執りました。現在、WHOは、この措置の公衆衛生上の根拠や科学的証拠を受け取れるように、ルワンダ当局とともに取り組んでいます。現状では、IHR第43条(2005年)に従えば、国際交通の著しい妨げに該当しています。
  • ナイジェリア当局には、コンゴ民主共和国からの遺体の受取りを拒否し、この措置に関連してケニア航空に対し制裁措置が行われた可能性のあることへの確認が要請されています。

出典

AFRO/WHO. External Situation Report. 1 June 2017
Ebola Virus Disease: Democratic Republic of the Congo
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255621/1/EbolaDRC-02062017.pdf?ua=1[PDF形式:1,855KB]