2017年06月07日更新 中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)の発生報告(更新8)

 2017年6月6日に公表された世界保健機関(WHO)の情報によりますと、2017年4月21日から5月29日にかけて、サウジアラビアの国際保健規則(IHR)国家担当者から、新たに死亡者6人を含む中東呼吸器症候群(MERS)の患者25人が報告されました。また、5月16日には、アラブ首長国連邦(UAE)の国際保健規則(IHR)国家担当者から、新たなMERS-CoV患者2人が、5月23日には、カタールの国際保健規則(IHR)国家担当者から、新たなMERS-CoV患者1人が、それぞれに報告されました。

患者の詳細情報

 患者に関する情報は、下記のリンク先から閲覧することができます。
 MERS-CoV cases reported between 21 April and 29 May 2017 xlsx, 31kb

サウジアラビア
 2017年4月21日から5月29日にかけて、死亡者6人を含むMERS-CoV患者25人が報告されました。この間に報告された患者25人のうち12人は、3か所で同時に発生した、全く関連のないMERS-CoV患者の集団感染が関係していました。保健省は、それぞれの患者とその接触者について評価し、さらに、人と人との間での感染伝播を限定させるために対策を講じています。 3か所での集団感染の詳細は以下のとおりです。

集団感染1
 
集団感染の患者は、Assir(アスィール州)Bisha(ビーシャ市)の病院で確認されました。この集団感染の患者は、次のとおりです。
1. 最初に発見された死亡患者:71歳 男性で、5月9日に報告されました。
2. 二次感染による患者-医療に従事していた接触者:54歳 男性で、5月13日にWHOに報告されました。
3. 二次感染による患者-医療に従事していた接触者:57歳 男性で、5月17日にWHOに報告されました。

集団感染2
 集団感染の患者は、Riyadh(リヤド州)リヤド市の病院で確認されました。この集団感染の患者は、次のとおりです。
1. 最初に発見された死亡患者:55歳 男性で、5月14日にWHOに報告されました。
2. 二次感染による患者-医療に従事していた接触者:33歳 男性で、5月15日にWHOに報告されました。
3. 二次感染による患者-医療に従事していた接触者:30歳 女性で、5月15日にWHOに報告されました。
4. 二次感染による患者-医療に従事していた接触者:25歳 女性で、5月16日にWHOに報告されました。
5. 二次感染による患者-医療に従事していた接触者:38歳 男性で、5月17日にWHOに報告されました。

集団感染3
 
3か所目の集団感染は、リヤド州Wadi Aldwaser市の病院で確認されました。この集団感染は、すべての接触者の健康監視期間に基づいて完了すると見込まれています。この集団感染に伴い、新たに確認された4人の患者は以下のとおりです。全体で、5人の患者はこの集団感染に関係しています。感染の発端となる患者は55歳 男性で、以前4月19日にWHOに報告されていました(2017年4月27日のDisease Outbreak Newsを参照)。
1. 二次感染による患者-家族内接触者:50歳 男性で、4月21日にWHOに報告されました。
2. 二次感染による患者-家族内接触者:58歳 男性で、4月21日にWHOに報告されました。
3. 二次感染による患者-家族内接触者:31歳 男性で、4月21日にWHOに報告されました。
4. 二次感染による患者-家族内接触者:26歳 男性で、4月26日にWHOに報告されました。

アラブ首長国連邦(UAE
 2017年5月16日に、アラブ首長国連邦からMERS-CoV感染者2人が報告されました。何れの患者もAl Ain(アル・アイン)市から報告され、2人とも、ヒトコブラクダとの直接接触へのつながりが報告されました。1人目の患者は、69歳 男性の農家を営む男性で、病院で重篤な状態にあります。2人目の患者は、45歳の肉屋を営む男性で症状はなく、1人目の患者の接触者調査によって発見されました。接触者の追跡とヒトコブラクダの調査が進められています。

カタール
 2017年5月23日に、カタールからMERS-CoV患者1人が報告されました。この患者は、首都ドーハに住む29歳 男性で、ヒトコブラクダとの頻繁な接触機会が報告されています。現在、保健衛生および動物資源を管轄する省庁に属する感染症対策および健康維持の部局が、患者の調査および接触者の追跡を行っています。

 WHOは、2012年9月以降、世界中で少なくとも699人の関連する死亡報告を含めて、検査で確定された1,980人のMERS-CoV感染の患者報告を受けています。

WHOによるリスクアセスメント

 MERS-CoVは、致死率が高い重症感染症を引き起こし、人から人への感染力を示してきました。これまでのところ、人から人への感染が見られたのは、主に医療の現場での発生でした。

 新たに加えられた患者の事例によって、全体的なリスク評価が変わることはありません。WHOは、中東から新たなMERS-CoV感染患者が報告されることや、動物やその家畜生産物(例えば、ヒトコブラクダとの接触後)もしくは感染源となる人(例えば、医療施設内で)と接触することで感染した可能性のある人々が他の国に感染輸入されることはあり得ると考えています。WHOは、疫学的な状況の監視を続け、入手できる最新の情報に基づいてリスク評価をおこなっています。

WHOからのアドバイス

 WHOは、現状および利用可能な情報に基づいて、加盟国すべてに対して、急性呼吸器感染症に関するサーベイランスを継続し、また、いかなる異常な症状を示す患者についても注意深く調査することを勧めています。

 感染予防と制御の対策は、診療施設においてMERS-CoVが拡がる可能性を防ぐために重要です。他の呼吸器感染症と同様に、MERS-CoVの初期症状は非特異的なため、通常、早い時期に患者をMERS-CoVと診断できるものではありません。したがって、医療従事者は、診断にかかわらず、すべての患者に対して常に一貫した標準感染予防対策を適用する必要があります。急性呼吸器感染症の兆候を呈している患者の治療にあたる場合には、標準感染予防対策に加えて、飛沫予防対策を行うことも必要です。また、MERS-CoV感染の可能性がある患者、あるいは確定診断された患者の治療にあたる場合には、接触予防対策および眼の防護策を追加すべきです。さらに、エアロゾル(微粒子)が発生するような処置を行う場合には、空気感染の予防対策を行う必要があります。

 今後、MERS-CoVに関して解明が進むまでは、糖尿病、腎不全、慢性肺疾患、免疫不全のある人は、MERS-CoV感染で重篤化するリスクが高いと考える必要があります。したがって、これらの人は、ウイルスの存在する可能性がある農場、市場あるいは家畜小屋のある地域を訪れる場合、動物に近づくこと、特にラクダと濃厚接触することを避けなければなりません。動物に触れる前、触れた後には必ず手洗いを行い、病気の動物との接触を避けるという一般的な衛生習慣をしっかりと守るべきです。

 食品に対する衛生習慣に注意するべきです。ラクダの生乳あるいは尿を飲むこと、また、調理不十分の肉を食べることは避けるべきです。

 WHOは、この事態に対して入国時に特別なスクリーニング検査を行うことをアドバイスしてはおらず、現在のところ、如何なる渡航や貿易に対しても(これを)適応させることを勧めてはいません。

出典

WHO. Disease outbreak news, Emergencies preparedness, response. 6 June 2017
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) - Saudi Arabia, United Arab Emirates, and Qatar
http://www.who.int/csr/don/06-june-2017-mers-saudi-arabia-united-arab-emirates-qatar/en/