2017年06月26日更新 ワクチン由来ポリオの発生- コンゴ民主共和国

アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第24週(6月10日-16日)]が公表されました。ここでは、今週、新たに報告されたコンゴ民主共和国でのワクチン由来ポリオの発生について取り上げます。

ワクチン由来ポリオの発生状況

コンゴ民主共和国保健省は、2017年5月17日に、ワクチン由来ポリオウイルスの発生をWHOに報告しました。Haut Lomami(上ロマミ州、2人)およびManiema(マニエマ州、2人)で、急性弛緩性麻痺(AFP)患者4人がワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)に陽性と判明しました。 Haut-Lomami州では、ButumbaとMalemba Nkuluの街でポリオ患者が発見されました。1人目のButumbaのAFP患者は2017年2月20日に麻痺を発症し、2人目のMalemba NkuluのAFP患者は2017年3月8日に麻痺を発症しました。

これとは別に、(全くの)無関係に、Maniema 州Kundaの街からもワクチン由来ポリオウイルス2型(VDPV2)がAFP患者から分離されました。この患者は、2017年3月26日に麻痺を発症しました。ここで特定されたウイルスの遺伝子型では、Sabin 2(ワクチン)からの7つの遺伝子変異が示されました。(これらは)新しく出現した突然変異であることが示唆されています。この病気の調査地域の拡大と調査の強化を行い、調査を継続する中、Kundaの街で、VDPV2患者と接触した健康人および2017年4月18日に麻痺を発症した別のAFP患者からもSabinワクチン(由来)ポリオウイルス2型が分離されました。

Tanganyika(タンガニーカ)州Ankoroの街では、2017年4月1日に麻痺を発症したワクチン由来ポリオウイルス1型の患者が確認されました。この患者は、ポリオの予防接種を一度も受けたことのないKyofe保健行政地区の難民キャンプに住む32か月の男児でした。この患者の血液検体が収集され、さらなる検査のために中央検査施設に送付されています。

2017年6月9日現在、死亡例を伴わないワクチン由来ポリオウイルス2型患者4人とワクチン由来ポリオウイルス1型患者1人が報告されています。これまでのところ、新たに確認された患者は報告されていません。

公衆衛生上の取り組み

  • WHOと世界ポリオ撲滅イニシアチブ(GPEI)の加盟組織からの支援を受けた保健省は、住民全体の免疫能応答レベルの評価を含めたリスク分析を実施しています。
  • 地域に潜在する新たな患者の積極的な調査など、AFPの調査活動が強化されています。
  • 経口ポリオワクチン2型の単価ワクチンを用いた第1回目の(感染対策)ワクチン接種キャンペーンが、2017年6月22日から24日まで、Maniema、Haut-Lomami両州で計画されています。キャンペーンでは、20の保健行政地区(Haut-Lomami州12保健行政地区513,820人、Maniema州8保健行政地区276,076人)の5歳未満の子ども789,896人が対象とされています。第1回目のキャンペーンでは、合計908,400接種分のワクチンが確保されています。
  • 第2回目の(感染対策)ワクチン接種キャンペーンは、2017年7月に予定されています。このキャンペーンは、感染の発生した地区と近隣する保健行政地区に重点が置かれています。
  • 出張での接種サービスや予防接種を全く受けていない子どもの積極的な探索など、感染の発生した州での定期予防接種サービスも強化されています。

発生状況への認識

コンゴ民主共和国では、2011年以降、野生型ポリオウイルスの患者は報告されていません。しかし、現在、ワクチン由来ポリオウイルスが発生しています。この感染の伝播を速やかに終息させるために、ポリオワクチンをすべての子どもたちに行き渡らせ、この病気の調査活動を強化する取り組みをいっそう推し進めることが重要です。2回の大規模な予防接種キャンペーンの実施は、予想される(接種)成績(ワクチン接種対象者の少なくとも95%)が達成されれば、現在の感染の発生を阻止するには十分なものとなるでしょう。しかし、定期予防接種でのポリオワクチン注射剤の接種率を向上させ、AFPへの調査活動を強化することが、さらなる感染の発生を防ぎ、患者を発症後すぐに発見し対処するために不可欠です。

国内ではポリオ撲滅に向けた大きな取り組みが行われていますが、依然として、脆弱な部分が存在します。感染が発生した保健行政地区の中には、AFPへの調査活動も定期予防接種も両方の成績が不足しているところがあります。何人ものAFP患者(Maniema州のAFP患者の38%)が予防接種を適切に受けていませんでした。

ワクチン由来ポリオウイルスの発生は、ポリオ予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会(SAGE)によって予想され、その管理に対する勧告が行われました。大規模な2回の予防接種キャンペーンの実施は、現在の感染発生を阻止することに十分でなければなりません。長期にわたる予防戦略には、ポリオワクチン注射剤による定期予防接種と、大規模な予防接種のための2価経口ポリオワクチンの使用、両方の強化が行われなければなりません。ポリオに対する予防接種と衛生上の対策の実施は、この病気の予防には十分なものです。

出典

AFRO/WHO.Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 16 June 2017
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.3. Week 24: 10 - 16 June 2017.
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255720/1/OEW24-101662017.pdf?ua=1[PDF形式:4.4MB]