2017年07月04日更新 E型肝炎の発生- ナイジェリア

 アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第25週(6月17日-23日)]が公表されました。ここでは、今週、新しく報告に加わった記事のうち、隣国ニジェール、チャドに続き、ナイジェリアからも報告されたE型肝炎の状況について取り上げます。

E型肝炎の発生状況

 2017年6月18日に、ナイジェリア連邦保健省は、北東部ボルノ州でE型肝炎が発生したことをWHOに報告しました。5月3日に、Mobbor地方自治区(LGA)Damasakの街で急性黄疸の症状を呈する患者12人が集団で発見されました。この街は、E型肝炎の流行が続くニジェールと国境を接しています。感染の発端となる患者9人から採取された生体検体のうち4本がE型肝炎ウイルスに陽性と判明しました。検査は、ラゴスのウイルス研究所で行われ、感染が発生していることが確認されました。この感染の発生に関連して、カメルーンと国境を接するNgala地方自治区(LGA)からはE型肝炎疑い患者41人が報告されました。6月17日までに、死亡者はでていませんが、Damasakの街とNgala地方自治区で、合計53人のE型肝炎疑い患者が報告されました。これらの患者のうち、少なくとも3人が妊娠女性で、感染者の年齢幅は、6歳から35歳でした。DamasakとNgalaからは、合計18本の生体検体が得られ、さらなる分析のために、(現在)Lagos(ラゴス)に送られています。詳しい感染の発生への調査、およびリスクの評価が実施されていますが、十分に大きな規模でE型肝炎の流行が確立されています。

 E型肝炎の発生は、避難民や帰還住民からも発生しています。Damasakはボルノ州で3番目に大きい街です。2016年7月に(反政府勢力から)奪還され、2017年1月までに避難民の帰還が始まりました。現在、およそ9万人の帰還住民が再移住してきていますが、多くは社会サービスの利用環境が限られた非定住集落への移住です。

公衆衛生上の取り組み
・WHOと加盟国は、人道支援への対策全体の枠組みの中で、E型肝炎に対処する国と州政府に対し、技術支援、物資と財政の支援を行っています。
・2017年5月に、WHO、UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)、IOM(国際移住機関)、NRC(ナイジェリア鉄道公社)、カナダ大使館の共同調査チームが派遣されました。このチームは、積極的な患者調査体制など、活発な調査活動を確立させるために、医療従事者や地域の活動員たちと情報交換を重ねています。
・医療従事者は、患者の診断定義の適用など、疾病調査の処理能力を向上させるべく訓練を受けています。
・ナイジェリア赤十字は、衛生環境の整備の推進や井戸の開設など、WASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動などを実施しています。
・地域ボランティアと地域の各リーダーは、地域レベルでの予防活動と感染制御への活動を行うことに携わっています。
・患者の管理、主に対症療法が、関係者の支援を得て、地域の医療施設で行われています。
・国境での帰国者のスクリーニング検査体制を強化する取り組みが続けられています。

発生状況への認識

 今回の北東部ボルノ州でのE型肝炎の流行は、この国の北部で発生している人道危機(内戦)の状況の中で発生しています。この流行は、徐々に治安状況が改善してきたことによって、チャド湖盆地での人々の移動が増えてきたことで発生しています。ニジェールDiffa(ディファ)州やチャドSalamat(サラマト)州では、E型肝炎の流行が続いています。そのため、この地域内での人々の移動の増加は、この病気が国境を越えて伝播する環境を作り上げました。ナイジェリアの北東部、チャドとニジェールの南部、カメルーンの北部に位置する地域は、安全な飲み水の利用環境が限られており、これに伴い、外部での排便習慣によりトイレ普及率は低い状態です。これらのことが、ナイジェリアやこの地域に、現在、E型肝炎が発生している主な要因となっています。E型肝炎は、国内避難民(IDP)や難民施設で急速に拡がることが知られています。

 最適とはいえない調査能力や、避難民や帰国民における限られた利用という、現行の保健衛生環境を考えると、この流行の本当の拡大規模は過小評価されている可能性があります。そのため、ナイジェリアおよび近隣諸国においてE型肝炎が引き続き伝播していくリスクは高いようです。この影響に対して、この地域に潜在するE型肝炎の深刻な流行に対処するために、ナイジェリア、ニジェール、チャド、カメルーンなどこの地域を共有する国々で(感染)対策を作成することが急務となっています。

出典

AFRO/WHO. Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 23 June 2017
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.2. Week 25: 17 - 23 June 2017
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255766/1/OEW25-172362017.pdf?ua=1