2017年07月06日更新 クリミア・コンゴ出血熱の発生- モーリタニア

 アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第25週(6月17日-23日)]が公表されました。ここでは、今週、新たに報告されたモーリタニアでのクリミア・コンゴ出血熱について取り上げます。

クリミア・コンゴ出血熱の発生状況

 2017年6月6日に、セネガル保健福祉省は、モーリタニアNouakchott(ヌアクショット)から搬送されて来た患者からクリミア・コンゴ出血熱が確認されたことをWHOに報告しました。この患者は、以前、第19週に週報で同じ街から報告されたクリミア・コンゴ出血熱患者2人とは関係なく、関連性もありません。今回の患者は、39歳 女性で、ヌアクショットのTayaretに住んでいました。彼女の症状は、2017年5月27日に、発熱、上腹部痛、直腸からの出血、背部痛で始まりました。彼女は、当初、陸軍病院に4日間入院し、そこで、マラリアを念頭においた治療が行われ、退院しました。しかし、症状がその後も続き、Nejahの民間診療施設を受診しました。そこでは、輸血を必要とする程の重度の血小板減少と貧血の症状を示していました。(その後)輸血できる施設力が限られていることから、この患者は、6月3日に、セネガルのダカールにあるDe Fannセンター病院 (HCDF)に送られました。患者は、家族2人と運転手といっしょに個人の車で移動しました。到着時には、患者は歯肉からの体液の滲出、点状の紫斑、斑状の出血性紫斑、注射部位からの出血など、出血の症状を呈し、直ぐに隔離されました。クリミア・コンゴ出血熱の診断は、6月3日と5日に採取された検体によって、ダカール・パスツール研究所での血清検査およびPCR法検査で確認されました。

 クリミア・コンゴ出血熱の確認により、セネガルとモーリタニアでは、直ちに公衆衛生上の調査と活動が始められました。病院と診療施設の医療スタッフを含む15人の接触者が確認されました。これまでのところ、さらなる感染伝播の証拠は見つかっていません。可能性のある感染源への調査により、肉や解体処理した動物を購入するために、家族は頻繁に地元の家畜市場を訪れていたことが分かりました。

公衆衛生上の取り組み

・セネガル保健福祉省は、対策の調整を図るために、健康への緊急対策センターを立ち上げました。ダカール・パスツール研究所とWHOからの支援を受け、患者についてのさらなる情報の収集とリスクの評価のために調査活動が行われました。
・ダカールの病院の医療従事者には、個人用防護具の取り扱いを含めた感染予防・制御(IPC:Infection Prevention and Control)の実施への説明が行われました。
・モーリタニアでは、「One Health」(人、家畜、野生動物の健康は一体とする考え方)による緊急対策が策定され、実行されています。動物と人の健康に関する合同調査が、ヌアクショットにある大型の大畜産市場と屠殺施設の2か所で行われ、ウイルス伝播のリスク分布地図が作製されています。
・調査活動の強化、特にモーリタニアと国境を接する地域の行政府職員や開業の医師などに対する調査活動を強化するために、政府としての注意事項が作成されました。
・医療従事者の(感染予防への)訓練、基本的な動作手順の再配布、国立検査施設へのELISA検査(検体)の提供、基本的なIPC手順の強化など、現地での(感染への)意識向上と患者管理の能力向上のために、取り組みが計画され、準備が進められています。

発生状況への認識

 セネガル政府の担当当局は、新たなクリミア・コンゴ出血熱の感染輸入例を報告しました。今回の患者は、ヌアクショットで報告されたこれまでの患者2人が住んでいた場所から20km以上も離れているために関係がなく、2つの事例には全く疫学的にも明らかな関連性はありませんでした。短期間で3人の患者が発生したことは、モーリタニアでクリミア・コンゴ出血熱の脅威がかなり大きいことを示しています。2003年には、この国は、ヌアクショットで大規模なクリミア・コンゴ出血熱の流行を経験し、そのときには、疑い患者が119人(確定患者24人)と死亡者が29人に上りました。患者のほとんどは、感染した家畜との直接接触によるものでした。

 今回のクリミア・コンゴ出血熱の事例に対応して、モーリタニアの保健省および家畜省は、この病気の規模を完全に把握するために、合同調査とリスク評価を開始しました。この評価の調査結果は、多くの人から待たれています。それでも、「One Health」(人、家畜、野生動物の健康は一体とする考え方)に基づく、現地での有効な予防と感染制御への対策は、実施される必要があります。また、これら最近の出来事は、現地の医療従事者がクリミア・コンゴ出血熱やほかのウイルス性出血熱を疑うことへの高い関心を維持し、速やかに隔離、検査による調査および治療を行うことの必要性を極めて強く示しています。患者の発見、調査、確認、管理のために、現地の対応能力を強化することへの直接の取り組みが必要とされます。クリミア・コンゴ出血熱は、人畜共通の感染症で、ダニの刺咬によって、または動物の解体処理中や解体処理直後の動物組織との接触によって、人に感染します。通常、家畜の感染は明らかな症状を示さないため、よく管理された家畜群以外でこの病気を防御することは難しいかもしれません。そのため、(感染)予防は、頻繁に動物と接触する人では接触機会を減らすこと、また、病院内での感染を予防するためには基本的な感染予防対策を実践することなど、対策への関心の向上に重点が置かれます。モーリタニアでは、One Healthの考え方に基づく動物と人の健康分野の緊密な連携の強化が必要です。

出典

AFRO/WHO. Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 23 June 2017
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.5. Week 25: 17 - 23 June 2017.
http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/255766/1/OEW25-172362017.pdf