2017年07月13日更新 E型肝炎の発生- ナイジェリア(更新)

 WHOは、2017年7月12日付けで、ナイジェリアで発生しているE型肝炎についての情報を公表しました。

E型肝炎の発生状況

 ナイジェリア保健省は、2017年6月18日に、同国北東部地域でのE型肝炎の発生をWHOに報告しました。感染の発端となった患者は、2017年5月3日に、ニジェールとの国境近くの街Damasak(ダマサック)で発見されました。患者からは検体が採取され、確認のために検査施設に送付されました。患者は、後に、カメルーンと国境を接するBorno(ボルノ)州の地方自治区(LGA)の1つNgalaで報告されました。2017年7月2日の時点で、確定患者と疑い患者を合わせて146人が報告され、21人が確定診断されました。

 Ngalaでは、死亡者2人(致死率= 8%)含めて、妊娠女性25人(21%)が報告されました。患者は、3つの地方自治区(LGA)から報告されました。内訳は、Ngala(112人)、Mobbor(19人)、Monguno(14人)でした。E型肝炎の患者数は、6月19日から7月2日までに報告された患者29人を含めて、Ngalaで最も多くが報告されました。さらに診断を進めるために、検体27本がラゴスのウイルス検査室に搬送されました。採取され、検査された検体のうち、21人が陽性(Ngalaで10人、Mobbarで7人、Mongunoで4人)、6人が陰性と判定されました。(また)検体23本が採取され、検査の結果を待っている状態です。

 ナイジェリア北東部は治安状態の悪い状況となっており、このE型肝炎の発生は、この地域での人道危機が長引くことによって、急速に拡大し、持続する可能性があります。ナイジェリアにおける危機は、8年間も続いており、その結果、190万人が国内避難民となりました。この地域は、チャドやニジェールと国境を接する地域で、難民キャンプの住民や避難民が激しく行き来することに直面しています。また、近隣諸国からの帰還難民の新たな(人の)波が、現在の人道危機への対応能力を圧倒しています。帰還難民は2017年1月から街に入り始め、赤十字国際委員会(ICRC)と移民局によれば、これまでで、この街に90,000人の帰還難民がいると推定されています。街には、放浪者、街に定住している先住民族との地域の繋がりを持たない人たちがいる非公式キャンプ地が1か所あります。そのため、現在でも脆いはずの社会システムを圧倒するような(人口の)過密状態が起こっています。必要となる水、上下水道の衛生環境、医療保健サービスへの利用環境が不足しており、この病気が爆発的に増える高い可能性があります。

公衆衛生上の取り組み

 この対策に協力する支援組織として、WHO、国連児童基金(UNICEF)、Oxfam(オックスフォード貧窮者救済機関:WASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動を代表する組織)、国境なき医師団(MSF)、FHI 360(家族と健康のための国際組織)、赤十字国際委員会(ICRC)、北東部地域イニシアチブ(NERI)などが参加しています。この流行への対策活動には、次のようなものがあります。
・WHOとMSFは、患者に対して無料で治療・管理を支援しています。これには、患者の入院、医薬品の調達、保健医療の人員なども含まれています。症状のある患者の管理は、MSFの支援を受けて、自治区レベルで行っています。
・医療保健施設の疫学調査体制は、現地の支援組織からの支援を受けて、構成されています。
・WHOやその他の支援組織からは、技術支援が提供されています。
・2017年6月15日までに、WASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動は、現時点での水源の評価、地図の作成、水を塩素消毒する迅速な対応を確立させました。
・政府保健省、ナイジェリア疾病管理センター、水と環境の官庁の間で、多岐にわたる解決方法の必要性が強調され、調整が図られています。
・地方自治区にあるモスクや公共の場での保健教育への啓蒙や呼びかけを通じて、公衆衛生への意識向上が図られています。また、現地の医療保健スタッフは、8つの地域ボランティアの活動員(VCM)、医療保健スタッフ、MSF、ユニセフ、およびFHI 360とともに、啓蒙活動を行っています。

WHOのリスク評価

 ナイジェリアは、国際的に、東にチャドとカメルーン、北にニジェール、西にベナンと、4つの国と国境を接しています。ニジェール、カメルーン、チャドと国境を接するナイジェリア北東部は、不安定な地域でもあります。E型肝炎の発生は、この地域で発生しています。

 この地域は、隣国、チャドとニジェールでのE型肝炎の発生によって特徴づけられます。現在も続く人道危機と政情不安、大規模な国内避難者(IDP)と難民、安全な飲み水の利用環境の不足などが、この病気の拡大につながっています。また、過去に暮らしていた地域に戻ってくる避難民の数が増えています。さらに、感染が国境を越える可能性、それに続くニジェールや他の近隣諸国からの感染拡大へのリスクの増大も検討される必要があります。多くの難民キャンプとIDPキャンプは過密状態にあり、衛生環境が悪く、E型肝炎の発生リスクが高まっています。そのため、国内レベルでのリスクは高い状態です。

 地域レベルでのリスクは、ナイジェリア北東部の人道危機を取り囲む国々で、中等度の状態です。国際的なレベルでのリスクは低い状態です。

WHOからのアドバイス

 WHOは、家庭用浄水技術を使用するなど、さまざまな方法で、安全な飲料水への利用環境と品質の改善を勧めています。感染の発生している地域では、水質を定期的に調査する必要があります。

 また、WHOは、人々の老廃物を適正に取り扱い、処理することで、家庭の衛生環境を改善し、安全で衛生的な食品の準備を向上させることを勧めています。野外でのトイレ習慣に取り組むためには、キャンプ内でトイレの数を増やす必要があります。

 現在、行っている介入は、難民と国内避難民(IDP)の居住状況を改善し、支援者が医療保健施設と医療支援などを支えながら、出産前の妊娠女性の医療相談を確立するなど、リスクの高い人々を対象に行う必要があります。

 疑い患者の迅速な確定診断を向上させるために、現地と国の中央検査施設の対応能力を向上させる必要があります。現在の流行を管理するには、チャド湖周辺地域への対策を通じて、国境を越えた介入が強化される必要があります。

 WHOは、現在の状況において入手できている情報に基づく限り、ナイジェリアに対して渡航や貿易に制限を加えることは勧めてはいません。

出典

WHO. Disease Outbreak News, Emergencies preparedness, response. 12 July 2017
Acute hepatitis E - Nigeria
http://www.who.int/csr/don/12-july-2017-hepatitis-e-nigeria/en/