2017年07月18日更新 E型肝炎の発生- チャド、ニジェール、ナイジェリア

 アフリカにおける感染症の発生状況の週報[第27週(7月1日-7日)]が公表されました。ここでは、以前に報告されたチャド、ニジェール、ナイジェリアのE型肝炎の状況がまとめて報告されていましたので、これについて取り上げます。

E型肝炎の発生状況
 チャド湖盆地周辺の3か国、チャド、ニジェール、ナイジェリアでは、E型肝炎が同時発生しています。チャドでは、2016年8月にSalamat(サラマト州)で発生が始まりました。第26週(2017年7月2日迄の週)に、新たに疑い患者23人が報告され、先週の19人と比べて増加しました。これらの患者は、Aboudeia(15人)、Am Timan North(5人)、Am Timan South(2人)、Moraye(1人)の4地区で発生しました。2017年7月2日の時点で、死亡者18人(致死率1.1%)を含めて、疑い患者1,631人が報告されました。このうち、77人が入院しました。妊婦が20人入院しています。これまでに、98検体でE型肝炎ウイルスが陽性でした。

 ニジェールでは、2017年1月2日にE型肝炎患者が初めて確認されました。その発生は、その後、流行は第19週にピークを迎え、それ以降、新たな患者の発生は急速に低下しました。しかし、第25目(2017年6月25日迄の週)に、新たに疑い患者66人が報告されました。これは、患者数が増加したことを反映しています。特にDiffa(ディファ)州で患者が増加しています。2017年6月29日の時点で、死亡者346人(致死率3.1%)を含めて、疑い患者1,096人が報告されました。患者の大部分はDiffa(60%)、次いでBosso(21%)、N'Guigmi(18%)からでした。一方、GoudoumariaとMainé Soroa地区でも、散発的に患者が報告されています。最も感染の発生した年齢層は、15〜39歳の青年と成人です。患者の60%が女性で、うち85%が15〜49歳(妊娠可能年齢の女性)です。これまでに、PCR検査法によって検査された検体649本のうち、439本(68%)でE型肝炎ウイルスが検出されました。

 ナイジェリアはE型肝炎の発生が報告された最も新しい国で、2017年5月3日に、ニジェールとの国境沿いの街Damasakで確認されました。6月30日の時点で、Ngala(112人)、Mobbor(19人)、Monguno(14人)の3つの地方自治区で、疑い患者146人が報告されました。死亡者2人(死亡率8.0%)を含めて、Ngalaでは女性25人が感染しました。これまでに、検体21本でE型肝炎ウイルスが確認されています。この流行は、この地域に現在も発生している人道危機や国境を越えた人口の移動のために、急速に拡大する可能性があります。

公衆衛生上の取り組み
・それぞれの国の保健省は、WHOと支援組織からの支援を得て、これらの流行への取り組みの調整、調査、対策を続けています。チャドでは、WHOは、WASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動と社会活動の専門家1人ずつを配置しました。ニジェールでは、2017年6月17-24日に、対応能力の評価が実施されました。ナイジェリでは、NCDC(ナイジェリア疾病対策センター)、WHO、および支援組織が、人道支援対策の全体的な枠組みの中で、州政府および連邦政府に対して、技術、物資、財政の支援を行いました。
・WASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動の実施は、すべての国で続けられています。チャドでは、飲料水の(消毒)処理と給水によって、安全な飲み水の利用環境を向上させる取り組みが続けられています。ナイジェリアでは、Sayam、Kindjandi、Assanga、Kablewaの難民キャンプと村々で、安全な飲み水の調査、水源の消毒と塩素処理、塩素錠剤の支給、家庭の貯水容器の消毒が進められています。
•主な医療支援としての患者管理は、現地の医療保健施設が支援組織からの支援を得て提供しています。症状のある女性(特に妊婦)は優先的に取り扱われます。チャドでは、国境なき医師団(MSF)が医薬品やその他の必要物品を供給することでAm Timam病院への支援を続けています。ナイジェリアでは、Ngalaの国境なき医師団(MSF)によって、E型肝炎に感染した女性を治療するために、治療病棟が設立されました。また、UNICEF診療所も作られました。
・すべての地域で、黄疸が疑われる患者から検体を採取しています。ナイジェリアでは、担当当局が、移動検査施設の手配の可能性を含めて、検査処理能力を向上させる体制の構築を模索しています。
・地域社会での注意喚起とリスクへの情報伝達活動が、一般的な地域の広報、複数の(メディア)チャンネル、その他さまざまな体制により、への予防メッセージを普及しながら、引き続き、すべての国で強化が行われています。

発生状況への認識
 チャド湖周辺諸国でのE型肝炎の同時発生は、(安全でない水源に頼らざるを得ない感染の発生した地域社会での)安全な飲み水の利用環境が限られ、衛生環境が不十分で、糞便からの感染伝播のサイクルが永続的に続いていることが、主な原因です。E型肝炎は、国内避難民や難民の施設で急速に伝播することが知られており、これらの流行は、実際に人道危機の中で発生しています。治安の不安定な状況は、地域全体で人々を流動化させています。国内避難民や難民帰還者の自由な移動が各国間でのウイルスの拡散を促進しており、担当当局は、新たに感染症を予防する最初の手段として、感染の発生地全体でWASH(健康/水と衛生の環境を整備する)活動を確立するために、迅速に対応することが必要とされています。このためには、国境を越えた国家間の強固な協力とともに、国際的な公衆衛生の(支援)組織からの強力な技術と財政の支援が必要とされます。
 一般に、E型肝炎ウイルスへの感染は、通常の免疫が保たれている人では、致死率は低く(0.1〜0.3%)、患者自身の力で治癒します。しかし、個別に、妊娠第3期の女性は、劇症化の影響を受けやすくなります。調査体制は、これらの流行の実際の規模を過小評価している可能性があります。妊娠女性および妊娠可能年齢の女性にみられるこの病気への歪な脅威は問題です。劇症肝炎の患者には、入院が必要であり、症状のある妊婦にも(入院を)検討すべきです。E型肝炎は、臨床的に他の形態のウイルス性肝炎と区別がつかないため、検査施設の対応能力の強化(特に、ナイジェリア・ボルノ州での強化)が重要です。

出典

AFRO/WHO. Outbreaks and emergencies updates, Programmes. 7 July 2017
Weekly Bulletin on outbreaks and other emergencies. P.4. Week 27: 17 - 23 June 2017
http://reliefweb.int/report/democratic-republic-congo/who-afro-outbreaks-and-other-emergencies-week-27-1-7-july-2017-data