2017年07月26日更新 アメリカ大陸における結膜炎の流行(更新)

2017年7月25日付で、汎米保健機構(PAHO)より、結膜炎の流行への注意喚起が行われました。

アメリカ大陸における結膜炎の発生状況

2017年第29週の時点で、アメリカ大陸の13つの国と地域(バハマ、ブラジル、コスタリカ、ドミニカ、ドミニカ共和国、グアドループ、マルティニーク、メキシコ、パナマ、セントルシア、サン・マルタン、スリナム、タークス・カイコス諸島)で、結膜炎患者の増加が報告されています。

バハマでは、2017年第18週から第23週にかけて、結膜炎患者が合計で240人報告されました。これは、2016年の同じ期間に報告された患者数187人と比べて、28%増加していました。

ブラジルでは、2017年第26週に、アマゾナス州から報告された患者に加えて、ロンドニア州Porto Velho(ポルト・ヴェーリョ)行政地区からも、結膜炎患者の増加が報告されました。検査された検体からは、アデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルスに陽性反応がでました。2017年開始以降、第27週には、サンパウロ州Fernandópolis(フェルナンドポリス)行政地区で、結膜炎患者325人が報告されました。第26週に報告された患者数は49人でした。2017年第29週には、サンタ・カタリーナ州Santiago do Sul(サンチアゴ・ド・スー)行政地区で結膜炎患者40人に及ぶ集団感染が報告されました。ほとんどが学童期の患者でした。

コスタリカでは、Puntarenas(プンタレナス)州Garabitoカントン(州の下の行政単位)で結膜炎患者の増加が、IHR担当者によりPAHO/WHO に報告されました。2017年第24週から第29週にかけて、結膜炎患者が累積で1,559人報告されました。最も患者数の多い年齢層(40%)は、10-19歳の309人と30-39歳の307人でした。Garabitoカントンの街Herraduraでは、人口1万人あたり834人となり、最も高い罹患率が報告されました。次いで、Jacó Centro、Quebrada GanadoQuebrada Amarilla、Tárcolesの街で、人口1万人あたり300人から700人の間でした。分析検査された検体では、7本がエンテロウイルスに陽性となりました。

ドミニカでは、2017年5月から6月にかけて、7つの保健行政区域で結膜炎の発生があり、IHR担当者によりPAHO/WHO に報告されました。患者はすべての年齢層で発生していました。保健当局は、健康保健教育、疾病調査、患者の管理を強化しています。

ドミニカ共和国では、2017年第26週の時点で、合計155,148人(罹患率は人口1万人あたり152人)の結膜炎患者が報告されました。2017第22週に報告された患者数が最も多くなっています。医療施設を受診した人々の中では、罹患率が5歳未満の小児で最も高いことが報告されました。結膜炎の流行は、2017第18週に始まり、現在も続いています。

グアドループでは、2017年第20週から第27週にかけて、合計で9,700人の結膜炎患者が報告されています。この2週間(第26週と第27週)には、疑い患者数が著しく増加し、週毎の患者数は、それぞれに1,680人と2,270人でした。人口1万人あたりの累積患者数は65人で、その前の2週間(第24週と第25週)での報告よりも多くなっています。同じ期間に、Gourbeyre地区では、人口1万人あたり187人で最も高い罹患率が報告され、(次いで)Petit CanalとPointe-à-Pitreの地区が続き、1万人あたり182人と154人発生していました。疑い患者の検体14本について実施された検査では、13本がエンテロウイルスに対して陽性であり、5本がコクサッキーA24ウイルスにも陽性でした。

マルティニークでは、2017年第19週から第27週にかけて、合計で15,670人の結膜炎疑い患者が報告されています。この2週間(第26週と第27週)には、疑い患者数は減少し、それぞれに1週間で3,370人と3,130人になりました。人口1万人あたりの累積罹患率は、人口1万人あたり150人でした。報告された罹患率がもっとも高かったのは、Robert地区で人口1万人あたり370人、(次いで、)DiamantとLamentinの地区で人口1万人あたり266人でした。小児の疑い患者で採取された検体で行われた検査では、アデノウイルスとコクサッキーA24ウイルスに対して陽性でした。

メキシコでは、2017年第1週から第26週にかけて報告された結膜炎の累積患者数は、急性出血性結膜炎163人、結膜炎611,850人で、2016年の第26週までに報告された患者数、急性出血性結膜炎59人と結膜炎494,709人と比べて、増加していました。Campeche、Colima、Chiapas、Durango、Nayarit、Sonoraの各州を除き、その他の州では、結膜炎患者の増加が報告されています。

パナマでは、2017年第27週に、Colón州での結膜炎の流行がIHR担当者からPAHO / WHOに報告されました。この流行は、7月1日にPalmas Bellas(パルマス・ベラス)とAchiote(アチェート)地区で始まり、州内の他の地区と保健行政地区のうち少なくとも9地区に広がりました。2017年第29週の時点では、合計で患者411人がColón州から報告されています。最大の患者数(41%)を占める年齢層は、25~34歳(77人)と35~49歳(91人)でした。患者の検体からは、エンテロウイルスが分離されました。

セントルシアでは、2017年第28週に、厚生福祉省から結膜炎患者の増加が報告されました。患者は全国各地の公立および民間の医療サービス機関から報告されました。7月に合計47人が報告されましたが、6月に報告された患者数は2人でした。

サン・マルタンでは、2017年第22週から第27週までに、合計で1,380人の結膜炎疑い患者が報告されました。2017年第26週から第27週にかけて、疑い患者の数が増加を続け、それぞれの週に160人と350人が報告されました。

スリナムでは、2017年第18週以降、結膜炎疑い患者の増加が、IHR担当者からPAHO / WHOに報告されました。2017年第20週には最大数の1,333人が報告されました。スリナムの10地方全てで結膜炎が報告されています。疑い患者から採取された検体セットで実施された分析検査では、コクサッキーA24ウイルスに対して陽性でした。

タークス・カイコス諸島では、保健・農業・福祉省から2017年第23週に、結膜炎患者の増加が報告され、感染伝播を減らすための衛生対策を強化することが住民に呼びかけられました。

キューバでも、患者が報告され、感染の予防および管理への対策が実施されています。 2017年第26週の時点では、7つの州の46行政地区で結膜炎患者が報告され、患者は累計で1,427人となりました。島全体で、最も多くの患者が報告された州は、Guantanamo(グアンタナモ)州で858人、Santiago de Cuba(サンティアーゴ・デ・クーバ)州で359人、Havana(ハバナ)市で154人、Ciego de Ávila(シエゴ・デ・アビラ)州で35人、Tunas(ラス・トゥーナス)州で21人でした。サンティアーゴ・デ・クーバとグアンタナモの各州で採取された検体で実施された検査では、コクサッキーA24ウイルスに対して陽性でした。キューバでは、前回、流行が発生したのは2003年で、全国各地から結膜炎患者171,910人が報告されました。

この地域(アメリカ大陸)の他の国における結膜炎の流行についても調査が行われています。

PAHOからの勧告事項

PAHO/WHOは、この地域のいくつもの国や地域で結膜炎の伝播が増加していることから、加盟国に対し、調査活動を強化し、この病気の拡大を防ぐための感染制御対策の実施を要請しています。

調査活動、予防、接触者の管理と患者の治療に関係する主な勧告事項は、次のとおりです。

疾病調査および疫学調査
•適切に感染制御対策を指示できるように、流行を速やかに探知するための調査活動を強化すること
•感染の発生を確認するため、担当当局に速やかに報告すること
•接触者と感染源を調査し、共通の感染源があったかどうかを判断すること
•確定診断のための検査処理能力を強化すること
•医療従事者には、情報と勧告事項を普及させること

接触者の感染の予防と制御、および速やかな環境整備
•手洗いの促進に加えて、目や呼吸器系分泌物と接触した可能性のある物品を念入りに洗浄し、取り扱うこと
•結膜からの滲出液を清潔に保つこと
•人の密集地を避け、衛生対策を促進するために、患者と接触者への健康教育キャンペーンを実施すること。この教育キャンペーンでは、手や物で目に触ることを避け、頻繁に手を洗うことの必要性が示されています。患者は、その他の家族と食器や身の回りの物品の共有を避ける必要があります。
•プールを適切に塩素消毒すること
•診断および患者を管理する組織を編成すること
•医療施設環境での滅菌の徹底と滅菌基準を確保すること

医療従事者に向けた対策
•患者の治療には必ず手袋やガウンを着用し、個人での感染保護対策を講じること
•結膜炎の可能性がある患者や感染が検査で確認された患者の処置を行った後には、手を洗うこと
•他の患者や職員からの(持ち込まれる)病原体を避けるため、物品や医療機器は消毒すること

患者の管理
•結膜炎の治療は対症的に行われるものであり、圧迫による冷却や血管収縮剤の入った人工涙液など、一般的な対処に限定すべきです。
•塊を伴う細菌感染でもない限り、抗菌剤は使用すべきではありません。抗ウイルス薬の有効性についても明文化されたものはありません。
•ステロイドの入った抗炎症剤は、ウイルスの複製を著しく増加させるため、使用しないでください。抗生物質を含む点眼薬は使用しないでください。
•病気で症状がある患者との接触を制限するために、隔離は行われるべきです。滲出液や分泌物に対する感染予防対策を講じてください。病気で症状がある間は、患者との接触を限定してください。

出典

PAHO.Epidemiological Update. 25 July 2017
Conjunctivitis
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_docman&task=doc_view&Itemid=270&gid=40941&lang=en